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園内花アルバム

サネカズラ(マツブサ科) Kadsura japonica

秋から冬に多数の果実が集まった赤い集合果を実らせる。フルーツのようでおいしそうな姿だが… 当園では温室エリアの金網フェンスに絡みついて生育しており、毎年数多くの果実が見られる。
▲秋から冬に多数の果実が集まった赤い集合果を実らせる。フルーツのようでおいしそうな姿だが… ▲当園では温室エリアの金網フェンスに絡みついて生育しており、毎年数多くの果実が見られる。

 

サネカズラは、関東地方以西の本州、四国、九州、沖縄の山野に生育する常緑のつる性木本です。国外でも済州島、台湾などの暖かい地域に分布します。亜熱帯気候の地域にも分布する植物ですが耐寒性は比較的高く、西日本では標高が高い場所にも普通に生育しています。葉は互生、表裏無毛でやや厚く光沢があり長さ5~12㎝程度の長楕円形~卵形で、葉柄や葉裏はしばしば赤紫色を帯びています。つる植物ですがフジ(藤)などのように樹木に盛んに巻きつくようなことはなく、枝先の部分でゆるく絡んで、樹木などに覆いかぶさるように生育します。花は8月頃、葉腋(葉の付け根)よりクリーム色の花びらをもった直径1.5㎝ほどの花が一つ垂れ下がって咲きます。雌雄異株(雄花の咲く株と雌花の咲く株が別)の場合と、雄しべも雌しべもある両性花が咲く場合がありますが、雌雄異株である場合が多いようです。果実は直径5㎝ほどの球状で果托(果実が付いている土台の部分)に楕円形の果実が多数くっついた姿をしており、秋につやのある鮮やかな赤色に熟します。

本種の果実はフルーツのような印象で、いかにも美味しそうなのですが、食べてみるとまったく甘さはなく、少し松ヤニのような樹脂くささがあるだけです。さらに果実の中の種も大きいので、食べられる部分自体が少なく、試食に挑戦した方は大抵がっかりされる植物です。ただし、役に立たないわけではなく、熟した果実を干したものは、同じマツブサ科の植物であるチョウセンゴミシ Schisandra chinensis の果実(五味子)に対して南方に産することから「南五味子」と呼び、咳止めや滋養強壮の薬として用います。また、果実が美しいことから、園芸植物として庭園に植えられることも良くあります。果実は一応、鳥などが食べて種子を散布するようですが、鳥にとってもやはり美味しいエサではないのか、冬になってもそのままの姿で食べられずに残っている果実を見かけることがあります。長い期間、美しい果実の姿を楽しむことができるので、園芸植物としては優秀かもしれません。また、本種は常緑ではありますが、霜が降りる頃になってくると葉が緑色から葉裏のような赤紫色、または淡黄色へと変化しますので、その葉色の変化と果実のコントラストを楽しむこともできます。

 

花は8月ごろ、葉の腋から垂れ下がるようにして咲く。雌雄異株であることが多い。写真は雌花。 果実の中には2~3個の種子が入っており、ほとんど果肉といえる部分はない。
▲花は8月ごろ、葉の腋から垂れ下がるようにして咲く。雌雄異株であることが多い。写真は雌花。 ▲果実の中には2~3個の種子が入っており、ほとんど果肉といえる部分はない。

 

本種は万葉集や古事記にも「佐那葛:さなかずら」あるいは「さねかずら」として登場します。「さね」は「実/核」で、果実を意味しており、美しい果実がなるからとも、果実の姿が種子がたくさん集まってついているように見えるからとも言われます。「真葛」と書くこともありますが、これも種子を指す「真根:さね」という言葉に由来すると考えられます。本種の属の学名(国際命名規約に基づいてラテン語で記載される)のKadsuraは和名の「かずら」から取られています。種小名はジャポニカの名の通り、日本に産することを表しています。また、本種の別名として「ビナンカズラ」との名があります。これは「美男葛」の意味で、江戸時代など髷(まげ)を結っていた時代、樹皮から採取される粘液(銀出し油/鬢水)をほつれ髪を整えるのに使ったので、男前になるということで名が付いたようです。現代風に呼ぶならば、「イケメンカズラ」とでも言うような、少し洒落っ気のある名前です。ちなみに当園のある倉敷市はかつての「備中の国」ですので、岡山県内あるいは近県から見学に来られる方の中には、「ビナン=備南」で、岡山の南部に多いという意味と思われている方も割合おられます。実際、岡山県内での分布は吉備高原以南に多く、県内分布の理解としてはあながち間違っていないことも、誤解を多くしている原因かもしれません。

なお、「銀出し油」は、現在では使われていないのはもちろん、江戸時代にも「鬢つけ油」が庶民の間に普及してからはあまり使われなくなっていたようで、名前は残っていますが、どのようにして粘液を採取するのかは、図鑑や本によって、利用する部位は、樹皮、あるいは根、あるいは葉など様々ですし、抽出する方法もただ水に浸すと書いてあるものもあれば、煮出すと書いてあるものもあって、非常にあいまいです。利用する部位については、生の植物体をちぎってみると、いずれの部位もややぬるぬるはしているのですが、葉は枯れてしまうと運搬が難しそうですし、根も掘ると株が無くなってしまいますから量産は難しそうです。やはり毎年伸びてくる、つるの部分を使用したと考えるのが妥当でしょう。抽出方法については、論より証拠、水に浸す方法と煮出す方法を両方試してみたところ、縦に裂いたつるを水に浸したものは30分ほどで粘りが出てきましたが、加熱した場合には、まったく粘り気は出ず、煮汁はさらさらの状態のままでした。どうやら粘り気のもととなる成分は加熱に弱いようで、「銀出し油」の抽出法は「つる(樹皮)を水に浸す」が正解のようです。

 

常緑性のつる植物だが、霜が降りる頃には葉全体が赤紫色、あるいは淡黄色に変化する。果実とともに色の変化を楽しめるので植栽されることもよくある。 縦に裂いたつるを30分ほど水に浸すと、粘液が出てくる。これを「銀出し油」などと言い、ちょんまげを結っていた時代には整髪に使用したという。
▲常緑性のつる植物だが、霜が降りる頃には葉全体が赤紫色、あるいは淡黄色に変化する。果実とともに色の変化を楽しめるので植栽されることもよくある。 ▲縦に裂いたつるを30分ほど水に浸すと、粘液が出てくる。これを「銀出し油」などと言い、ちょんまげを結っていた時代には整髪に使用したという。

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