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園内花アルバム

ヤマラッキョウ(ユリ科/ヒガンバナ科)  Allium thunbergii

ヤマラッキョウの花。小さな花を房状に付ける。ネギの「ネギ坊主」にあたるが、こちらは坊主よりもざんばら髪のイメージ。 当園では晩秋、園内の湿地内部に多数の株が花を咲かせるのを観察できる。
▲ヤマラッキョウの花。小さな花を房状に付ける。ネギの「ネギ坊主」にあたるが、こちらは坊主よりもざんばら髪のイメージ。 ▲当園では晩秋、園内の湿地内部に多数の株が花を咲かせるのを観察できる。

 
 ヤマラッキョウは、秋田県以南の本州、四国、九州のやや湿った草原に生育する多年草で、ネギやアサツキ、ニラなどと同じ仲間(ユリ科ネギ属:最新の分類(APGⅢ)ではユリ科から独立し、ヒガンバナ科に統合されている)の植物です。主に山地の草原に生育するとされますが、岡山県では県中~北部の草地を中心に、海岸近くの湧水湿地の周辺などでも生育しているのに出会うことがあります。花は9~10月ごろ(当園では10~11月ごろ)で、高さ30~60cmほどの花茎の先に紅紫色の小さな花を房状に咲かせます。派手な花ではありませんが、枯れはじめた植物の多い晩秋の草原をリンドウなどとともに彩っている光景は、なかなか印象深いものがあります。
 名前にラッキョウとはついていますが、ネギやアサツキなどのように、香りや辛味はあまりなく、地下の球根(鱗茎)もそれほど大きくなることもないため、食べることはできますが、食用として利用されることはほとんどなかったようです。栽培のラッキョウと花は非常によく似ていますが、ヤマラッキョウの方が花の数が多く、見応えがあります。
 ヤマラッキョウのひとつの花には、6枚の花びら、6本の雄しべと、1本の雌しべがありますが、よく観察してみると、花が咲き始めてから咲き終わるまでにいくつかの段階があることがわかりました。それぞれの段階ごとに、写真を撮ってみました。

1.咲き始めの段階では、6本のうち3本の雄しべが花びらより長く伸び、残り3本は花びらと同じぐらいの長さです。雌しべはまだ未熟で、短いままです。 2.長く伸びていた3本の雄しべの先端(やく)がはじけ、花粉を出したあと、残りの3本の雄しべが伸び始めますが、雄しべのうち1本はやや遅れて伸び始めます。
1.咲き始めの段階では、6本のうち3本の雄しべが花びらより長く伸び、残り3本は花びらと同じぐらいの長さです。雌しべはまだ未熟で、短いままです。 2.長く伸びていた3本の雄しべの先端(やく)がはじけ、花粉を出したあと、残りの3本の雄しべが伸び始めますが、雄しべのうち1本はやや遅れて伸び始めます。
3.後から伸びた3本の雄しべのうち2本の雄しべは花粉を出し、遅れて伸びた1本の雌しべだけはまだ花粉を出さずに残っています。この時点で雌しべもやや伸びてきます。 4.残っていた1本の雄しべが花粉を出した後、雌しべも雄しべと同じぐらいの長さにまで伸び、雌しべはこの時点でようやく成熟し、受粉ができるようになります。
3.後から伸びた3本の雄しべのうち2本の雄しべは花粉を出し、遅れて伸びた1本の雌しべだけはまだ花粉を出さずに残っています。この時点で雌しべもやや伸びてきます。 4.残っていた1本の雄しべが花粉を出す頃、雌しべも雄しべと同じぐらいの長さにまで伸びて成熟し、ようやく受粉ができるようになります。

 
 雌しべよりも雄しべの方が先に成熟することを、植物用語で「雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)」と言い、ヤマラッキョウの花はこれにあたります。これは自分の花粉で受粉してしまうこと(自家受粉)を避け、他の株の花粉で受粉する(他花受粉)ための植物の工夫ですが、ヤマラッキョウはさらに6本ある雄しべの成熟するタイミングを3段階にずらすことで、昆虫による花粉媒介のチャンスを増やし,さらに最後の1本の雄しべは雌しべの成熟とタイミングを合わせることで,自家受粉によって確実に種子を残すようにしていると考えられます。花粉を運ぶ昆虫の少なくなる晩秋に咲く花ならではの工夫ではないでしょうか。

ヤマラッキョウの球根。ラッキョウほどしっかりした球根にならず、香りや辛味に乏しいために食用とされなかった。 食用のラッキョウの花。花はヤマラッキョウと非常によく似ているが、全体の花数がヤマラッキョウよりも少ない。
▲ヤマラッキョウの球根。ラッキョウほどしっかりした球根にならず、香りや辛味に乏しいために食用とされなかった。 ▲食用のラッキョウの花。花はヤマラッキョウと非常によく似ているが、全体の花数がヤマラッキョウよりも少ない。

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