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園内花アルバム

カンサイタンポポ(キク科) Taraxacum japonicum

4~5月頃、黄色い頭花を咲かせる。葉はロゼット状に出て羽状に中裂する。 総苞は反り返らず、総苞外片は内片の半分以下の長さ。角状突起はほとんどない。
▲4~5月頃、黄色い頭花を咲かせる。葉はロゼット状に出て羽状に中裂する。 ▲総苞は反り返らず、総苞外片は内片の半分以下の長さ。角状突起はほとんどない。

 

都会育ちであまり自然の中で遊んだことが無いのだけど…という人でも、タンポポの綿毛に息を吹きかけて飛ばしてみたことがあるのではないでしょうか。黄色くて円形の花の咲くタンポポは、都市の植込みやちょっとした緑地でも見ることができ、誰もが知っている「野の花」ですが、意外に良く知られていない植物でもあります。在来のタンポポ類をかなり大まかに分けると北海道から東北地方、関東地方北部にはエゾタンポポ、関東地方にはカントウタンポポ、東海地方にはトウカイ(ヒロハ)タンポポ、関西地方にはカンサイタンポポが分布するとされます。さらに西日本、特に四国、九州には白い花の咲くシロバナタンポポが多く分布します。その他にも白い花ですがやや黄色味がかかった花の咲く岡山県中部以北を中心に分布するキビシロタンポポ、黄色い花のタンポポですが一般的な図鑑には掲載されていないクシバタンポポやヤマザトタンポポといった種類もたくさんあります。

タンポポの花は小さな花(小花)が集まった頭花(=集合花)で、筒状になった花弁の先が舌のように伸びた「舌状花」だけで構成されています(ヨメナなど他のキク科の仲間には、舌状になった部分のない「筒状花」を舌状花が取り囲む構造の頭花が多い)。その頭花の下部にある緑色の部分が「総苞」で、外側にあるものを「総苞外片」、内側にあるものを「総苞内片」と呼び、外片と内片の形状や形、長さの比率などはタンポポを見分けるときに重要な特徴となります。外来タンポポ類は総苞外片が蕾の頃から反り返っていますが、本種をはじめとする在来タンポポの仲間のほとんどは反り返りません。また、タンポポの総苞片の先にはしばしば三角形の角状突起が見られ、この大きさ、形状もタンポポを見分ける際には重要な特徴です。なお、タンポポの花は比較的明るい日中のみに開き、夜間や雨天など暗くなると閉じ、数日の間、開閉を繰り返します。開花を終えると花茎ごと地面に倒伏し、種子が熟すと再び花茎が立ち上がって綿毛のついた種(痩果)を風によって散布します。また、葉や茎を切ると白い乳汁がでますが、これもタンポポ属の植物に共通した特徴です。

茎は中空で草笛などにして遊ぶ。茎や葉を切断すると白い乳汁がでてくることが、タンポポ属の共通した特徴(乳汁自体はキク科の他の植物でも見られる)。 根は太く、地中に長く伸びる(写真の個体の根は途中で切れている)。生長点が地際にあるため、踏みつけなどにも強い。
▲茎は中空で草笛などにして遊ぶ。茎や葉を切断すると白い乳汁がでてくることが、タンポポ属の共通した特徴(乳汁自体はキク科の他の植物でも見られる)。 ▲根は太く、地中に長く伸びる(写真の個体の根は途中で切れている)。生長点が地際にあるため、踏みつけなどにも強い。


カンサイタンポポは、その名の通り、関西一円に分布するタンポポの1種です。西日本にも広く分布が見られますが、「普通」なのは近畿地方から岡山県、香川県、徳島県といった東瀬戸内地域だけで、その範囲を外れると分布は少なくなります。本種の花期は4~5月頃、高さ10~20cmほどの花茎の先に、在来タンポポとしては比較的小さな直径2~3cmの黄色い頭花を咲かせます。本種の総苞は外来タンポポのようには反り返らず、他の在来タンポポと比較すると比較的小さく、細めの形状をしていることが多いようです。総苞外片は内片の半分以下の長さで、総苞の角状突起はほとんどないか、あっても小さなものであることが多いようです。葉はすべて太い根にロゼット状(放射状)に付き、長さ10~20cm、幅2~5cmの細長い形(倒披針状線形)で、羽状に中裂しますが切れ込み方には個体差があり、ほとんど切れ込みのない葉もしばしば見られます。綿毛のついた痩果は、淡黄褐色をしています。

タンポポという名の由来には諸説ありますが、別名が「鼓草」であることから、タン、ポンという鼓の音に由来するという説が有力なようです。また、タンポポは漢字では「蒲公英」と書きますが、これはタンポポの根を乾燥させたものの生薬名で、煎じて胃痛や消化促進、催乳などの効能があるとされます。「蒲(ほ)」はもともとは鳥のマガモを意味する「鳧(ふ)」で、マガモの嘴の先の黄色い色を花の色になぞらえたもののようです。(加納善光.2008.植物の漢字語源辞典.東京堂出版)

近年の研究や調査によって、セイヨウタンポポやアカミタンポポと言った外来タンポポとカンサイタンポポなど在来タンポポとの間に雑種が出来ており、地域によっては外来タンポポの大半が雑種の地域であることが分かってきました(タンポポ調査・西日本2010実行委員会 編.2011.タンポポ調査・西日本2010 報告書)。そればかりか、本種の花に外来タンポポの花粉が付いた場合には、正常な種子の結実率が低下するという現象(繁殖干渉)が起こっていることも明らかとなってきています(Nishida S., K-I. Takakura, T. Nishida, T. Matsumoto and M. M. Kanaoka. 2012. Differential effects of reproductive interference by an alien congener on native Taraxacum species. Biological Invasions 14: 439-447.)

当園内には外来タンポポも侵入していますが、幸い、数多くの本種が生育しており、4月頃の晴れた日には園内の観察路沿いを黄色に染めるほど、数多くの花が咲きます。たかがタンポポとはいえ、なかなか見事なお花畑となっており、見学者の方を驚かせています。

本種の痩果は淡黄褐色。写真右端の2つは外来のアカミタンポポと思われるもので赤褐色をしている。 4月の当園湿地エリアの観察路の様子。晴れた日には足の踏み場がないほど本種が咲き乱れる。
▲本種の痩果は淡黄褐色。写真右端の2つは外来のアカミタンポポと思われるもので赤褐色をしている。 ▲4月の当園湿地エリアの観察路の様子。晴れた日には足の踏み場がないほど本種が咲き乱れる。

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