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園内花アルバム

カワラナデシコ(ナデシコ科)  Dianthus superbus var. longicalycinus

日当たりの良い草原や河原に生育する多年草。高さ30~80cmほどで分枝した茎の先に数個の花をつける。 花期は生育環境などによって幅があり、7~10月。花は直径3~4cmで淡紅紫色、花弁は細かく切れ込む。
▲日当たりの良い草原や河原に生育する多年草。高さ30~80cmほどで分枝した茎の先に数個の花をつける。 ▲花期は生育環境などによって幅があり、7~10月。花は直径3~4cmで淡紅紫色、花弁は細かく切れ込む。

 

カワラナデシコは和名に「河原」とつくように、本州・四国・九州の日当たりの良い草原や河原などに生育する、高さ30~80cmほどになる多年草です。花期は生育環境などによって幅がありますが、7月頃から10月頃にかけ、いくつかに分枝した茎の先に直径3~4cm程度で淡紅紫色、花弁が細かく切れ込んだ5弁の花を数個咲かせます。花弁の下には、長さ3~4cmの円筒形の萼があり、萼筒の下部には、3~4対の先端が芒状に鋭く尖った「苞」があります。この苞は、本州中部以北から北海道に分布し、苞が2対のエゾカワラナデシコ var. superbus 学名上はこちらが基準変種)との区別点となります。茎や葉は粉白色を帯び、葉は対生で長さ5~10cmほどの細長い形(線状披針形)をしており、付け根の部分は茎を抱き、隣の葉の付け根と合着しています。この葉の付き方は同じ属の植物であるカーネーションなどでも見られる特徴です。

萼は長さ3~4cmの円筒状。萼筒の下部には3~4対の苞がある。苞の先端は芒状に鋭く尖る。 茎や葉は粉白色を帯びる。葉は長さ3~9cmで線形~披針形、対生して基部は茎を抱く。
▲萼は長さ3~4cmの円筒状。萼筒の下部には3~4対の苞がある。苞の先端は芒状に鋭く尖る。 ▲茎や葉は粉白色を帯びる。葉は長さ3~9cmで線形~披針形、対生して基部は茎を抱く。


果実は蒴果(乾燥して裂けて種子を散布するタイプの果実)で、はじめは果実の先端が裂開し、花茎が風などで揺れた際などに、種子がこぼれて散布されます。種子は黒色で直径2mm程度、扁平な形状をしています。果実は萼筒に包まれていますが、冬頃には萼筒部分も“ささら”状に裂け、種子もほぼすべてが散布されます。しかしながら、当園内の本種には、ナデシコタネコバンゾウムシ Sibinia sp. という、果実内部で種子を食害しながら成長するゾウムシの一種が比較的高い確率で見られ、園内の本種の結実率はあまり高くないものとなっています。このゾウムシは、当園内での確認が岡山県下での初めての記録(岡本忠.2018.ナデシコタネコバンゾウムシの記録.すずむしNo.153.p.7)で、2019年7月の時点では、県下唯一の生息地となっています。園内にて栽培している個体は、1977年に倉敷市内で採種した種子を園内にて実生栽培したもののため、苗などともに他地域から持ち込まれた可能性は低く、当園周辺地域にもともと生息していた昆虫である可能性が高いと考えています。

果実は蒴果。萼筒に包まれているが、冬頃にはささら状に深く裂け、内部の種子はほとんどが散布される。 種子は果実の中に多数が詰まっていて、黒色、直径2mm程度で扁平な形状をしている。
▲果実は蒴果。萼筒に包まれているが、冬頃にはささら状に深く裂け、内部の種子はほとんどが散布される。 ▲種子は果実の中に多数が詰まっていて、黒色、直径2mm程度で扁平な形状をしている。

本種は万葉集にも登場し、山上憶良が「秋の七草」に数えている植物ですが、咲き始めるのはちょうど梅雨明けの頃で、秋の花というにはかなり早い時期です。これは万葉集などの時代と、現代の私たちの季節感にはずれがあるためとされますが、さらに古い時代には、本種はずっと夏のつもりで咲き続けているとの意味で「とこなつ(常夏)」と呼ばれていたそうです。常夏と呼ばれていたと言うことはやはり本種を夏の花として認識していたということであり、なぜ「秋の花」として扱われるようになったのか不思議ですが、その答えは本種の花期の長さにあるとも考えられないでしょうか。本種の花期は7~10月と4ヶ月ほどにも及び、生育サイクルの短い水田や畑地の雑草を除いては異例の長さです。この理由としては、低地から標高の高い山地草原にまで広く分布しているため、温暖な地域では早く、冷涼な地域では遅い時期に開花すること、また、春から順調に生育した株は早い時期に開花しますが、生育途中で草刈りなどをされて再生した株は暖地でも比較的遅い時期に咲くことが比較的良くあります。万葉の時代から、昭和30年代頃まで、草原の草は、水田の肥料や牛馬の飼料として伝統的に利用(草刈り)されてきたため、そのような草原では、本種は秋の遅い時期にまで見られる花だったのではないでしょうか。残念ながら、現代では草刈りの時期や間隔も変わり、本種が秋に咲く光景はなかなか見られなくなりました。

果実の中に潜むナデシコタネコバンゾウムシ。岡山県下では当園が2019年現在、唯一の生息地。 河川の堤防など、定期的に草刈りがされるような場所では現在でも比較的多くの株が生育している。
▲果実の中に潜むナデシコタネコバンゾウムシ。岡山県下では当園が2019年現在、唯一の生息地。 ▲河川の堤防など、定期的に草刈りがされるような場所では現在でも比較的多くの株が生育している。

 

なお、「ナデシコ」とは「撫でし子」で、撫でたくなるほど可愛らしい子供に例えたとか、可愛らしいので子供と同じように撫でたくなるからと言われます。「ヤマトナデシコ(大和撫子)」との別名もありますが、これは万葉の時代から栽培されていた、中国原産で同属のセキチク(石竹) D. chinensisの別名が「カラナデシコ(唐・撫子)」であるので、日本にもともと生育していた本種を「大和(日本の)・撫子」と呼んだものとされます。

(2019.7.14 改訂)

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