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園内花アルバム

コオニユリ(ユリ科)Lilium leichtlinii f. pseudotigrinum

花被片には濃褐色の斑があり、後ろに強く反り返って、毬のような球状となる。 7~9月、茎の頂部に多数の花を次々に咲かせる。花の直径はおよそ10㎝程度。
▲花被片には濃褐色の斑があり、後ろに強く反り返って、毬のような球状となる。 ▲7~9月、茎の頂部に多数の花を次々に咲かせる。花の直径はおよそ10㎝程度。

コオニユリは日本全国(北海道~沖縄)の日当たりのよい山地草原に生育する、高さ50~150㎝ほどになる多年草です。国外では朝鮮半島および中国北東部、ロシア(ウスリー川流域)に分布します。湿原など湿潤な環境から、かなり乾燥した場所まで幅広い環境条件の草原でみられます。

花は7~9月(倉敷市などでは6月下旬~8月中旬)、茎の頂部に濃い褐色の斑のある橙赤色の花を多数咲かせます。6枚の花被片(内花被片3枚、外花被片3枚)は長さ6~8㎝の披針形で、強く後ろに反り返り、毬のような球状となります。花被片が反り返るため、雄ずい(雄しべ)と花柱(雌しべ)は花の外に突き出す格好となります。6本の花ずいは放射状に広がり、先端には赤褐色の花粉のついた葯(やく)があります。葯は中央部で花糸に接続し、丁字形となっています。葯に指などで触れると、大量に花粉が付着しますが、他のユリの仲間の花粉同様、皮膚や衣服などに花粉が付くと大変取れにくいので注意が必要です。

葉は長さ4~10㎝ほどの披針形で、日当たりの良い場所に生育する個体では、茎に多数付きますが、日陰に生育したり、花がつかない個体などでは、葉の数は少なくなり、葉の形も線形に近いものが見られます。初夏頃、葉が何者かに食い荒らされることがありますが、よく見ると、葉上に泥の塊のようなものを見つけることができます。これはユリクビナガハムシという昆虫の幼虫で、自分の糞を「隠れ蓑」として背負っています。食害は葉だけなので、株自体が枯れることはありませんが、葉が一枚も残らないような状態にまで食害されると、蕾が出てこないことがありますので、注意が必要です。

花粉は赤褐色をしており、指などで葯に触れると大量に付着する。衣服などに付くと取れにくいので注意。 葉は披針形で茎に多数付く。日陰に生育する個体などでは葉の数は少なく、細長くなる場合がある。
▲花粉は赤褐色をしており、指などで葯に触れると大量に付着する。衣服などに付くと取れにくいので注意。 ▲葉は披針形で茎に多数付く。日陰に生育する個体などでは葉の数は少なく、細長くなる場合がある。

 

地下には白い鱗茎(球根)があり、いわゆる「ユリ根」として食べることができます。ただし、現在、スーパーなどで販売されているものは、本種をもとに鱗茎が大きくなるように品種改良した食用品種であり、野生品の鱗茎は食用に用いるには少々小型のようです。また、地中に長い匍匐枝を伸ばす点が、よく似たオニユリ、ノヒメユリなどとの区別点となります。果実は蒴果(乾燥し、裂開して種子を散布するタイプの果実)で、秋に熟します。内部には薄い膜状の翼をもった種子が整然と詰まっており、裂開した果実片の隙間は網のようになった糸状の繊維でつながっています。これによって種子は果実側面からは落ちず、花茎が風で揺れた際に、果実先端から散布されます。

 

地下には白い鱗茎(球根)がある。長い匍匐枝を持つことが近縁種との区別点となる。 コオニユリの果実。内部には多数の種子が整然と詰まっている。種子は花茎が風で揺れた際に散布される。
▲地下には白い鱗茎(球根)がある。長い匍匐枝を持つことが近縁種との区別点となる。 ▲コオニユリの果実。内部には多数の種子が整然と詰まっている。種子は花茎が風で揺れた際に散布される。


 よく似たものにオニユリ L. lancifolium がありますが、オニユリは本種よりもより大型となり、普通、結実しませんが、葉腋に付く濃い紫褐色の珠芽(むかご)によって盛んに増えます。種子ができないことから、古い時代に中国から食用などのため、持ち込まれたものとする説もあります。ただしオニユリの鱗茎は、本種に比べると苦味が強いため、現在では、鑑賞目的で栽培されるものの、食用を目的としてはあまり利用されないようです。

当園では、1978年(昭和53年)に、古屋野前園長(現・名誉園長)が、総社市北部の山中で採種した種子から実生繁殖させたものが、温室エリアのユウスゲ植栽地や湿地エリアの各所で生育しています。夏の夕暮れに、黄色のユウスゲとともに本種が一面に咲く光景は幻想的ですらあります。7月の定例観察会で見ることができますので、ぜひご参加ください。

(2016.8.11改訂)

よく似たオニユリの葉腋には珠芽(むかご)ができる。コオニユリは胚珠を形成しない。 ユリクビナガハムシの幼虫。右上はひっくり返した状態、右下は成虫。
▲よく似たオニユリの葉腋には珠芽(むかご)ができる。コオニユリは胚珠を形成しない。 ▲ユリクビナガハムシの幼虫。右上はひっくり返した状態、右下は成虫。

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