クチナシは東アジアに広く分布する常緑低木で、日本では静岡県以西の本州、四国、九州、南西諸島など暖地の山野に生育します。岡山県では主に県南部に多く、海岸近くやアカマツ林のような明るく、乾燥した場所に自生しています。6~7月頃に直径5~8cmほどの先が5~6弁に分かれた(根元は筒状)白色の花を咲かせます。花は開花直後は純白ですが、日にちがたつとだんだんと黄色味を帯びた花色に変化します。また花は大変香りが良く、学名も“jasminoides”(ジャスミンのような)という名が付けられています。花が美しく香りも良いので、庭木としてもしばしば植栽され、刈り込みにも強いので、生垣に仕立てられることもあります。
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| ▲クチナシの花。開花して間もない花は純白だが、日数がたつと黄色味を帯びてクリーム色に変化する。 | ▲晩秋のクチナシの果実。果実の先端には棒状にがく片が残り、ユニークな姿。乾燥させたものを利用する。 |
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| ▲クチナシの果実断面。乾燥して種がこぼれるタイプの蒴果(さくか)のように見えるが、実は鳥や動物に食べられて種子が散布されるタイプの液果(えきか)。 |
クチナシは、植物の分類上はアカネ科という仲間で、科の名前ともなっているアカネという植物は、古くから根が赤色の染色材料として利用され、「茜色」という言葉はこの植物に由来します。アカネ科の植物は、九州南部や南西諸島には樹木となる種類が多くありますが、岡山県では樹木となる種類はそれほど多くはなく、そのほとんどが草かつる植物で、岡山県ではクチナシがもっとも身近なアカネ科の樹木と言えるでしょう。
アカネは赤色の染色材料ですが、クチナシも染色材料として古くから利用されて来た植物です。面白いことに、同じアカネ科の植物なのですが、クチナシは「茜色」ではなく、黄色の着色材として利用されます。11~12月頃、紡錘形の果実が黄色からやや赤色に変化したころに採種し、陰干しにして十分に乾燥させたものを利用します。おせち料理などに入れる「きんとん」やサツマイモの煮物、たくあん作りの際などに入れると、美しい黄金色となるほか、草木染めなどにも利用されます。また、乾燥させた果実は「山杷子(さんしし)」という生薬としても利用され、煎じて腰痛に、すりつぶしたものを湿布の材料とするそうです。
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| ▲クチナシの果実を上から見たところ。いかにも「口」が開きそうな感じに見えるでしょうか。 | ▲乾燥させたクチナシの果実。果実は熟し切らないうちは黄色だが、十分に熟したり、このように乾燥させると赤くなる。 |
なお、「クチナシ」という名の由来は、果実の姿が、熟すと乾燥して中から種がこぼれおちるタイプの果実に思えるのに、いつまでも種がこぼれおちるための「口」が開かない=「口無し」という説や、「くちなわ=ヘビ」が食べる果実(ナシ)だから、という説、果実に残るがく片を「くち」と呼び、「くち」のある果実(ナシ)だから、という説などがあります。
当園では、前園長が倉敷市内で30年ほど前に採集したクチナシが高さ2.5mほどにも成長しており、毎年多くの花と果実をつけて、来園者の目と鼻を楽しませると同時に、12月頃には来園のお土産として喜ばれています。
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