ツキミソウ(月見草)と呼ばれている植物には、黄色い花を咲かせる仲間と、真っ白な花を付けるものとの2種類があります。どちらもアカバナ科の外来植物で、黄色い花を咲かせる仲間には沢山の種類があって、それぞれ日本各地に広がっていますが、白花の方は生命力が弱くて野生化することも無く、ごく僅かに栽培されているだけで、滅多にお目に掛かれるものではありません。黄色い花を咲かせる仲間は、植物学上ではマツヨイグサ(待宵草)のグループに属していて一般の人はこれ等を誤ってツキミソウと呼んでいますが、白い花を咲かせるものが本来のツキミソウです。今まで混乱の無かったのは本物のツキミソウがあまりにも知られていなかったせいかも知れません。
本物のツキミソウが日本に渡来したのは嘉永4年(1851年)で、同じころ渡来したマツヨイグサの方は瞬く間に日本国中に野生化してしまいましたが、ツキミソウの方は一向に広がる気配も無く、最初栽培されていたと思われる日本最古の植物園で、150年余り細々と生き永らえてきたものと思われます。その植物園は、当時小石川養生所にあった「御薬園」、つまり現在の東京大学付属植物園の小石川植物園です。
マツヨイグサの仲間はその後明治初年(1870年頃)にオオマツヨイグサをはじめメマツヨイグサ、オニマツヨイグサ、コマツヨイグサなどが次々に渡来しています。これらがツキミソウと呼ばれる切っ掛けを作ったのは、太宰治の「富嶽百景」にある「富士には月見草がよく似合ふ」の一節だと言われています。当時(昭和14年)のマツヨイグサはオオマツヨイグサだったようですが、今では黄色い花のマツヨイグサはすべてがツキミソウと呼ばれています。竹久夢二は、マツヨイグサをヨイマチグサ(宵待草)と間違ったのか、意図的に詩的な表現にしたのか分かりませんが、宵待草の名前の方は月見草ほどには一般化しませんでした。
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| ▲本物のツキミソウ |
重井薬用植物園に栽培しているツキミソウは、1994年(平成6年)に友人から小石川植物園で入手した種子を頂戴したものです。図鑑には二年草と出ていましたが、播種後数ヶ月で開花しましたので、一年草のようですし、開花後枯れた株から又萌芽することもあるようですので、多年草ではないかとも言われています。原産国メキシコでは或いは多年草かも知れませんが良くは判りません。
茎の高さは60cmくらいになるそうですが、当園では栽培方法が悪いせいか30cm程度にしかなりません。夏の夜には径5cm前後の白い花を開きます。開花は暗くなってからですので、植物園では花を見ることが出来ません。翌朝には真っ白の花が紅変して凋んでいます。花が終ると蒴(さく)果を結び熟すと裂開して種子を落とします。ツキミソウの蒴果は乾いても普通では開きませんが、水に濡れると開く性質があります。開くと濡れた種子が粘液を出して茎を伝い流れて落ちます。また蒴果が乾くと元通りに閉じてしまいますが種子は残っていません。
ツキミソウの種子を採るには晴天の日に熟した蒴果を一つづつ切り取ります。散水をしても駄目になりますので注意が必要です。採り溜めた蒴果は乾燥状態で割り、中の種子を出します。濡らすと種子が粘液でべとついて、後の処理に困ります。収穫した種子は冷蔵庫に保存して置くと永く発芽力を失いません。
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| ▲今夜咲く蕾 | ▲咲いたツキミソウ |
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| ▲翌朝紅変して凋んだ花 | ▲花後にできた蒴果 |
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| ▲雨に濡れて開いた蒴果 |