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園内花アルバム

ヒオウギ(アヤメ科) Iris domestica

7~8月ごろ、1mほどの花茎の先に朱色の斑点のある橙色の花を多数咲かせる。 葉や茎は粉白色を帯び、葉は扇状に重なり合って付く。この葉の様子をヒノキの扇に例えた。
▲7~8月ごろ、1mほどの花茎の先に朱色の斑点のある橙色の花を多数咲かせる。 ▲葉や茎は粉白色を帯び、葉は扇状に重なり合って付く。この葉の様子をヒノキの扇に例えた。

 

ヒオウギは本州中部以西、四国、九州から沖縄、国外では中国やインドに分布する、日当たりのよい山野に生育する多年草です。古くから栽培もされた植物で、夏に京都で行われる祇園祭りでは、軒先などに生け花などにして飾られます。岡山県でも中~北部にまれに自生するとされていますが、栽培逸出(逃げ出し)と区別しにくい状態のものが多く、これは自生であろうと判断できる状態のものにはあまり出会うことはありません。また、乾燥にも強い植物ですが、酸性土壌には弱いため、どちらかというと石灰岩などのアルカリ性地質の地域に生育することが多いようです。

矮性のものや花色の変わった園芸品種もありますが、野性のものは花期(7~8月ごろ)には高さ50cmから1mを超える花茎を伸ばし、枝分かれした先に直径4cmほどのオレンジ色に朱色の反転のある6弁の花を多数咲かせます。花は朝咲いて夕方にはしぼむ一日花ですが、蕾の数が多く次々と咲くため、花は比較的長い期間見ることができます。面白いことに、花が終わった後、花弁はまるで絞った雑巾のように短くねじったような姿となり、そのまま果実の先にしばらく残っています。開花前のつぼみは特にねじれておらず、開花後にのみ強くねじれるのは非常に興味深いのですが、理由はよくわかりません。推測ですが、すぐに花弁を落としてしまうのではなく、ねじった形でしばらく花弁を宿存させることで、花に残った水分や養分を回収しているのではないかと思われます。

花は一日花で、朝に咲いて夕方には閉じる。花弁は閉じた後は雑巾のように強くねじれた格好となる。 秋、果実が裂開して光沢のある黒色の種子が露出する。この種子のことを「ぬばたま」と呼ぶ。
▲花は一日花で、朝に咲いて夕方には閉じる。花弁は閉じた後は雑巾のように強くねじれた格好となる。 ▲秋、果実が裂開して光沢のある黒色の種子が露出する。この種子のことを「ぬばたま」と呼ぶ。

 

葉は扁平な剣状で、根元から2列になって重なり合うように互い違いに着き、扇状に広がった形となります。葉や茎は緑色で全体に粉白色を帯びます。葉の様子がヒノキの薄板を綴り合せて作った「桧扇」に似ているので、ヒオウギの名があります。「桧扇」がどのようなものか、すぐに思い浮かばない人は、お雛様が持っている扇を思い出してみてください。果実は長さ3cmほどで薄緑色の楕円形(俵型)をしています。中には光沢のある黒い種子が多数入っており、果皮は秋ごろに裂開して種子が露出します。この種子のことを「ぬばたま(うばたま/むばたま)」といい、和歌などで、黒、夜、闇、髪など黒いものにかかる枕詞として使われ、古くは「古事記」にも「奴婆多麻」と書かれて登場します。漢字では種子がカラスの羽のようにつやのある黒色であることから「烏羽玉」または「野羽玉」との字が当てられており、「うばたま」が「ぬばたま」に変化したと解説している図鑑もありますが、万葉仮名の表記からすると、「ぬばたま」が本来で、漢字は発音に後から当てたものと考えるのが適当なようです。「射干玉」と書く場合もありますが、「射干(やかん/しゃかん)」とは本種の根茎を乾燥した生薬(扁桃炎や去痰に用いる)を指す漢名ですので、より当て字的な性格の強い表記と言えるでしょう。

本種は以前は Belamcanda chinensis の学名が使用され、アヤメ科ヒオウギ属とされていましたが、近年の遺伝子解析による研究の結果、アヤメやカキツバタなどのアヤメ属の植物にきわめて近縁であることが分かり、アヤメ属として扱われるようになっています。花の姿は一見、アヤメなどとは似ても似つかないように見えるのですが、よくよく見てみると、花は3枚ずつ2組の花弁が組み合わさっていることがわかります。1組の花弁が大きくなって下方に垂れ、もう1組の花弁がちょっと小さくなって直立したとすると、アヤメ科の基本的な構造にはなっていることが理解できます。では、近縁であるにも関わらず、本種がアヤメやノハナショウブなどとは大きく異なった形をしているのはなぜでしょうか。それは、花を利用する昆虫の違いを反映していると考えられます。アヤメやノハナショウブは、マルハナバチやアブの仲間など、「潜り込む」昆虫に花粉を送粉してもらうため、花柱(雌しべ)は花弁状に変化し、昆虫が雌しべと花弁の間に潜り込むことで受粉がおこなわれるようになっていますが、本種の場合、アゲハチョウなどのチョウ類が盛んに吸蜜に訪れており、チョウ類に送粉を行ってもらうために、チョウが訪花しやすい上向きで開放された形状のっ花になったものと考えられます。

当園では、岡山県西部に自生していたものの種子を採取して栽培しており、現在では園内のあちこちで芽生えて開花するようになっています。花の少ない盛夏の時期に花が咲き、秋には美しい「ぬばたま」となって、見学のお土産として喜ばれています。

花は3枚ずつの2組の花弁が組み合わさっており、アヤメ科の基本的な花の構造をしている。 ヒオウギの花に訪花したアゲハチョウ。アヤメ属とは思えない花の形は訪花昆虫の違いを反映している。
▲花は3枚ずつの2組の花弁が組み合わさっており、アヤメ科の基本的な花の構造をしている。

▲ヒオウギの花に訪花したアゲハチョウ。アヤメ属とは思えない花の形は訪花昆虫の違いを反映している。

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