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園内花アルバム

ガガブタ(ミツガシワ科)  Nymphoides indica

環境省レッドデータブック2018:準絶滅危惧/岡山県レッドデータブック(2009):準絶滅危惧

国内ではRDB種だが、東南アジア、アフリカ、オーストラリアなどの地域に広く分布している水草である。 花期は7~9月、花弁の内側には白色の細毛が密生する。花柱の長さの違う2タイプの花がある。写真は短花柱花。
▲国内ではRDB種だが、東南アジア、アフリカ、オーストラリアなどの地域に広く分布している水草である。 ▲花期は7~9月、花弁の内側には白色の細毛が密生する。花柱の長さの違う2タイプの花がある。写真は短花柱花。

 

ガガブタは本州、四国、九州の湖沼やため池に生育する多年生の浮葉植物(水草)です。国内では生育場所であるため池や湖沼の水質汚濁や改修工事、埋め立てなどによって減少しつつあり、環境省レッドリスト2018では「準絶滅危惧」とされているほか、都道府県などのレッドデータ種となっている場合も多い植物ですが、国外の分布は、中国や朝鮮半島、東南アジア、アフリカ、オーストラリアなど、広い分布域を持つ植物です。

ウキクサのような「浮遊」植物ではなく、「浮葉」植物ですので、水底の泥中に根を張り、水面まで長い茎を伸ばして、基部が深く湾入した広楕円形または卵状円形の葉を浮かべます。葉の大きさは生育環境によって4~20cm程度と幅があります。葉の表面にはしばしば紫褐色の斑紋が見られ、葉裏は紫~紫褐色をしており、粒状の腺点が目立ちます。花期は7~9月頃で、葉の直下(葉柄基部)に3~10cmほどの葉柄を持つ蕾が束生し、1日に普通1花、または2~3花づつ、水面上に立ち上がって咲いていきます。花弁は白色で5深裂(まれに4深裂)し、内側には白色の細毛が密生しています。花は朝8~9時ごろに咲きますが、午後になると早い時間(14~15時頃)には閉じてしまいます。開花前の蕾はすべすべとした真っ白な米粒のような姿をしており、開花後の“ひげもじゃ”の姿とはかけ離れた姿をしています。

株全体の様子。葉柄のように見えるのは茎。葉の直下(葉柄基部)に蕾が束生し、1~数花ずつ咲いていく。 葉の表面にはしばしば紫褐色の斑紋が出る。葉裏は紫~紫褐色で、粒状の腺点が目立つ。
▲株全体の様子。葉柄のように見えるのは茎。葉の直下(葉柄基部)に蕾が束生し、1~数花ずつ咲いていく。 ▲葉の表面にはしばしば紫褐色の斑紋が出る。葉裏は紫~紫褐色で、粒状の腺点が目立つ。

 

本種は、雌しべが長いタイプの花(長花柱花)と雌しべが短いタイプの花(短花柱花)の2つのタイプの花があり(異型花柱性)、ひとつの株にはどちらかのタイプの花しか咲かず、異なるタイプの花同士で受粉しなければ種子ができません。異型花柱性はミツガシワ科の他の植物(ミツガシワ、アサザ)のほか、サクラソウなどでも見られる性質ですが、他の植物では自家受粉で種子ができる場合があるのに対し、本種は自家受粉では種子ができない(自家不和合性)があり、どちらか1タイプの株だけでは全く種子ができません。ただし、夏~秋ごろ、葉柄の基部に太く硬い根がバナナの房状となった殖芽を形成しますので、栽培・増殖自体はどちらか1タイプだけでも可能です。

当園では、古屋野寛名誉園長が1977年(昭和52年)に倉敷市児島地区のため池に生育していた株を園内の池に移植し、一時は池全体に広がっていたという事ですが、20年ほど経過後、急に姿を消してしまったということです。現在、当園で栽培しているものは、2014年に児島地区在住の市民の方から地元産の株を頂いたもので、短花柱花タイプの株です。古屋野名誉園長撮影の過去のガガブタの写真を見ると、長花柱花の花が咲いており、残っていれば2つのタイプが揃っていたのに、と残念に思っています。

柱頭が突き出した長花柱花の花。短花柱花と長花柱花が両方ないと結実しない。(1999年 古屋野寛 撮影) 真っ白な米粒のような開花直前の蕾。花は朝8~9時ごろに開き、午後の早い時間に閉じてしまう。
▲柱頭が突き出した長花柱花の花。短花柱花と長花柱花が両方ないと結実しない。(1999年 古屋野寛 撮影) ▲真っ白な米粒のような開花直前の蕾。花は朝8~9時ごろに開き、午後の早い時間に閉じてしまう。

 

和名は、「かがみ・ぶた(鏡蓋)」が由来であるとされます。江戸時代頃の鏡は金属を磨き上げた鏡面に埃や傷がつくのを防ぐために普段は箱に入れられていましたが、本種の丸い葉と葉柄の様子が柄のついた鏡(柄鏡)の箱の蓋に似ているので…という事のようです。また、ため池などの水面を「鏡」に見立て、本種の葉が水面一面に繁茂している様子を、「鏡に蓋をしているようだ」ということで、「鏡蓋」とされた、という説もあります。水田の水面を覆いつくすウキクサも古くは「かがみぐさ(鏡草)」と呼ばれており、何らかの関連があるのかも知れません。

(2018.8.11 改訂)

夏の終わり頃から秋にかけて、葉柄の基部にバナナの房状の殖芽を形成し、栄養繁殖でも増殖する。 一雄斎国貞(歌川国貞)の描いた「ふき屋町市村座大入あたり振舞楽屋之図」。芝居の化粧をする人物が鏡を使っており、手前には蓋をされた柄鏡が見える。
▲夏の終わり頃から秋にかけて、葉柄の基部にバナナの房状の殖芽を形成し、栄養繁殖でも増殖する。 ▲一雄斎国貞(歌川国貞)の描いた「ふき屋町市村座大入あたり振舞楽屋之図」。芝居の化粧をする人物が鏡を使っており、手前には蓋をされた柄鏡が見える。(画像は 国立国会図書館デジタルコレクション より転載)

 

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