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園内花アルバム

サギソウ(ラン科)  Pecteilis radiata

環境省レッドリスト(2007):準絶滅危惧 / 岡山県レッドデータブック(2009):絶滅危惧Ⅱ類

サギソウの花。白鷺のように見える部分は花びらであり、付け根の部分には雄しべ、雌しべ、距の開口部がある。 白い花びらの下方には長く伸びた距(きょ)があり、内部には蜜がたまっている。
▲サギソウの花。白鷺のように見える部分は花びらであり、付け根の部分には雄しべ、雌しべ、距の開口部がある。 ▲白い花びらの下方には長く伸びた距(きょ)があり、内部には蜜がたまっている。

 
 サギソウは、日当たりのよい湿地に生えるラン科サギソウ属の多年草で、岡山県では8月ごろ、高さ15~40cmほどの茎の先に3cmほどの白鷺(しらさぎ)が羽を広げて飛ぶ姿に似た純白の花を咲かせます。野の花の少なくなる盛夏に咲き、花の姿も涼しげで美しいことから、春に咲くトキソウ(朱鷺草)と共に山野草の代表格として愛される植物です。岡山県では県下全域の湿地に分布していますが、湿地の開発や植生の変化、盗掘などによって絶滅が危惧される状況であり、環境省、岡山県ともに絶滅危惧種とされています。
 サギソウは植生保護のため、仕方のないことではありますが、湿地内には立ち入れないようになっていることがほとんどで、近寄って観察することが難しく、なかなか花の構造までじっくり観察する機会はありませんが、もし、本種を間近で観察する機会に恵まれた場合は、ぜひ、花の付け根から下に伸びている緑色の筒状の器官を観察してみてください。これは「距(きょ)」と呼ばれる部分で、この内部には蜜を分泌する部分があり、筒の内部には蜜が溜まっています。花びらの根元の部分を良く見ると、この距の開口部の周囲に、雄しべと雌しべが配置されています。本種の距は3~4cmほどもあり、これほど長い筒の先にある蜜を吸うには、チョウのような長いストロー状の口を持った昆虫でなければならず、蝶や蛾の仲間を花粉の媒介者としていることが分かります。

ローアングルで撮影したサギソウの花。写真撮影時には湿地の植生を傷めないよう注意を払わねばならない。

▲ローアングルで撮影したサギソウの花。写真撮影時には湿地の植生を傷めないよう注意を払わねばならない。

ホームセンターの園芸コーナーで売られていた複輪のサギソウの葉。このような園芸由来のものの「植え込み」もまた、自然を破壊する行為である。
▲ホームセンターの園芸コーナーで売られていた複輪のサギソウの葉。このような園芸由来のものの「植え込み」もまた、自然を破壊する行為である。

 本種は、2000年発行の環境省のレッドデータブックでは「絶滅危惧Ⅱ類」とされていましたが、2007年に公開された「レッドリスト」では、「準絶滅危惧」と1つランクが下げられています。これは、ランク付けが正確でなかったので訂正されたわけではなく、絶滅危惧種として全国で保全活動が行われるようになり、当面の絶滅の可能性が減少したことを反映した結果とされています。岡山県でも「高梁川流域の水と緑をまもる会」の会長を務めていた重井博 前創和会理事長(故人)らの尽力により、高速道路の工事によって消滅するはずであった総社市のヒイゴ池湿地が保護され、その後の保全活動の成果もあり、現在では県内有数のサギソウの自生地となっています。その他にも、当園では倉敷市内の湿地が開発される際にサギソウなどを救出し、園内の湿地に移植したり、岡山県自然保護センターに寄贈するなどして、サギソウの保護に取り組んできています。

 花の美しさにも助けられ、少し絶滅の危機から遠ざかったサギソウですが、保護の機運の高まりとともに、困ったことも起きています。前述のヒイゴ池湿地や、倉敷美しい森内の湿地では、葉に白い縁取りのある、「複輪」のサギソウがしばしば見つかっています。岡山県内の野生のサギソウには複輪のものはなく、人間によって園芸品種が持ち込まれたものと考えられています。外見に特徴のある「複輪」品種であれば見分けて取り除くことも可能ですが、野生種とまったく見分けのつかないもの、あるいは別地域の野生種の場合には、持ち込まれたことにすら気付けないかもしれません。
 野生植物の多く、特にサギソウなど湿地性の植物の多くは、地域によって遺伝子が少しずつ異なっている可能性が高く、外見上は見分けがつかずとも、花期や病気への耐性などが少しづつ異なるなど、性質が異なっていることがあります。園芸由来の株の「植え込み」行為は、その植物の地域の遺伝子の多様性を破壊してしまう行為ですので、「持ち出す」盗掘行為と同様に、「植え込み」行為は厳に慎むべき行為と言えます。

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