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園内花アルバム

カワラナデシコ(ナデシコ科) Dianthus superbus. var. longicalycinus

花は直径3~5cm、ふちが細かく切れ込んだ5枚の花びらを持つ。切れ込みの深さは個体によって様々。 葉は細長くて対生。葉の基部は隣の葉の基部と合着して太くなる。植物体は全体に無毛。
▲花は直径3~5cm、ふちが細かく切れ込んだ5枚の花びらを持つ。切れ込みの深さは個体によって様々。 ▲葉は細長くて対生。葉の基部は隣の葉の基部と合着して太くなる。植物体は全体に無毛。

 

 カワラナデシコは「河原撫子」の名の通り、本州・四国・九州の日当たりの良い河原や草原、また路傍にも生育する多年草です。別名をヤマトナデシコともいいます。花は7~10月、いくつかに分枝した茎の先に数個のつぼみを付けて、淡紅紫色でふちが細かく切れ込んだ5弁の花を咲かせます。茎は長さ30cm程度から1mほどにもなりますが、草むらの中などで長く伸びたものは、細いために自立せず、他の草に寄りかかるようにして生育しています。葉は対生で長さ5~10cmほどの細長い形(線状披針形)をしており、付け根の部分は隣の葉の付け根と合着して、茎を取り囲む様にふくれています。この葉の付き方は同じ属の植物であるカーネーションなどでも見られる特徴です。

 

 本種は秋の七草の一つに数えられている植物ですが、咲き始めるのはちょうど梅雨明けの頃で、現代の私たちの感覚では、秋の花というにはかなり早いように感じます。これは主にかつて(万葉集などの時代)とは、私たちの季節感がずれているためとされますが、さらに古い時代には、本種はずっと夏のつもりで咲き続けているとの意味で「とこなつ(常夏)」と呼ばれていたそうです。常夏と呼ばれていたと言うことはやはり本種を夏の花として認識していたということであり、なぜ「秋の花」として扱われるようになったのか不思議ですが、その答えは本種の花期の長さにあると考えられます」。本種の花期は7~10月と4ヶ月ほどにも及び、生育サイクルの短い水田や畑地の雑草を除いては異例の長さです。実はこの花期の長さにはカラクリがあり、春から順調に生育した株は早い時期に開花しますが、生育途中で草刈りなどをされて再生した株は9~10月の遅い時期に咲くことになります。つまり、同じ株がずっと咲き続けている訳ではなく、人間活動によって開花が早い株と遅い株が作り出されていたわけです。近世になるまで水田の肥料は草原の草を利用することが多かったため、本種の生育する草地も多くは草刈りされていたことでしょう。そのような場所で本種が咲くことができるのは、かつての季節感でも秋の時期だったのではないでしょうか。残念ながら、現代では草刈りの時期や間隔も変わり、本種が秋にまとまって咲く光景はなかなか見られなくなりました。

 

茎はいくつかに分枝し、先端に数個の花をつける。草刈りなどで刈り取られると葉の脇から枝をだして再生し、遅れて花を咲かせる。 横からみた花。花弁の下(写真では左)にある緑色の筒状の部分ががく。さらにその下にあるあたかもがくのような部分が苞(葉の変化したもの)である。

▲茎はいくつかに分枝し、先端に数個の花をつける。草刈りなどで刈り取られると葉の脇から枝をだして再生し、遅れて花を咲かせる。

▲横からみた花。花弁の下(写真では左)にある緑色の筒状の部分ががく。さらにその下にあるあたかもがくのような部分が苞(葉の変化したもの)である。

 

 なお、「ナデシコ」とは「撫でし子」で、撫でたくなるほど可愛らしい子供に例えたとか、可愛らしいので子供と同じように撫でたくなるからと言われます。「瞿麦」と表記することがありますが、これは本来は「くばく」と読み、中国原産で同じ仲間のセキチク(石竹) Dianthus chinensisのことです。セキチクは別名「カラナデシコ(唐撫子)」といい、外国から来たセキチクに対して、日本にもともと生育していた本種を「ヤマトナデシコ(大和撫子)」と呼んで区別したと言われます。

 当園では、1977年11月に古屋野前園長が倉敷市内で採集した種子由来のものが湿地エリアにて生育しています。園内は原則として草刈りによって管理していますので、本種の生育場所の草刈り時期を工夫し、秋にも花がみられるように工夫して管理を行っています。

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