リンドウは本州、四国、九州の日当たりの良い山野に生育する多年草です。晩秋から初冬の霜が降り始めるころにかけて、先が5裂した青紫~紫紅色の筒状の花を数個ずつ、高さ20~90㎝の茎の頂部や上部の葉のわきに咲かせます。葉は細長い形をして対生(2枚が対になって出る)し、ふちには微細な突起があってざらつきます。花はリンドウ科の多くの種類がそうであるように、晴天の日中のみ開き、曇りなど天気の悪い日には開きません。
「リンドウ」の名は中国名(漢名)の「龍胆(りゅうたん)」がなまったものとされ、乾燥させた根系が同じ「龍胆」の名で生薬として解熱、健胃剤などとして利用されます。同じく健胃剤として用いられる「熊の胆」と比べて苦みが強く、薬効も強いことから「熊」よりも上等との意味で「龍の胆」と名付けられたようです。苦い植物として有名なセンブリも属は違いますがリンドウ科の植物であり、強い苦み成分を持つ植物が多いことはリンドウ科の特徴であるようです。おそらくは草食動物や昆虫の食害に対する防御として発達したものと考えられますが、あえて食べた場合にはその苦味が逆に健胃の効果をもたらすとは、リンドウの仲間にとっては誤算かもしれません。
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| ▲リンドウの花。花は筒状で先が5裂する。中央にあるのが雌しべで周囲に5本の雄しべがある。 | ▲晩秋から初冬にかけて、茎の頂部や上部の葉のわきに数個の花を咲かせる。 |
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| ▲未開花のつぼみは少しねじれており、ソフトクリームのよう。花は天気の良い日にしか開花しない。 |
中国と日本で同じ名の生薬が利用されていますので、大陸にも分布する植物のように思いますが、実は日本に自生するリンドウ Gentiana scabra var. buergeri は、大陸にあるリンドウ Gentiana scabra var. scabra の変種とされており、変種としては日本固有の種です。ちなみにリンドウの仲間(リンドウ属)は世界中に数百種があり、古くは古代エジプトなどでもリンドウの仲間が薬草として利用されていたようです。マラリアの治療薬であるキニーネ発見以前にはマラリア治療に用いられたほか、中世ヨーロッパでは、ビールに入れる香草の一種として使われたそうです。別名に「ササリンドウ」の名がありますが、これは他のリンドウの仲間の葉と比較して本種の葉が笹の葉に似ているためで、本種を図案化した「笹龍胆」という家紋は、史実とは異なるようですが源頼朝の紋であると言われ、清和源氏の代表紋とされて鎌倉市の市章ともなっています。
岡山県においても全域に普通に生育する植物ですが、生育地である日当たりのよい草地の減少などにより、岡山・倉敷など都市部ではなかなか自生のものを見ることが難しくなりつつあります。当園では1977年に倉敷市児島にて採種したものから実生を育て、現在では湿地エリアの湿地内部や周囲に多くの株が生育するようになっており、10月下旬から12月上旬ごろまで花を見ることができます。
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| ▲霜が降りるころの花は特に青色が濃く冴えたものが多く、美しい。 | ▲葉は対生で付け根はやや茎を抱く。葉のふちには微細な突起が並び、触るとざらざらした感触がある。 |