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園内花アルバム

イスノキ(マンサク科) Distylium racemosum

花は花弁をもたず、花序の先には両性花、下部には雄性花が付く。二股に分かれている部分が雌しべ。 葉は互生、表面には光沢があり、縁はふつう全縁。先端はやや細くなるが、鋭く尖った形状ではない。
▲花は花弁をもたず、花序の先には両性花、下部には雄性花が付く。二股に分かれている部分が雌しべ。 ▲葉は互生、表面には光沢があり、縁はふつう全縁。先端はやや細くなるが、鋭く尖った形状ではない。

 

イスノキは、関東以西の本州、四国、九州、沖縄の暖地の常緑林内などに生育する、高さ25mほどになる常緑高木です。国外では韓国の済州島、台湾、中国東部などに分布します。花は赤紫色で花弁はなく、3~5月頃(岡山県南部では4月頃)、枝や葉の腋から長さ2~5cm程度の総状花序に咲きます。普通、花序の先には雄しべと雌しべが揃っている両性花が付き、花序の下部には雄花が付きます。果実は蒴果(乾燥して割れるタイプの果実)で、直径1cm弱の卵型をしており、果実表面には褐色の星状毛が密生しています。果実は7月頃に熟し、パックリと大きく二つに裂開しますが、その様子は、鳥のヒナがエサを待って口を開けている姿を思わせます。果実内部には光沢のある黒色の種子が2個入っています。果実の殻は冬まで長く枝先に残ります。

葉は互生、厚みがあり、ふつう全縁(葉の縁にギザギザがない)で、表面は光沢があり、基部はくさび形、葉の先端は鈍形(鋭くなく丸い形状)で長さ3~7cm、幅1.5~3.5cmの倒卵形です。若枝や葉柄には、はじめ星状毛が生えますが、しばらくすると脱落して無毛となります。樹皮は淡褐色で、概ね平滑ですが、部分的にかさぶたのように粗くはがれることがあります。

果実は熟すと大きく二つに裂開し、ヒナ鳥が口を開けたような姿になる。殻は冬頃まで枝先に長く残る。 果実の内部には、光沢のある黒色の種子が2個入っている。果実の表面には褐色の毛が密生している。
▲果実は熟すと大きく二つに裂開し、ヒナ鳥が口を開けたような姿になる。殻は冬頃まで枝先に長く残る。 ▲果実の内部には、光沢のある黒色の種子が2個入っている。果実の表面には褐色の毛が密生している。

 

本種の葉や枝には、モンゼンイスアブラムシが枝に作るイスノキエダチャイロオオタマフシ、ヤノイスアブラムシが葉につくるイスノキハタマフシ、ヨシノミヤアブラムシが枝につくるイスノキエダイボフクロフシなど、他の樹木と比べても非常に多種多様な虫こぶができ、花や果実を確認しなくても、虫こぶのだけで、本種であろうと見当をつけることができます。本種には「ヒョンノキ」という別名がありますが、これは、イスノキエダチャイロオオタマフシなど中が空洞でアブラムシの脱出口が開く虫こぶは、ガラスびんの口に息を吹いて笛として遊ぶように、ヒョウヒョウと音が出る、ということから「ヒョウノキ」が変化したものと言われます。ちなみに岡山の方言では、おかしな物事のことを「ひょんなげ」と言い、「ヒョンノキ」の別名を紹介しますと、「ひょんなげな実(虫こぶ)ができるから」と、「ヒョンノキ」を岡山の地方名と思われる方が大勢おられます。

樹皮は淡褐色で、概ね平滑。部分的にかさぶたのように粗く剥がれることも。 枝にできたイスノキエダチャイロオオタマフシと思われる虫こぶ。脱出口のふたがそのまま残っていた。
▲樹皮は淡褐色で、概ね平滑。部分的にかさぶたのように粗く剥がれることも。 ▲枝にできたイスノキエダチャイロオオタマフシと思われる虫こぶ。脱出口のふたがそのまま残っていた。。

 

「イスノキ」の和名の由来については、諸説あるようですが、「椅子の木」ではなく、植物図鑑などでは、木材の質が硬く、櫛などに加工されるので、「くしのき」が変化したものと解説されることが多いようです。これは平安時代に編纂された「和名類聚抄(和名抄)」の本種に該当するとされる「柞」の項に、「梳(櫛)を作るに堪えたり」と解説されていることからと思われますが、和名抄の「柞」の読みは「ユシ」であり、「くしのき」からの変化ではなく、ユシ→ユス→イス、と変化したと考えるほうが自然と思われます。さらに「ユシ」の語源については、ネット上のウェブサイトにも(和泉晃一氏のウェブサイト 「草木名のはなし」 http://www.ctb.ne.jp/~imeirou/ 詳しく解説されていますので、興味のある方はご覧ください。なお、「柞」は「ははそ/ほうそ」とも読み、コナラやミズナラなどのナラ類の樹木の総称でもあります。また、本種の中国名は「蚊母樹(ぶんぼじゅ)」と言いますが、これは、虫こぶが多くできて、有翅型のアブラムシなどが虫こぶから脱出する様子を、蚊のような虫を産む木であると考えたものであろうと思われます。

(2017.1.15)

中が空洞であるため、息を吹くと笛のように音がすることから、「ヒョンノキ」の由来となったという。 本種には多様な虫こぶができる。これはイスノキエダイボフクロフシと思われる虫こぶ。
▲中が空洞であるため、息を吹くと笛のように音がすることから、「ヒョンノキ」の由来となったという。 ▲本種には多様な虫こぶができる。これはイスノキエダイボフクロフシと思われる虫こぶ。

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