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園内花アルバム

タカネハンショウヅル(キンポウゲ科) Clematis lasiandra

岡山県レッドデータブック(2009):絶滅危惧Ⅰ類

落葉性のつる植物。「高嶺」という名を持つが、実際には比較的標高の低い山地に生育する。 花弁は持たず、4枚のがく片が反り返って咲く。この仲間としては最も花期が遅く、秋に開花する。
▲落葉性のつる植物。「高嶺」という名を持つが、実際には比較的標高の低い山地に生育する。 ▲花弁は持たず、4枚のがく片が反り返って咲く。この仲間としては最も花期が遅く、秋に開花する。

 

タカネハンショウヅルは、西日本の日当たりの良い林縁などに生育するキンポウゲ科センニンソウ属のつる性落葉低木(または多年生のつる性草本)です。茎の下部は木化して年々太くなりますが、つるの部分は直径0.5㎝程度と細く、長く伸びて他の樹木などを覆うように広がります。葉は1~2回3出複葉(1~2回枝分かれをした先に、3枚の小葉がつく)で、小葉の質は薄く、卵形から卵状披針形(披針形=両刃の医療用メスのように細く尖った形)で、先は鋭く尖り、縁には粗い鋸歯があります。花は8~10月ごろ、当年枝(その年に伸びた枝)の葉腋より伸ばした6~9cmの花柄の先に、昔、火災などを知らせる際に使った「半鐘」のような、長さ1.5~2㎝ほどの小型のつり鐘型の花をつけます。他のハンショウヅル類には、花柄中央部に小苞(小さな葉のような附属物)を持つものがありますが、本種にはありません。花は花弁はなく、4枚のがく片があり、まるで花弁のように反り返って咲きます。がく片は淡紅紫色~白色で、がく片の内側のみ色づいて外側は白色であったり、がく片の外側も薄く色づいたりと、花色の変異がかなり大きい植物です。しばしば白花品もみられ、品種として、シロバナノタカネハンショウヅル f. albescens として扱われることもあります。花後、11月下旬から12月頃、果実に宿存した花柱の毛が白い綿毛となり、風によって種子(果実)を散布します。

 

葉は質が薄く紙質。1~2回3出複葉で、縁には粗い鋸歯があり、先は長く伸びてとがる。 花色には幅があり、濃いものから薄いものまで様々である。雄しべには白い長毛が密生する。
▲葉は質が薄く紙質。1~2回3出複葉で、縁には粗い鋸歯があり、先は長く伸びてとがる。 ▲花色には幅があり、濃いものから薄いものまで様々である。雄しべには白い長毛が密生する。

 

和名を漢字で表記すると「高嶺・半鐘蔓」で、高標高地に生育する種であるかのような印象をうける名前ですが、実際には、いわゆる高山植物の生育するような標高には生育せず、むしろ里山のような比較的標高の低い場所に生育する植物です。本種における「高嶺」とはせいぜい「山地」程度の意味と捉えた方が良いように思います。また、本種は学名のClematis(クレマチス)の名の通り、園芸種としても有名な「カザグルマ(風車)」、「テッセン(鉄線)」などと同じ属ですが、つる性で、花弁の代わりに4枚のがく片を持ち、釣り鐘形の花が咲くものにハンショウヅルの名がつけられています。ハンショウヅルの仲間には、もっとも普通に見られるハンショウヅル(ケハンショウヅル)、石灰岩地などに見られるトリガタハンショウヅル、関東以西に分布するが比較的稀なシロバナハンショウヅルなどがあります。その中でも、本種はもっとも花が小型で、種小名の lasiandra(雄しべに毛を持つ)が表す通り、雄しべに白い長毛があり、がく片が他のハンショウヅル類よりも特に強く反り返るため、雄しべと雌しべの部分が良く見える状態となりますが、長毛を持つ雄しべが束になっている様子は、まるで筆の先のように見えます。本種は慣れれば、花がなくとも葉だけでも見分けることができますが、花の特徴を覚えていなくても、ハンショウヅル類の中で、10月頃まで咲いている種類は本種のみ(中国地方の場合)ですので、秋に咲いているハンショウヅルを見たら、まずは本種と思ってよいでしょう。

本種は不思議な分布をしている植物で、近畿地方では大阪府南部から奈良・和歌山・三重のみに分布し、滋賀県、京都府、兵庫県では記録されていないようです。四国では愛媛県・高知県に分布しますが、徳島・香川での記録はないようです。九州ではほぼ全域に分布します。中国地方では広島県、岡山県のみに生育が知られており、岡山県では、2004年に総社市の1か所で生育が確認されたのが初めてで、それ以降、岡山県下では新たな生育地は見つかっておらず、岡山県レッドデータブック(2009)では「絶滅危惧Ⅰ類」とされています。瀬戸内海を取り囲むように分布が知られているにも関わらず、瀬戸内海に面した地域では生育地は極めて限られている、という状態です。なぜこのような分布をしているのか、ということについては、はっきりした説は無く、今後の研究の進展が待たれます。

当園では、2010年に岡山県唯一の自生地である総社市の自生地にて採集した種子から育てた苗を、しばらくプランターで栽培していましたが、2013年に温室エリアの温室南側の金網フェンス沿いに植栽しました。かなり日当たりが強い場所で、葉もやや小型で細い形となっていますが、毎年秋になるとかわいらしい花を咲かせ、当園の秋の名物となりつつあります。  

(2014.10.19)

花後には花柱の毛が綿毛となり、風によって種子を散布するが、果実が熟すのは11月下旬~12月と、霜が降り始めるような、かなり遅い時期となる。 白花品もしばしばみられる。品種シロバナノタカネハンショウヅル f. albescens として扱われる場合もある。
▲花後には花柱の毛が綿毛となり、風によって種子を散布するが、果実が熟すのは11月下旬~12月と、霜が降り始めるような、かなり遅い時期となる。 ▲白花品もしばしばみられる。品種シロバナノタカネハンショウヅル f. albescens として扱われる場合もある。

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