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おかやまの植物事典

カワラケツメイ(マメ科)  Chamaecrista nomame

各地で野草茶として伝統的に利用されてきた。葉はオジギソウに似ているが、本種は触っても葉は閉じない。 花は8~9月頃、葉腋に直径6~7mmの黄色の花をまばらに付ける。花は典型的なマメの花の姿ではない。
▲各地で野草茶として伝統的に利用されてきた。葉はオジギソウに似ているが、本種は触っても葉は閉じない。 ▲花は8~9月頃、葉腋に直径6~7mmの黄色の花をまばらに付ける。花は典型的なマメの花の姿ではない。

 

カワラケツメイは、本州・四国・九州の日当たりがよく乾燥気味の場所に生育する、高さ30~60cm程度になるマメ科の一年草です。茎は硬く丈夫で、草刈りをされたり、踏みつけのあるような環境では放射状に多数分枝して地面を低く這ったり、肥料と水分が十分な状態で栽培されると1mほどにも成長したりと、生育環境に応じてさまざまな姿となります。

葉は互生(互い違いに出る)で、細かい小葉に分かれた長さ偶数羽状複葉(鳥の羽のような形をしている)です。葉の大きさは生育状態により、かなり幅がありますが、当園では長さ6~7cm前後、小葉は長さ1cm程度です。葉の姿からは、同じマメ科で南米原産のオジギソウと間違えられる方も多いのですが、本種は触れた刺激では小葉が閉じることはありません。ただし、夜間や雨天の場合、あるいはあまり暑さや乾燥が厳しい場合には、小葉が閉じた状態となります。花は8~9月頃で、茎の上部の葉腋に直径6~7mmの黄色の花をまばらに咲かせます。花はスイートピーなどのような典型的なマメの花の形(蝶形花)にはならず、花弁はあまり開きません。花の後には長さ3~4cmほどの豆果(豆のさや)ができて10月頃になると黒褐色に熟し、天気の良い日にはさやがパチパチと音を立ててはじけて種子(豆)を弾き飛ばして散布します。種子は5mm程度のひし形、光沢があり褐色~黒褐色をしています。

葉のサイズは生育状態によって幅があるが、当園では長さ6~7cm前後、小葉は長さ1cm程度のものが多い。 種子は褐色~黒褐色でひし形をしている。果実は10月頃の天気の良い日に、弾けて種子を弾き飛ばす。
▲葉のサイズは生育状態によって幅があるが、当園では長さ6~7cm前後、小葉は長さ1cm程度のものが多い。 ▲種子は褐色~黒褐色でひし形をしている。果実は10月頃の天気の良い日に、弾けて種子を弾き飛ばす。


和名は「河原・決明」で、河原に生える「決明」という意味です。「決明」とは、中国経由で渡来した、緩下・利尿などの薬効のある生薬として用いられる北アメリカ原産のエビスグサ Senna obtusifolia の漢名で、眼病に薬効があるとされ、眼病を治して「明」を切り開く(決)ことが名の由来とされます(加納善光 著.2008.植物の漢字語源辞典.東京堂出版.p.394)。本種についても、漢方では本種の果実のついた全草を「山扁豆(さんぺんず)」と呼び、利尿や整腸の効果のある生薬として用いるため、その名がついたとされます。本種も煎じた液は緩下薬として用いられますが、普通にお茶として飲用しても大変おいしいため、全国各地で弘法茶・合歓茶・浜茶・岸茶・豆茶などと様々に呼ばれて庶民の間で日常的に飲まれていたようです。岡山県北部の新見地域などでも本種の葉がネムノキ(合歓)に似ていることから、ネムノキの地方名である「こうかい」から「こうかい(こうか)茶」と呼ばれ、よく飲まれていたということです。

お茶の製法は比較的簡単で、9月頃、花と若い実が両方見られる時期に全草を刈取り、軽く洗った後、風通しの良い日蔭で干して乾燥させます。乾いたものをハサミなどで1cm程度に刻み、焙じて(軽く炒って)から普通のお茶と同様に急須などで入れると、大変香り高く、苦みのないまろやかな味わいのお茶となります。しばらく置いておいても緑茶のように渋みが出ず、冷やしてもおいしいので子供さんにもおすすめです。

密集して生育することが多い。かつてはその名の通り、河原や土手、田の畔などに普通に生育していたという。 草原の中のカワラケツメイの大群落(2009年:岡山県真庭市)。このような大群落は現在ではめったに見られない。
▲密集して生育することが多い。かつてはその名の通り、河原や土手、田の畔などに普通に生育していたという。 ▲草原の中のカワラケツメイの大群落(2009年:岡山県真庭市)。このような大群落は現在ではめったに見られない。

 

本種もかつては様々な場所で大群落を作っていたそうですが、草原の管理停止や、河原や堤防の植生変化、畦畔での除草剤使用など、様々な理由で生育地が徐々に減少しており、現在では大きな群落にはめったに出会うことはできなくなっています。小規模な群落は比較的残っていますので、本種は絶滅が危惧される状態ではありませんが、本種を食草として利用するツマグロキチョウというチョウの一種は、本種の群落の減少に伴って数を減らしている絶滅危惧種で、岡山県レッドデータブック(2009)では留意種とされているほか、環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類(2007年)から、絶滅危惧ⅠB類(2012年)にランクアップしています。

当園ではツマグロキチョウの保護も兼ねて、植物園のある浅原地域周辺にもともと自生していたものを積極的に栽培・増殖しており、余剰分を時折、来園者に差し上げており好評をいただいています。

(2019.9.28 改訂)

園内の水やり後、吸水に集まったツマグロキチョウ。本種の生育面積の減少とともに数を減らしている。 乾燥させたものを刻んで軽く焙煎すると、非常に良い香りのするお茶となる。
▲園内の水やり後、吸水に集まったツマグロキチョウ。本種の生育面積の減少とともに数を減らしている。 ▲乾燥させたものを刻んで軽く焙煎すると、非常に良い香りのするお茶となる。

 

カワラケツメイのお茶の作り方・楽しみ方 (2019.9.28)

1.カワラケツメイの刈り取り時期

花と若いさやが両方みられる頃に刈り取る。

9月頃、花と若い実(さや)が両方見られる時期に全草を刈取り、軽く洗って泥などを落とした後、風通しの良い日蔭で干して乾燥させます。

さやが茶色くなり、種子が充実した状態でも、お茶にはなりますが、少し風味は落ちてしまいます。

 

2.細かく刻む

長さ1cm程度に細かく刻む。

十分に乾燥したら、キッチンばさみや剪定ばさみで、長さ1cm程度に細かく刻みます。茎が硬いので、普通の事務用のはさみなどは不向きです。

根元に近い部分については、硬く切りにくいうえ、泥臭くなりますので、使わない方が良いでしょう。

保存については、刻んだ状態のまま、湿気を吸わないように密閉して保存します。

 

3.焙じる(焙煎・乾煎り)

刻んだカワラケツメイをフライパンなどで、香ばしい臭いがしてくるまで、乾煎りする。

刻んだカワラケツメイをフライパンなどで、香ばしい臭いがしてくるまで、乾煎りします。このことを「焙煎/焙じる」と言います。

細かい葉などが焦げやすいので、箸などでかき混ぜながら、弱火でゆっくりと焙じると良いでしょう。

なお、お茶の葉を焙じてほうじ茶をつくるのに用いる「焙烙(ほうろく)」という道具があり、ネットショップ等で入手できます。

 

4.完成

葉などが焦げやすいので,香ばしい香りがし始めたら火からおろす。

香ばしい香りがし始め、パチパチという音がし始めたぐらいで火からおろし、新聞紙等に広げて冷まします。

焙じた茶葉は、時間がたつと香りが弱くなりますので、できれば、1、2日程度で飲み切れる量をその都度、焙じると美味しく飲むことができます。

 

5.茶葉をお茶パック等に入れ、急須等で淹れる

細かい葉の破片などが多いので、茶葉を市販の「お茶パック」に入れると便利

お茶として飲むには、通常の煎茶同様に急須などで淹れればよいのですが、細かい葉の破片などが多いので、茶葉を市販の「お茶パック」に入れると便利です。

最初に湯を注いだ際には、しっかりとお茶が出るまで時間がかかるので、十分に時間をかけて蒸らしたほうがよいでしょう。2回目以降は、すぐに飲むことができます。また、出涸らしにもなりにくく、3、4回程度は繰り返し同じ茶葉を使うことができます。

 

6.その他(栽培法など)

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