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園内花アルバム

ノハナショウブ(アヤメ科)  Iris ensata var. spontanea

 

水辺や湿地に生育する。栽培種であるハナショウブは様々な花色があるが、本種の花は紫~赤紫色。 外側の花被片(花びら)の基部には黄色の斑があり、幅は広く垂れ下がる。斑の上に伸びている花弁状のものは実は分枝した花柱(雌しべ)。
▲水辺や湿地に生育する。栽培種であるハナショウブは様々な花色があるが、本種の花は紫~赤紫色。 ▲外側の花被片(花びら)の基部には黄色の斑があり、幅は広く垂れ下がる。斑の上に伸びている花弁状のものは実は分枝した花柱(雌しべ)。

 

 ノハナショウブは、北海道から九州まで、全国の湿地や畦畔などの水辺や湿った草地に生育するアヤメ科の多年草です。葉は長さ50~60cm、幅1.5cm程度の剣状で、ショウブ科のショウブの葉によく似ています。花期は同じアヤメ科のアヤメやカキツバタの花(5月)にやや遅れて6月頃になり、高さ60~100cm程度の花茎の先に紫~赤紫色の花を咲かせます。蕾は一つの花茎に数個付きますが、一度に咲くのは一花のみです。花はアヤメ科独特の構造をしており、花被片(花びら)は一番外側に垂れ下がった外花被片3枚と垂直に立ち上がっている内花被片3枚の計6枚で、外花被片の基部には黄色の斑がありますが、よく似たカキツバタは白色の斑であるため、両種の良い区別点となります。また、よく見てみると、外花被片の基部から黄色の斑を覆うように伸びている花弁状の部分があります。実はこれは3つに分枝した花柱(雌しべ)が花弁状に変化しているもので、花粉を出す雄しべはこの花柱の下に隠れています。外花被片と分枝した花柱の間にハナバチの仲間が潜り込むことで、ハチの背に花粉が付いて花粉を運ぶようになっており、外花被片の黄色の斑は昆虫を誘導する「蜜標(ガイドマーク)」であると考えられています。ちなみに花粉がくっついて受粉を行う雌しべの先端(柱頭)がどこにあるかというと、花弁状に変化した花柱の先の反り返っている部分、その付け根が柱頭にあたります。

 

花茎には数個の蕾がつくが、同時に複数の花は咲かない。 雄しべは花弁状に変化した花柱の下に隠れている。
▲花茎には数個の蕾がつくが、同時に複数の花は咲かない。 ▲雄しべは花弁状に変化した花柱の下に隠れている。


 栽培種であるハナショウブは、葉の形が似ていることから、「花の美しいショウブ」との意味で、「花菖蒲」と名付けられていますが、本種は栽培種であるハナショウブに対して「野に生えるハナショウブ」との意味で、「野花菖蒲」と名がついています。しかし、本種から作出された栽培品種がハナショウブですから、順序にこだわるならば、本種の方が「本家」とか「元祖・ハナショウブ」ということになるでしょうか。なお、ハナショウブが栽培されるようになったのは、万葉集に登場するカキツバタに比べると歴史は浅く、江戸時代になってからですが、日本各地で栽培と品種改良が行われた結果、様々な花色の品種が作出されるに至りました。現在でも各地に「花菖蒲園」が作られ、赤紫色の花色の本種が原種とは思えないほど、様々な花色のハナショウブを鑑賞することができます。その中には原種として、ノハナショウブも植えられることがしばしばありますが、派手なハナショウブに取り囲まれたノハナショウブはどことなく肩身が狭そうにも見えます。

 岡山県内では、北部から南部までの湿地に比較的普通に生育しますが、乾燥には弱いようで、湿地が乾燥化した場合には衰退します。また、アヤメ属の植物は有毒の植物が多く、本種も有毒とされている場合がありますが、最近は各地でシカによる本種の食害が報告されるようになっていますので、本種についてはそれほど毒性が強くないようです。当園では、園内の湿地に多数の株が生育しており、初夏から盛夏にかけての湿地をクサレダマの黄色、チダケサシの白色の花などとともに彩ってくれています。

 

反り返った部分の付け根部分(矢印)が柱頭にあたる。写真は反り返った部分を半分取り除いてある。 く似ているカキツバタの花。本種に比べてやや花期が早く、外花被片の斑は白色である。
▲反り返った部分の付け根部分(矢印)が柱頭にあたる。写真は反り返った部分を半分取り除いてある。 ▲よく似ているカキツバタの花。本種に比べてやや花期が早く、外花被片の斑は白色である。

 

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