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園内花アルバム

サワヒヨドリ(キク科)  Eupatorium lindleyanum var. lindleyanum

湿地など湿った環境に生育することが多いので「沢」と名があるが、かなり乾燥した環境でも生育する。 秋、淡紅色の頭花を多数咲かせる。頭花は5個の筒状花が集まっており、白いひも状のものは花柱である。
▲湿地など湿った環境に生育することが多いので「沢」と名があるが、かなり乾燥した環境でも生育する。 ▲秋、淡紅色の頭花を多数咲かせる。頭花は5個の筒状花が集まっており、白いひも状のものは花柱である。

 

サワヒヨドリは、日本全国の日当たりがよく、湿った草地や湿地に生えるキク科の多年草です。湿った環境を好む植物ですが、うまく芽生えて定着できさえすれば、かなりの乾燥にも耐えられるようで、驚くほど乾いた場所で出会うことも良くあります。花は9~10月頃、茎の上部に散房状に多数の頭花を咲かせます。頭花は5個の淡紅色をした筒状花が集まってできています。筒状花の先は5裂しており、内部から2つに裂けた白色のひも状の花柱(雌しべ)が突き出しています。筒状花は淡紅色ですが、頭花の下部にある総苞片や花序の柄が紅紫色を帯びることも多く、その色づきの程度によって、花序は白色から紅紫色まで様々な色合いに見えます。野菊やタンポポの仲間のような舌状花を持たないので、キク科らしくないという感想を持つ方もおられますが、花後にはキク科らしく、4~6mm程度の汚白色の冠毛を持った2~3mmの褐色の痩果が多数実り、晩秋から冬に風で散布されますが、冠毛が短いため、タンポポの綿毛のように長距離は飛ばないようです。

頭花の下部には10個ほどの総苞片がある。花序の柄や総苞片は写真のように紅紫色を帯びることも多い。 痩果は長さ2~3mmで褐色、4~6mm程度の汚白色の冠毛を持つ。冠毛中央の淡褐色のものは萎れた花柱。
▲頭花の下部には10個ほどの総苞片がある。花序の柄や総苞片は写真のように紅紫色を帯びることも多い。 ▲痩果は長さ2~3mmで褐色、4~6mm程度の汚白色の冠毛を持つ。冠毛中央の淡褐色のものは萎れた花柱。


茎は縮れた毛が密生し、しばしば紅紫色を帯びます。葉は細長く幅1~2cm、長さ6~12cm程度の披針形(披針=両刃のメスのこと)で、葉柄はほとんどなく、対生します。葉の縁には粗い鋸歯があり、しばしば葉の基部まで深く3裂して輪生状になります。葉裏をルーペで拡大して観察すると、普通、腺点が見られます。岡山県で生育が確認されているヒヨドリバナ属の植物の中で、葉裏に腺点を普通、持たないとされるものはサケバヒヨドリ E. laciniatum とフジバカマ E. japonicum の2種ですが、本種にもときに腺点のないものがみられ、ホシナシサワヒヨドリ f. eglandulosu という品種として区別されることもあります。なお、葉裏の腺点については、この仲間の同定ポイントの一つではありますが、サケバヒヨドリではまばらに腺点が見られることもあるなど、個体や集団によって例外も多く、過信は禁物です。本種は葉の形自体も非常に多形で生育環境、地域等によっても変化があります。岡山県北の草原などでは、葉が細いタイプよりもやや幅の広い長卵形のタイプのものが多く見られます。また、染色体数の違いによるサイズ・形態の違いや近縁種との雑種もしばしばみられるようで、すっきりと同定することが難しい仲間です。

葉は葉柄がほとんどなく、葉の基部から3裂した場合には、写真のように輪生状になる。 葉裏をルーペで観察すると「普通」、腺点が見られるが、時に腺点のないものがあるなど、例外も多い。
▲葉は葉柄がほとんどなく、葉の基部から3裂した場合には、写真のように輪生状になる。 ▲葉裏をルーペで観察すると「普通」、腺点が見られるが、時に腺点のないものがあるなど、例外も多い。

和名のサワヒヨドリは「沢・鵯」で、「沢」など湿り気の多い場所に生えるヒヨドリバナ(鵯花)の意味ですが、ヒヨドリバナの「ヒヨドリ」は、ヒヨドリバナの仲間が鳥のヒヨドリ(鵯)が鳴く頃に咲くからとも、綿毛を火起こしの際に「火を取る」火口としたので「火を取る花」からヒヨドリバナになった、葉の形がヒヨドリの翼の形に似ているので…など、様々な説があります。

当園に来られる見学者の中には、本種を見て、秋の七草で知られるフジバカマと勘違いされる方が割合大勢おられます。本種とフジバカマは同じ属の植物で、花姿がよく似ているうえ、花期がフジバカマとほぼ同じ時期(フジバカマが1月ほど早く咲き始める)ですので、植物の知識がなければ、秋の野にたくさん咲いている本種を見て間違えるのも無理はないかもしれません。ちなみにフジバカマと本種を比較しますと、

  1. フジバカマは高さ1.5mほど、本種は高さ30~80cm程度でやや草丈が低い
  2. フジバカマの葉には短い葉柄があるが、本種の葉には葉柄がほとんどない
  3. フジバカマはサクラの葉と同じクマリンという物質を含み、生乾きのときに桜餅のような香りがするが、本種はクマリンを含まないため、香りはしない

…などの違いがあります。

当園の湿地エリアには、もともと本種が自生しており、毎年10月頃になると本種の花、スイランの黄色の花、サワギキョウの紫の花などが湿地一面に咲き乱れ、ヤノネグサの紅葉の赤などがアクセントとなり、美しい秋のお花畑となって見学者の目を楽しませています。

(2019.10.13 改訂)

葉は非常に多形で、中国山地などの草原では、やや幅の広いタイプのものが多くみられる。写真は岡山県真庭市の蒜山地域で撮影。 当園の湿地エリアでは、10月頃になると、本種など様々な花が一面に咲き乱れ、美しい秋のお花畑となる。(写真撮影:植物園ボランティア)
▲葉は非常に多形で、中国山地などの草原では、やや幅の広いタイプのものが多くみられる。写真は岡山県真庭市の蒜山地域で撮影。 ▲当園の湿地エリアでは、10月頃になると、本種など様々な花が一面に咲き乱れ、美しい秋のお花畑となる。(写真撮影:植物園ボランティア)

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