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園内花アルバム

サクラソウ(サクラソウ科) Primula sieboldii

環境省レッドリスト(2007):準絶滅危惧 / 岡山県レッドデータブック(2009):絶滅危惧Ⅰ類

当園のサクラソウ。現在の新見市産だが、もともとの自生地は開発によりすでに消滅したという。 他の植物に先駆けて開花・展葉し、夏には葉を枯らして休眠に入る「春植物」。スプリング・エフェメラルともいう。
▲当園のサクラソウ。現在の新見市産だが、もともとの自生地は開発によりすでに消滅したという。 ▲他の植物に先駆けて開花・展葉し、夏には葉を枯らして休眠に入る「春植物」。スプリング・エフェメラルともいう。

 
 サクラソウは、北海道から九州南部までの湿り気の多い草地に生育する多年草で、4~5月頃、葉と同時に20cmほどになる花茎の先に数個から十数個の淡い紅紫色の花を咲かせます。花の形がサクラに似ていることから、「桜草」と名がついています。サクラソウの仲間は、変種も含めると日本にはおよそ20種類が知られていますが、そのほとんどが高山などの特殊な環境に生育しており、本種のように低地にまで分布するものは珍しいようです。園芸店等では多種多様な外国産のサクラソウの仲間が属名の「プリムラ」の名で販売されています。
 かつては日本全国に大群生地があったと言われますが、現在では生育地の環境変化や開発、園芸目的の採取によって全国的に減少し、絶滅が危惧される状況となっています。岡山県内においても、かつては県中部から北部に点々と自生していましたが、現在ではかつての自生地のほとんどで姿を消しており、真庭市の蒜山地域などで、地元住民によって行われる「山焼き(火入れ)」によって維持されている半自然草地などに小さな集団がかろうじて何か所か残存しているに過ぎない状態です。 2009年4月には、岡山県希少野生動植物保護条例による、「指定希少野生動植物」に指定され、本種の種子を含む採集や損傷が禁止されましたが、山焼き作業の継続など、自生地の自然環境の保全が課題となっています。

蒜山地域で毎春行われる「山焼き(火入れ)」。サクラソウの生育する草地を維持するためにも重要な作業である。 外国産のサクラソウの仲間は、属名から「プリムラ」と呼ばれ、数多くの種類が流通している。
▲蒜山地域で毎春行われる「山焼き(火入れ)」。サクラソウの生育する草地を維持するためにも重要な作業である。 ▲外国産のサクラソウの仲間は、属名から「プリムラ」と呼ばれ、数多くの種類が流通している。

 
 ちなみに2000年発行の環境省レッドデータブックでは、サクラソウは「絶滅危惧Ⅱ類」に指定されていましたが、2007年に発表された「レッドリスト」では、「準絶滅危惧」とされており、ひとつランクが下がった形になっています。これは各地で保全活動が行われるようになり、絶滅の危険性が下がったことが主な理由とされています(同様の理由でサギソウなどもランクが下がりました)。これらは保全活動の結果であり、当然ながらランクが下がったからと言って保全のための努力を怠れば、再び絶滅の危険性が高まることになります。
 サクラソウには、雌しべの位置と雄しべの位置が異なるタイプの花を持つという性質(異型花柱性)があり、雌しべが長いタイプの花(長花柱花)は、雌しべが短いタイプの花(短花柱花)の花粉で受粉しなければ、種子ができず、逆に短花柱花は長花柱花の花粉でなければ種子ができないような仕組みになっています。この仕組みは、できるだけタイプの違う株同士で受粉をして近親交配を防ぎ、遺伝子の多様性を維持するための植物の工夫ですが、集団が同じタイプの花ばかりになると、種子ができにくくなるというデメリットもある仕組みです。岡山県ではサクラソウの条例指定にあたって集団ごとに遺伝子の調査を行いましたが、その結果、ほとんどの集団が栄養繁殖(株別れ)によって維持されていることが明らかとなりました。集団が栄養繁殖によって維持されているということは、集団内は同じタイプの花ばかりになっており、種子生産がほとんど行われていないことを示しています。かつてあちこちにあった集団が減少したことで、集団間の距離が遠くなり、昆虫(主にトラマルハナバチと言われています)による集団間での受粉が難しくなっているのではないかと考えられます。

サクラソウの異型花柱性の一例。左:短花柱花(雄しべが見え、雌しべは見えない)右:長花柱花(雌しべが見えるが、雄しべは見えない) サクラソウの異型花柱性の一例。左:短花柱花(雄しべが見え、雌しべは見えない)右:長花柱花(雌しべが見えるが、雄しべは見えない)
▲サクラソウの異型花柱性の一例。左:短花柱花(雄しべが見え、雌しべは見えない)右:長花柱花(雌しべが見えるが、雄しべは見えない)

 
 当園では、園内の湿地の一画で、毎年4月上旬から中旬にかけて開花し、観察をすることができます。これは現在の新見市産のもので、古屋野前園長が1979年に入手し、栽培しているものですが、もともとの自生地は現在では開発により消滅してしまったということです。

サクラソウ サクラソウ

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