環境省レッドリスト(2007):絶滅危惧Ⅱ類 / 岡山県レッドデータブック(2009):絶滅危惧Ⅰ類
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| ▲開花したオキナグサ。花弁のように見えるのはがくで、花弁はない。 | ▲花が終わると、花茎はさらに伸びて高さ30~40cmほどにもなる。 |
オキナグサは、本州、四国、九州の日当たりのよい原野に生える多年草です。全体に長くて白い毛が多く、根は太く丈夫で深く地中に入ります。花期は4~5月、まず冬枯れした葉の中心から白い毛に覆われた数枚の若葉と花茎が伸びてきます。花茎の先には1個のつぼみが3~4片の茎葉に包まれるように付いており、花茎が10cm位になるとつぼみが開き始めます。つぼみが開き始めるとつぼみと茎葉との間が急速に曲がって伸び、2~3日後には下向きに開花します。花の内側は暗赤紫色をしていますが、外面は白い毛におおわれて白っぽく見えます。実は花びらのように見えるのは正確には「がく」で、オキナグサには花びら(花弁)はありません。
オキナグサの花は天気のよい日中だけ開きますが、雨天や夜間には閉じてしまいます。花が下向きに咲いている間に、花に昆虫が訪れて花粉を運び、受粉が行われるのですが、雨天が続くと昆虫が活動しないため受粉ができず、種子ができないまま花茎が枯れてしまいます。数日間開閉を続けると花柄は再び真上に向いてどんどん伸長を始めます。花茎の高さが30cm前後になると、花びら状のがくは脱落し銀色に光る約300本の雌しべ(花柱)が伸びてきます。雌しべは長さ3~4cmまでになり、大きな毛玉を作ります。雌しべの根元には長さ3mm前後の細長い果実(種子)があり、種子が熟すと銀色で絹糸状の雌しべが枝毛を立て白い綿の球状に変化し、タンポポの綿毛同様、風によって散布されますが、タンポポのようにパラシュート型の毛ではなく、鳥の羽根のような形状をしていますので、それほど遠くまでは飛ばないようです。種子を採る場合には飛散する直前に花柄を摘み取り、室内で自然乾燥させます。
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| ▲果期のオキナグサ。この綿毛の様子が「翁草」の名の由来となった。 |
白い綿毛を付けた直径6cm前後のふわふわとした玉が立ち並ぶ光景は一種異様ではありますが素晴しい光景です。オキナグサの名前は、白髪頭の老人を連想させるところから「翁草」と名付けられたものです。中国語でもオキナグサの仲間のことを「白頭翁」と表記します。ただし、中国で「白頭翁」と呼んでいるオキナグサは、日本のオキナグサとは近縁ですが別の種類です。
オキナグサの株から出る花茎の数は年々多くなり、数年で10数本から数10本、時には100本以上にもなりますが、大株になると「白絹病」などの植物の病気にかかりやすくなるようで、野外ではおおよそ5年強で根腐れなどを起こして枯れてしまいます。オキナグサは株分かれでは増えませんので、オキナグサが生き延びるためには、種から発芽した実生が安定して成長できる環境が周辺にあることが必要になります。
岡山県では、オキナグサは1970年代頃までは、ほぼ全域に分布し、河川敷や田んぼのあぜ、放牧地などに生育する、ごく身近な花であったようです。しかし現在では、植生の変化や開発によって生育地は激減し、園芸目的での採取などが追い打ちをかけ、県内の自生地は片手で数えられるほどまでに減少しています。当園のオキナグサは、1978年に入手した現在の井原市産の種子由来のものですが、現在は、もともとの自生地からは無くなってしまったそうです。
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オキナグサの種子は寿命が短く、常温では数ヶ月で、5月の連休ごろに採取したものは、お盆から秋のお彼岸ごろには死んでしまい全然発芽しなくなります。保存するには、よく乾燥させてから冷蔵庫か冷凍庫に入れることです。冷蔵庫では約10年、冷凍庫では約50年は大丈夫と言われています。
重井薬用植物園では、面倒ですが次の処理を行ってから冷蔵しています。それは、種子を播く時の利便性を考えて、沢山な種子の中からよく実ったものだけを選別し、邪魔になる綿毛をすべて除去し、更に目の細かい篩にかけて厳選した種子だけをフイルムの容器などに入れてから冷蔵庫に入れています。こうしておきますと、発芽テストの際に正確に発芽率が測定できますし、種子を配布するときにも非常に便利です。
ちなみに、よく充実した種子の数は開花時の天候にもよりますが、普通1玉当り30個前後です。これは大きな毛玉だけを摘んだ場合のことで、特に大きな玉には100個以上のこともまれにはありますが、やや小型の玉には0~10個程度しかありません。
雌しべの数が300本前後ですので30個と言うのは約10%です。当園で厳選した種子は100%発芽するはずですが、実際には見掛けだけの充実した種子が混入しますので、80%程度にしかなりません。
本葉が3~5枚出た頃が移植の適期です。子苗の移植で枯らすことがありますので、適期を守ってください。適期を過ぎると根が絡み合って分け難くなり根を傷めて枯らすこともあります。掘り上げた子苗は小さいポリポットに移植します。用土は腐葉土を少し混ぜた園用土が無難です。子苗の移植を嫌う人は、最初から小さいポリポットに用土を入れ、それに1粒ずつ播くそうです。
移植したら用心のために暫らく半日陰に置き、活着を確かめてから再び日向に出します。以後は薄い液肥を水遣り代わりに与えます。その内苗が育ち大きくなりますと鉢が小さくなりますので、やや大き目の鉢に土を落とさないようにそっくり移植します。この作業を繰り返して行けば鉢での栽培も可能ですが、鉢の大きさにも限度がありますので、次の露地植えをお奨めします。
オキナグサは、根が深く伸びますので、鉢植えよりも露地植えをお奨めします。一日中日の当たる場所に穴を掘り、鉢から土を落とさないようにそっくり移して土を掛けます。最初は水を掛け時々固形肥料か液肥を与えますが、活着するとそのまま放置しておいても大丈夫です。
露地植えのものは特別の管理は要りません。ただ、日陰を作るような雑草が生えるとオキナグサが弱りますので除草は必要です。また、時に小さい蚕のような害虫が葉を食害します。放置しておきますと葉は太い葉脈だけになりますので、早目に見つけ一匹ずつ捕殺するか殺虫剤を散布してください。
一番厄介なのは白絹病です。葉の根元の土に小さい粒状の菌が多数発生し、オキナグサの地際から溶けたように腐ってしまいます。白絹病に効く殺菌剤はありませんので予防の方法はありません。ただ、沢山花を付ける大株だけに発生しますので、若い小苗を補植するようにしておけば絶えることはありません。
一度露地に植え開花するようになったオキナグサは、移植したり鉢に上げたりしない方が賢明です。開花株の根はかなり深く地中に潜っていますので、移植の際に根を痛めますと大抵枯れてしまいます。ただ、自然に生えた実生の子苗なら、大き目に掘り取り、土を落とさないように移植することは可能です。
よくオキナグサを株分けしたという人がいます。普通株分けというのは、大株になったものを複数の株に分けることです。オキナグサは、一株から数10本の花茎が出るようになっても株は分かれません。無理に分けると枯れてしまいますし、根をいためずに掘り上げること自体が至難の業です。恐らくその人は、一鉢に複数の苗を育てていたものを一株ずつに分けたのだろうと思います。それなら小株の内なら可能です。
鉢植えのオキナグサを地面に置いていますと、長い間には鉢底の穴から根が出て地中に潜ってしまいます。その時鉢を無理矢理に移動させますと、地中に入った根は切れてしまいます。根が切れると鉢のオキナグサは痛みますが、大株の場合には枯れることはありません。それよりも、地中に残った根から沢山の葉が出てきます。太い根からは大きな葉が、細い根からは小さい葉が出てきます。この根を掘り上げてやりますと一度に多数の子苗が作れます。一度お試しください。
