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園内花アルバム

アラカシ(ブナ科) Quercus glauca

堅果(ドングリ)は長さ1.5~2㎝の卵球形。葉の中ほどから先端にかけては大型の鋸歯がある。 葉の表面は光沢があり、裏面は細かな毛が密生するため白っぽく見える。展葉したばかりの葉は赤い。
▲堅果(ドングリ)は長さ1.5~2㎝の卵球形。葉の中ほどから先端にかけては大型の鋸歯がある。 ▲葉の表面は光沢があり、裏面は細かな毛が密生するため白っぽく見える。展葉したばかりの葉は赤い。

 

アラカシは、国内では宮城県・石川県以西の本州、四国、九州、沖縄、国外では中国大陸や東南アジアに分布する、高さ20mほどにまでなる常緑高木です。岡山県でも中国山地など標高の高い地域を除いて、ほぼ全域に分布します。かつて人が管理を行っていた(手入れをしていた)ような雑木林(二次林)でもよく見られますが、社寺林など、人手のあまり入っていない自然性の高い場所においてもシイやタブ、シラカシ、アカガシといった他の常緑樹と共に常緑林を形成している様子を見ることができます。乾燥や剪定にも強く、しばしば生け垣などにも利用されます。

本種の樹皮は暗灰色ですが、生育状態によって凸凹の皮目があったり、平滑だが横方向にしわのような凹凸があったり、縦に裂け目があったりと、個体によって様々な姿をしています。葉は長さ7~12㎝、幅3~5㎝程度の倒卵状楕円形で、成葉は質は硬く、表面は無毛で光沢がありますが、裏面には細かな毛が密生しており、灰白色をしています。葉身の中ほどから先端にかけては大型の鋸歯が目立ち、生育環境にもよりますが、シラカシなど近縁種の葉に比べて幅広い形状をしています。花は4~5月頃に咲きますが、花の着く新枝につく新葉は始め赤茶色をしていて葉の両面には柔らかな銀毛を敷いており、本種の葉とは思えないような姿をしています。花は他のブナ科コナラ属の樹木と同じように雄花と雌花が別に咲き、雄花は新枝の下部から長さ5~10㎝ほどのひも状の花序が垂れ下がって咲き、風によって花粉を飛ばして(風媒花)、新枝の先にある小さな雌花に授粉させます。堅果(ドングリ)は、長さ1.5~2㎝程度の卵球形で、殻斗(ドングリの帽子)は6~7個の同心円状の輪模様があります。堅果はその年の秋遅くに熟し、地面に落下しますが、コナラやアベマキなど落葉性のコナラ属の樹木の堅果が落下後、速やかに発根するのに対し、本種の堅果は発根しないまま冬を越し、翌春に発根します。

アベマキが高木層を優占する雑木林の下層に生育するアラカシ。やがて常緑林へと遷移していく。 樹皮は、凸凹の皮目があるもの、横方向にしわがあるもの、縦に浅い裂け目があるなど、様々である。
▲アベマキが高木層を優占する雑木林の下層に生育するアラカシ。やがて常緑林へと遷移していく。 ▲樹皮は、凸凹の皮目があるもの、横方向にしわがあるもの、縦に浅い裂け目があるなど、様々である。

 

植物の分類上、本種はブナ科コナラ(Quercus)属に分類されますが、コナラ属の樹木には、コナラ、クヌギ、アベマキなど落葉性の仲間(ナラ類)も含まれます。本種やシラカシ、ウラジロガシ、アカガシなど常緑性のカシ類と同じ属というのは、一般の方からすると不思議な印象を受けるかもしれませんが、植物の分類には、「属」よりもさらに細かな区分として、「亜属」があり、コナラ属のうち、落葉性のナラ類は「コナラ亜属」、本種など常緑性のカシ類は「アカガシ亜属」に分類されます。ちなみに、英語でオーク(oak)という名詞がありますが、ヨーロッパに分布するオークはほとんどが落葉性のナラ類です。広く言えばoakにはカシ類も含まれないこともないのですが、カシ類を指す場合はlive oakとするのが普通です。ウイスキーの宣伝文句で、「オーク(樫)樽で熟成」などとうたっているものがありますが、カシ類の樽をわざわざ製造して使っているのでなければ、ほとんどの場合は本当は「ナラ(楢)樽」で熟成されているはずです。


はるか昔、日本列島の森林を人が利用し始める前に広がっていただろうと推定される「自然植生」を「潜在自然植生」と呼ぶことがあります。本種は、シイやモチノキ類などと共に、かつて暖温帯に広がっていた常緑広葉樹林で生育していた樹木ですが、日本国内、特に西日本においては、人間による樹木の伐採が定期的に繰り返される環境下では、伐採後の再生能力に優れた落葉樹が優占するようになり、いわゆる「雑木林の里山」の姿が形作られることになります。さらに強度に里山が利用されると、痩せた土壌に適応したアカマツなどが優占することになり、マツ林が成立することになります。当園周辺にもかつてはアカマツ林が広がっていましたが、アカマツ林が松枯れによって壊滅した後、アベマキなどの落葉広葉樹が成長し、現在は高木層を優占しています。しかし、亜高木層~低木層では、本種をはじめとした常緑樹が優占しており、このまま植生遷移が進めば、当園周辺の森林は本種を中心とした常緑樹林に変化していくと予測されます。

本種は、根元の周辺にシュート(萌芽/ひこばえ)を出していることが多く、伐採すると切株の周囲から一層たくさんのシュートを発生させ、比較的速やかに再生します。萌芽能力が高いため、繰り返し伐採や下刈りが行われる里山においても生き残ることができたのだろうと考えられますが、森林を落葉樹主体の里山として維持・管理したい場合には厄介な性質です。当園においても、開園から50年が経過(2015年時点)し、本種をはじめとした常緑樹が繁茂するようになったため、ツツジ類など明るい環境に生育する落葉低木が次々と枯死し始めています。当園では、より多くの植物を園内で生育可能とし、雑木林を主体とした里山の自然環境を来園者の方に体感して頂くことを目的に、本種を重点的に伐採し、園内の環境の再整備を進めています。

(2015.3.15)

根元からたくさんのシュートを発生させている。伐採すると、切株が見えないほど多くのシュートを出す。 常緑樹の茂った林床(写真右方向)と手入れを行い、明るい林床(写真左方向)。
▲根元からたくさんのシュートを発生させている。伐採すると、切株が見えないほど多くのシュートを出す。 ▲常緑樹の茂った林床(写真右方向)と手入れを行い、明るい林床(写真左方向)。

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