研究所附属病院 副看護部長 川口 法子
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| ▲セミナーの案内板の前で記念撮影。右からジャパンハート河野看護師、ジャパンハート吉岡理事長、瀧名誉院長、田中技士長(後)、川口副看護部長(前)、ミャンマーユタニ(株)小丸氏 |
■まさか、こんなに早く!
11月21日~25日、ミャンマーのヤンゴン市においてミャンマー人医療従事者育成のためのSeminar & Training on "HAEMODIALYSIS" が開催され、瀧名誉院長、田中臨床工学技士長、川口の3名が講師を務めました。
思い起こせば今年6月、瀧名誉院長とジャパンハート理事長の吉岡秀人先生が透析室に来られ、ミャンマーで現地医療従事者に対する人工透析セミナーを実施するため協力をお願いしたいというお話でした。海外?遠いよね?言葉は?と思いながら、「研究所附属病院としてお役に立てることができるならば」との返事が・・「まさか、こんなに早く、しかも本当に実現するなんて!」と未知への思いで11月19日、関西空港から真夜中のフライトで出発し、20日9時、無事ミャンマーに到着しました。
■ミャンマーに降り立ってみると
上空からの広大な平野に反し、ホテルまでの町並みは雑居ビルが建ち並び、露天の店が所狭しで、大勢の往来がありました。また信号がほとんどない道路には150%以上の乗車率のバス、しかも夏というのに窓が全開(冷房がない?)、壊れそうなドア、修理次第で何十年も乗ることができるという証明のような一般乗用車がスピードを争い走っているのには驚きました。そして実に不衛生な路上に座り込み母乳を与えている母親、オムツもしていない乳児、乳飲み子を抱き物乞いに近寄ってくる人、病気の兄弟を助けてとぐったりした幼い子供を抱きどこまでもついてくる少年(大変失礼な言葉で胸が痛みますが、現地の方の説明では「全てではないが商売として演技をしている、だから相手にしないで」と聞かされました)。そんなミャンマーの空気を感じながらホテルに入った途端、「5日間の集中講義に果たしてミャンマーの方達の反応はどうなんだろう?」という不安で資料の内容を見直しました。
■日本人でよかった!
いよいよ講義初日、ベッド数1,000床のヤンゴン総合病院に向かいました。病院周囲は朝から露店が賑わっていました。実は病院では食事が出ないため、この露店で医師からいわれたものを買ったり、病院敷地内で調理して入院家族に食べさせているのだと聞きました。また治療においてもガーゼ交換、抗生剤、手術に至るまで病院からは必要な材料が示され、事前に売店で購入し渡してから治療をしてもらえるという現状でした。言いかえればお金がなければ何もしてもらえないということでした。このことを聞いた時は、「日本人でよかった」と心から思いました。
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| ▲セミナーで講義する瀧名誉院長 |
■緊張のセミナーが開始
オープニングセレモニーではヤンゴン総合病院長、腎学会長、セミナー責任者Khin教授、在ミャンマー日本大使館参事官、ジャパンハート理事長の吉岡先生からご挨拶を頂きました。改めてミャンマーの国としての本セミナーへの期待と責任の大きさを感じさせるものであり緊張しました。参加者は80名で会場は満席でした。500キロ離れたクリニックから車で9時間かけて参加された方もいました。
■1人も居眠りをする人がいません!
講義内容は医師、臨床工学技士、看護師領域の3部構成として、基礎から応用編を5日間行ないました。瀧名誉院長の流暢な英語の講義では若いDrと時間超過しての質疑応答場面があり、学びたいという一生懸命さが会場に溢れていました。田中技士長と川口は通訳を介しての講義でしたが、身振り大手振りを交えて(笑いも頂けました)伝えることができました。一番の驚きは、毎日朝から夕方(予定時間はいつも超過するほど)の講義でしたが、「誰一人居眠りをされる方がいない!昼食後でも」(当たり前かもしれませんが・・日本ではその光景をよく見ますので)でした。そして食い入るような眼差しで一言ひとことの頷きを向けられ質問される時は、「日本と社会情勢が違うから同じ事はできないではなく、学んで出来ることは何なのかを見つけよう」という姿勢でした。
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| ▲ヤンゴン総合病院血液透析ユニットの看護師さんと |
■透析患者はお金を融通できる人
ミャンマーの透析事情はというと、透析患者数は人口6,000万人に対し500人位でした。社会保険制度はなく血液透析は実費になります。そのため透析が必要といわれたら親族が集まり、家財など誰がどれだけ用意できるかが話し合われるそうです。現状は、透析患者の数はお金が融通できる人の人数であり、透析を必要としている患者はこの数字よりもはるかに多くいるのだと思います。それでも患者が透析を受けられるのは5日に1回、4時間でした。見学をしたクリニックでも13床のベッドを5~6クール使用していました。
■透析膜は再利用!!
透析機器はミャンマー国内で約100台(研究所附属病院は120台)、透析膜に関しては再利用です!!ですから田中技士長の講義では水処理方法、機器メンテナンスについて質問が集中し、的確な指導回答で参加者の方も疑問解消ができた表情でした。しかし「膜を長持ちさせるための秘訣は?」の質問だけには苦渋回答のようでした。実際、本人用の膜を保管するBoxや洗浄sinkを見ましたが日本ではあり得ない現場でした。ミャンマーでは臨床工学技士という職種が存在しないため、臨床工学技士の役割を医師、看護師、機器業者が担っているので、田中技士長の役割は大変大きなものでした。
■アイドル並の人気でした
ヤンゴン総合病院に30年勤続のシスター(当院での課長)はDrも怖がる存在のようでしたが、透析看護は共通だと絆の交流ができました。私は講義が終わりCoffee breakになると、「写真をお願いします」とアイドル並みで、日本では絶対経験できない事態に襲われました(同行のお二人は、私に、「最初で最後の経験だから」と笑っていました)。
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| ▲ジャパンハートが運営する「DREAM TRAIN」の子供たちと |
■終了証を手渡して講義を終了
4日目の夜、唯一の観光といえるでしょうか?有名なパゴダ寺院に閉館時間ぎりぎりに入ることができお参りをしました。最終日は参加者全員に終了証の授与式が行われ、私たちもプレゼンターとして手渡すことができ大変光栄でした。
講義終了後はフライトまでの時間を使いジャパンハートが運営する「DREAM TRAIN」を見学することができました。「子供が家計を助けるために売り買いされる」、「虐待」、「国籍・誕生日が不明」、「エイズ」など・・。100名の子供たちが楽しそうに遊び、その中には岡山医療センターの青山先生に手術をしてもらった3歳児もいました。
■観光も買物もしていない!
たくさんの笑顔に見送られミャンマーを後にしましたが、トラブルのない海外出張かと思いきや!、旅慣れない私は最後に、「ミャンマーまで行って観光も買い物もしていない!!」事に気づき、バンコクでの乗り継ぎの時に、時間も忘れ、ドルの使い方も知らず免税店をウロウロし、結局息切れしながらフライト5分前に搭乗した次第です(笑)。
■貴重な体験ができました
当初は英語でのスライド作りのための期間が短く徹夜などで間に合うかなと悲嘆にくれる時もありましたが、この5日間で得た満足感は、最終日に瀧名誉院長が参加者の方への挨拶で労いの言葉を下さった事、出張の機会を与えて下さった病院への感謝、出張にあたり協力や支援下さった研究所附属病院職員の方への感謝、そしてミャンマーの方々の勤勉さと笑顔のお陰だと思います。本当に貴重な経験をさせていただきありがとうございました。 |