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園内花アルバム

ハマビシ(ハマビシ科) Tribulus terrestris

環境省レッドリスト(2007):絶滅危惧ⅠB類 / 岡山県レッドデータブック(2009):絶滅危惧Ⅰ類

海岸の砂浜に生育する。茎は地表近くを這うように広がり、大型の葉と小型の葉が対生する。 花は直径1cmほどの黄色の5弁花。朝に開花し、夕方には閉じる一日花である。
▲海岸の砂浜に生育する。茎は地表近くを這うように広がり、大型の葉と小型の葉が対生する。 ▲花は直径1cmほどの黄色の5弁花。朝に開花し、夕方には閉じる一日花である。

 
ハマビシは、海岸の砂浜に生える1年草または越年草です。ハマビシ科の植物は熱帯~暖帯の乾燥地に多い植物で、約25属240種ほどが知られますが、国内におけるハマビシ科の植物は本種のみです。国内の分布は千葉・福井県以西の本州・四国・九州とされますが、「レッドデータプランツ 増補改訂版」(矢原徹一ほか監修.2015.山と渓谷社)によれば、福井県では既に絶滅、九州においても現在生育が確認されている県はないようです。他にも愛知・静岡県など、絶滅とされている都道府県は多く、全国的に減少の一途にある植物です。環境省レッドデータブック2014では「絶滅危惧ⅠB類」とされていますが、岡山県でも確実な自生地はほぼ1か所のみとなっており、岡山県版レッドデータブック(2009)でも、もっともランクの高い、「絶滅危惧Ⅰ類」とされています。

茎は地表近くを這うように広がり、長さ1mほどになるとされますが、栽培してみると、大抵は10~20cmぐらいで、長く伸びて30cm程度であることが多く、水分や養分の状態など生育環境によって個体サイズには幅がある植物のようです。茎には粗い毛があり、葉は偶数羽状複葉で、小葉は長楕円形をしています。葉は大型のものと小型のものがあり、大型の葉の反対側には小型の葉が対生して付きます。花は直径1cmほどの黄色の5弁花で、朝開花して夕方にはしぼむ一日花です。茎の先の葉腋に1個ずつ咲きますが、茎を伸長させながら次々に咲いていくので、花期は長いものとなります。花期は図鑑では7~10月とされていますが、当園(倉敷市)の場合には気候にもよりますが6月下旬~8月下旬頃までで、茎の先に咲いた花から順次果実となりますので、花と果実を同時に観察することができます。

果実は木質で、球形で10個の刺と多数の刺状毛があり、熟すと5裂して地面に落ちます。落ちた果実は2つの鋭い刺がまるでツノのように付き出した形となっており、この形がため池などに生育する水草のヒシの果実に似ていることから、「浜に生えるヒシ」の意味で「浜菱」と名が付いたようです。落下後、日数が経過すると、乾燥して木質部分だけの状態となりますが、大きなツノに多数の凸凹がある、まるでSF映画のモンスターのようで少々不気味な造形をしています。この刺や果実は大変堅く、普通のハサミなどでは歯が立たず、ペンチなどを使ってようやく潰せるぐらいの堅さですので、裸足で踏めば刺さってケガをするのはもちろん、ビーチサンダルはおろかゴム底の靴の裏にも容易に突き刺さるほか、自転車のタイヤがパンクした、というような話もあります。本種の自生地では、このような鋭い刺を持った果実が砂の中に混じることになりますので、砂浜が公園や海水浴場として利用されている場合には、嫌われ者扱いで、自生地の保護・保全どころか、危険な植物であるとして、除草対象とされてしまうこともあるようです。

果実は堅い木質で、球形。10本の刺がある。熟すと5裂して地面に落下する。 落下後、乾燥した果実の1片。大きな角と多数の凸凹のある様子はSF映画のモンスターのようである。
▲果実は堅い木質で、球形。10本の刺がある。熟すと5裂して地面に落下する。 ▲落下後、乾燥した果実の1片。大きな角と多数の凸凹のある様子はSF映画のモンスターのようである。

落下して砂に混じった果実は表面の凸凹が砂の粒と見分けにくく、見分けて拾い集めるのは難しいのですが、手のひらを砂に押し付けると、果実だけが手のひらに刺さってくっついてきますので、少々痛いのを我慢する必要はありますが、効率的に?集めることができます。果実は水に浮きますので、波に運ばれて散布されると考えられますが、動物の脚などに刺さったり、毛に絡んだりなど、果実の刺も種子散布のための役割があるのかもしれません。地面に落ちた種子はすぐには発芽せず、翌年ある程度暖かくなり、雨も多くなる4月下旬~5月上旬頃から、つぎつぎに発芽してきます。暖地では、秋頃に発芽してそのまま越年するものがあるようですが、当園では越年する個体はみられません。

なお、「茨」という漢字は、現在は日本では主にバラ科のノイバラ類を指すことが多いのですが、本来は刺のある植物の総称であり、漢字そのものは、本種の規則正しく並んだ小葉や葉が対生する様子から、「次々に並ぶ」ことを意味する「次」に草かんむりを加えてできたものです(加納善光.2008.植物の漢字語源辞典.東京堂出版.p218-219)。現在の中国では「蒺藜(しつれい)/疾黎(しつり)」と呼ばれ、種子は「蒺藜(疾黎)子」と言う生薬として利尿・消炎・解毒などに用いられます。

当園では、倉敷市内の自生地のものを、大型のプランター内で栽培しています。栽培に使っている砂はマサ土のみですが、海岸植物とは言っても、本種の場合は特に塩分が無くても生育に支障はないようで、毎年多数の花を見ることができます。

(2017.6.28)

果実は砂に混じると見つけにくい。手を砂に押し付けると、効率的に?集めることができる。 ハマビシの実生。岡山県では4月下旬~5月上旬、暖かくなり、雨も多くなった時期に発芽する。
▲果実は砂に混じると見つけにくい。手を砂に押し付けると、効率的に?集めることができる。 ▲ハマビシの実生。岡山県では4月下旬~5月上旬、暖かくなり、雨も多くなった時期に発芽する。


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