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精霊

1)誕 生

精霊 「平成14年4月、小児療育センタ-は岡山市南地区の小高い山の上にある腎臓治療専門病院で産声をあげたんじゃ。ここは、自然を愛し、小さきものたちを慈しむ心を大切にした『とんぼ先生』が開いた病院じゃった。山の上からは遠く金甲山の麓まで連なる田園風景の中を小さな電車が走っとるのがよう見えとった。」  

 ※とんぼ先生:医療法人創和会前理事長、絶滅危惧種の「ハッチョウトンボ」保護運動を推進したことより、いつしか『トンボ先生』と呼ばれるようになった。そのエピソードは総社市小学校の道徳の教科書にも取り上げられ、その後各地で起こった自然保護運動にも影響を与えることとなった。(岡山日日新聞より)

精霊「小児療育センターは最初、重井医学研究所附属病院小児言語療育外来という 長げぇ名前じゃった。実はのぉ、平成12年10月生まれの倉敷しげい病院 小児言語療育外来という兄貴分がおったんじゃ。」

精霊「小児療育センターの誕生は遙かな夢に向けた旅の始まりじゃった。小児科医と 言語聴覚士1名を乗せた小さな船は、『子どもたちに生きたことばを育てよう』 という、熱ちぃ思いを乗せて港を出たんじゃ。」

 

ナレーション

 小児療育センター(旧小児言語療育外来)がこの地に誕生した頃は、世の中では「特別支援教育に関する調査研究協力者会議」の設置(平成13年)、「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」結果報告(平成14年)、発達障害者支援法の制定(平成16年)、特別支援教育の推進するための学校教育法等の一部改正(平成18年)が実施されるなど、「発達障害」や「特別支援教育」が急速に社会問題化してきた最中のことでした。
こうした世の中の変化に呼応するように、平成16年1月、新しい療育室の完成を待って、一足先に開設した倉敷しげい病院と附属病院の小児言語療育外来は統合・改称され、ここに重井医学研究所附属病院「小児療育センタ-」として新生することとなるのです。

 

2)子どもたちに寄り添う専門資格集団

 精霊「病院はさまざまな専門資格を持った人たちの寄り合い所帯じゃ。わしらは、医療サービスの提供を基盤に置きながらも、病気にばかり目を向けるのではなく、子どもの未知なる可能性を引き出し、子どもたちを『育てる』ための専門資格集団として平成20年にリハビリテ―ション部から事業独立したんじゃ。これも『極めて強い社会的要請に応え』『発達障がいという社会問題への挑戦』に向けた医療法人創和会の熱意の表れと言えるじゃろう。」

精霊「わしらの思いに共感した仲間が全国各地から集まって来てくれた。現在では小児科医師を中心に小児専属の言語聴覚士13名、作業療法士4名、臨床心理士3名、学校心理士1名、事務2名の大所帯じゃよ。大学や大学院で心理学、教育学、社会学、語学を専攻したものが多く、専門資格の他に、臨床発達心理士、特別支援教育士、社会福祉主事、一次救命処置(BLS)インストラクター、保育士から小・中・高等学校教諭免許を併せ持っておる。実に頼もしい限りじゃ。」

精霊「子どもたちが示すこころの豊かさは、周りを取り囲む大人たちからの働きかけの度合いに懸っておる。深いつながりの中で、子どもひとりひとりが持つ育つ力を創造していくために、子どもたちの『こころに寄り添い共感する』大人の存在が大切なんじゃ。わしらの専門性が全てそのことに注がれておるんじゃ。これからも一層の高度専門職業人を目指すつもりじゃ。『共に育ちましょう』を合言葉にして、まさに『志は天まで』届けじゃよ。」

 

3)光りの森の大きなうろの木

精霊「わしの自慢のひとつがこれじゃ。『スタッフと子どもたちが心を裸にして向き合うおとぎの森』と、山陽新聞で紹介された光の森にある大きな『うろ』の木じゃよ。」

精霊「『うろ』を知っとるかのぉ。『うろ』とは木に空いた穴倉のことじゃ。森に暮らす生きものたちが幾にもわたって豊かな命を育んできた大切な場所なんじゃ。小児療育センターも子どもたちを守り育てる大きな『うろ』でありたい、常に特別な場所であり続けたいと願うてきたんじゃ。」

 精霊「うろの木は、子どもたちとの豊かな人間関係の象徴なんじゃ。高さが280センチ、直径は170センチ。訪れる誰もが心を揺り動かされる圧倒的な存在感じゃ。寒い季節には、木の中にこたつを持ち込んで4、5人の子どもたちと一緒に絵本の読み聞かせができるくらいの大きさじゃ。小児療育センタ-の誕生以来、この森の主として、神聖な存在感を漂わせておるんじゃ。光の森に足を踏
み入れた瞬間、『あっ、いいにおい』と、思わず声に出してしまうくらい、当初は杉の香りが満ちとったもんじゃ。10年の時を重ねた今、子どもたちの汗と手垢で昔の輝きは少のぉなったけれど、どうじゃ、耳を済ませてごらん。ほぉら聞こえてこんか、うろの中から、精霊たちのやさしい歌声が。」

♪ 杉の香りに包まれてぇ そっと白い木肌に触れましょう
ほらね、母さんの温もりの懐かしやぁー

 

4)発達障がい児の「共に育つ」を育てる

精霊 「子どもたちの心にはいろんな思いがあるはずじゃ。(面倒くさい)と思う気持ちや負けた時の抑え切れない悔しい気持ちもあるじゃろう。わしらはそれに寄り添おうとしてきた。1対1でじっくりと長い時間を掛けて。もちろん、とびっきりうれしいことがあった時にもじゃよ。わしらは子どもたちひとりひとりの『生きている実感』は何か、を見つめ、約束を守る活動の中で、五官を通して『痛み』と『温もり』を分かち合うてきたんじゃ。痛みは子どもたちに学びの機会を与え、温もりは挫折の中で、苦しみを乗り越える希望となるのじゃ。」

精霊「共に育つというのは、子どもたちとわしらの間に、そして子どもたち同士に、途切れのない連続性のある相互信頼の関係を築いていくことじゃよ。約束を守る形はみんな同じではないはずじゃ。発達段階が違えば、約束を守る形も違うて来るもんじゃ。わしゃ思うんじゃ。子どもたちそれぞれが自分の出来るやり方で、みんなで決めた約束の『場』に参加できるようにする、そのことが大切なんじゃと。子どもたちひとりひとりが互いの良さを受け止められると、集団の場に安心と安全が生まれるんじゃ。」

精霊 「わしには確信があるんじゃ。安心と安全があれば、子どもたちひとりひとりの『生きている実感』を呼び覚ますことができる、『ぼく』も『わたし』も、誰れもが約束を守ってカッコよく見せることができるという信念じゃ。自信ということばに置き換えることができるかのぉ。それはやがて自己と他者をつなぐ相互信頼へと連関していくんじゃ。小児療育センターの『共に育つ』療育の発達理念がここにあると言えるじゃろうなぁ。」

精霊 「子どもたちは本来、思いっきり体を動かして遊ぶことが大好きな生きものじゃ。想像してみてくれんかのぉ。光の森に毎日歓声が響き渡たっておる光景をな。時々わしもいっしょになって楽しんでおるんじゃが、療育活動を通してわしらが学んだ大切なこと、それは仲間と過ごした楽しい思い出が、幾つになっても子どもたち
の心を支え続けるということじゃった。」

精霊「療育はアートじゃよ。大人と子がそして子供たち同士が響き合うアートじゃ。そのこともみんな、子どもたちが教えてくれたことなんじゃよ。」

 

5)永遠に完成しないもの

精霊「発達障がいをもつ子どもたちも『安心の場』が必要なのは同じことじゃ。『長い間頼りにしていた先生がいないのは心配だ』と、わしに打ち明けてくれた子がおった。母親もきっと同じ思いじゃろう。しかし、いつかはどの子どもたちにも療育を終える時期をつくらなければならん。解決のむずかしい大きなジレンマじゃ。人の悩みや不安は尽きぬもんじゃ。子どもたちの日々の成長を糧に、共に歩んできた母親と一歩前に踏み出す勇気を奮いたたせておる毎日なんじゃよ。」

精霊「永遠に完成せんもの。ウォルト・ディズニ-のことばを借りるなら、小児療育センタ-をこう表現できるんかも知れんのぉ。これからも小児療育センタ-が子どもたちの創造性や人間性へとつながる豊かなテーマと物語を醸し出す特別な場所であり続けられるよう、子どもたちにもっと夢を語りたい。」

           

ナレーション

 私たちは乳幼児期から思春期まで、発達障がい児の療育・支援の専門機関として地域に貢献して参りました。試行錯誤の連続でしたが、お陰さまで、地域に支えられ、年間に500名を超える子どもたちが新たに相談に訪れるまでに育てていただくことができました。ここに深く感謝の意を表します。
また、平成27年12月にオープンした外来棟6階の「そら」ですが、平成29年4月、療育スペースをさらに広くしてリニューアルオープンしました。今回で4度目の大きなインフラ整備となります。これによりまして慢性的な療育室不足を少しでも解消でき、患者増による待機時間の短縮が計れるのではないかと期待しております。今後一層の患者満足の向上に努めて参ります。

最後になりましたが、これまでも、そしてこれからも私たちはとんぼ先生の愛した自然からのギフトを大切にしながら、子どもたちの「豊かなこころとからだを育てる」という大きな目標に向って日々航海を続けて参ります。

 みなさまのご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。