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園内花アルバム

ヒメシロアサザ(ミツガシワ科)  Nymphoides coreana

環境省レッドデータブック2018:絶滅危惧Ⅱ類/岡山県レッドデータブック(2009):準絶滅危惧

7~9月頃、4~5深裂する白色の小さな花が、水面からわずかに顔をだすように咲く。花は一日花。 深裂した花冠の縁には細かな毛がある。花冠の内側にもある場合があるが、ガガブタのように密生しない。
▲7~9月頃、4~5深裂する白色の小さな花が、水面からわずかに顔をだすように咲く。花は一日花。 ▲深裂した花冠の縁には細かな毛がある。花冠の内側にもある場合があるが、ガガブタのように密生しない。

 

ヒメシロアサザは、本州から沖縄にかけての湖沼や水田などに生育する、多年生あるいは一年生の浮葉植物(葉が水面に浮かぶタイプの水草)です。国外でも朝鮮半島から台湾、中国、ベトナムにまで分布しています。水底の泥中の根茎から長い茎を伸ばし、その先に直径2~6cmほどの卵形~卵状円形の浮葉が2~3枚つき、水面に浮かびます。葉の縁は全縁(鋸歯:ギザギザがない。同属のアサザ N. peltata の葉の縁には波のような低い鋸歯がある)で、葉の基部は心形(ハート形)になっています。葉は緑色ですが、生育環境や時期によって、しばし紫褐色の模様が現れます。

花は7~9月頃、葉柄の基部に蕾が3~10個ほど束生して、花冠が4~5裂した直径8mmほどの白色の小さな花が水面からわずかに顔を出すようにして咲きます。花は朝開いて、午後の比較的早い時間にしぼんでしまう一日花です。また、水中で花を開かずに自家受粉する閉鎖花も多くつきます(角野康郎 著.2014.ネイチャーガイド 日本の水草.文一総合出版.p.294)。深裂した花冠のふちには短い毛が生えています。しばしば花冠の内側(面の部分)にも生えますが、筋状に生える程度です。同属のガガブタ N. indica と花がよく似ている…とされますが、ガガブタは花が大きく、花冠の内側全面に毛が密生するため、花が咲いていればまず間違えることはありません。

葉は基部が心形の卵形で、同属のアサザの葉のように波打たない。しばしば紫褐色の模様が現れる。 秋、水中の果実が裂けて放出された種子は水をはじくため、水面に浮き、水によって運ばれる。
▲葉は基部が心形の卵形で、同属のアサザの葉のように波打たない。しばしば紫褐色の模様が現れる。 ▲秋、水中の果実が裂けて放出された種子は水をはじくため、水面に浮き、水によって運ばれる。

 

果実は長楕円形で水中で熟し、まだ花が残る9月下旬頃には裂けて種子を放出します。種子は明るい褐色で、直径1mm弱の円形、強い光沢があります。種子は水をはじき、果実から放出されると、水面に浮上して水面を漂うことで散布されるようです。また、植物体が成長する夏ごろになると、根が無くなって、小さな葉が1~2枚のみついた、不完全な殖芽が現れ、水中を浮遊します。この殖芽は、水が一時的に干上がるなどして泥に接触すると発根し、新たな個体となるようです。本種を含むミツガシワ科の植物には、雌しべの位置と雄しべの位置が異なるタイプの花を持つという性質(異型花柱性)があり、異なるタイプの花同士でないと正常な種子ができない性質をもった植物が多くありますが、本種に限っては特にそのような性質を持っていないようで、毎年、多くの種子ができており、発芽も大変良好です。

成長してくると、小さな葉が1~2枚付いた不完全な殖芽の状態で浮遊することでも増殖する。 岡山市南部の本種が自生する水田。中干し時でも排水が悪く、泥沼のような状態の一角に生育。
▲成長してくると、小さな葉が1~2枚付いた不完全な殖芽の状態で浮遊することでも増殖する。 ▲岡山市南部の本種が自生する水田。中干し時でも排水が悪く、泥沼のような状態の一角に生育。

 

本種は同属のアサザやガガブタよりもより富栄養な水辺を好むようで、岡山県南部ではかつては水田内の雑草として生育していたようです。しかし、乾燥には弱いため、水田の排水改良が進み、中干しなどで水田の水が完全に落とされると生育できないほか、除草剤の影響などもあり、全国的に減少していることから、環境省、岡山県ともにレッドデータ植物となっています。当園で栽培しているものは、2014年に岡山市南部の水田のやや排水の悪い部分に生育していたものを、水田所有者の許可を得たうえで採集したものです。

なお、和名は「姫白・荇菜」で、「荇菜」は「あさざ」または「おみなめ」とも読み、同属のアサザのことです。直径3~4cmで鮮黄色のアサザの花に比べて小さく、白い花であるので、「姫白」の名をつけられたようです。同属の植物で白い花が咲く植物で、ガガブタがありますが、前述したように、花自体のサイズと、花冠の毛の生え方が違うため、花が咲いていればまず間違えることはありません。

(2018.7.15)

普通の「アサザ」の花は直径3~4cmで鮮黄色をしている。花冠のふちは膜状で、細かい毛がある。 ガガブタの花(左)と、ヒメシロアサザの花(右)の比較。花のサイズがまったく異なる。
▲普通の「アサザ」の花は直径3~4cmで鮮黄色をしている。花冠のふちは膜状で、細かい毛がある。 ▲ガガブタの花(左)と、ヒメシロアサザの花(右)の比較。花のサイズがまったく異なる。

 

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