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園内花アルバム

コオニタビラコ/タビラコ(キク科) Lapsanastrum apogonoides

春、茎の先に黄色の頭花をまばらに咲かせる。小花は舌状花のみからなり、6~9枚。 根生葉は放射状に広がり、羽状に深裂する。写真のものは栽培のため、多少間延びした姿となっている。
▲春、茎の先に黄色の頭花をまばらに咲かせる。小花は舌状花のみからなり、6~9枚。。 ▲根生葉は放射状に広がり、羽状に深裂する。写真のものは栽培のため、多少間延びした姿となっている。

 

コオニタビラコは、タビラコともいい、本州、四国、九州の水田に生育する2年草(越年草)です。秋に芽生え、ロゼット葉と呼ばれる放射状に広がった根生葉を広げた状態で冬を越します。根生葉は長さ4~10㎝、幅1~2㎝、無毛で柔らかく、羽状に深裂します。茎は細く、根生葉の間から数本が伸び、3~5月頃、多少分枝した茎の先に直径1㎝程度の黄色い頭花を咲かせます。頭花は6~9枚の舌状花(筒状になった花弁の一部が舌状に伸びた形態の小花)からなり、筒状花(タンポポなどの花の中心部分の小花のように、完全に筒状で、伸びた部分のない小花)はありません。総苞は緑色で長さ3~5㎜(花時)程度の円筒形をしており、総苞外片は鱗片状で、総苞内片は普通5~6枚あります。花後には花柄が伸びて下向きとなり、熟した果実はそのまま地面に落下します。果実は淡黄褐色、長さ4.5㎜の長楕円形をしており、先端に2~4個の突起があり、他のキク科の植物によく見られるような、冠毛(綿毛)はありません。

総苞は緑色で円筒形。総苞外片は鱗片状になっており、総苞内片は5~6枚。 果実は長さ4.5㎜程度の長楕円形。先端に2~4個の小突起がある。写真は撮影のために上向きにしているが、本来は下向きで熟し、そのまま落下する。
▲総苞は緑色で円筒形。総苞外片は鱗片状になっており、総苞内片は5~6枚。 ▲果実は長さ4.5㎜程度の長楕円形。先端に2~4個の小突起がある。写真は撮影のために上向きにしているが、本来は下向きで熟し、そのまま落下する。

 

近縁の植物で、本種と同じく「タビラコ」の名を持つ植物には、オニタビラコ Youngia japonica 、ヤブタビラコ Lapsanastrum humile がありますが、オニタビラコは別属の植物で、本種に比べてはるかに大型で種子に冠毛がある(綿毛になる)ため、見分けに苦労することはありません。ヤブタビラコは本種と同属で、生育環境によっては本種と紛らわしいことがありますが、全体に軟毛が多く、頭花は本種よりやや小型で小花の数が多く、果実には突起がないなどの特徴で見分けが可能です。

「コオニタビラコ」を漢字で表記すると、小さなオニタビラコ、という意味で「小鬼田平子」となりますが、逆にオニタビラコは大きなタビラコという意味で、タビラコは本種のことですので、名前の由来が妙なループをしてしまうことになります。そのため、本種を本来の「タビラコ」の名で掲載している図鑑も多くあります。「タビラコ」の意味としては「田んぼで平たく葉を広げている小さな草」という意味だと思われますが、この名が示すように、本種はほとんどの場合、耕作が行われている水田内部か畦周辺にのみ生育し、休耕されて年数のたった水田や、自然の湿地のような場所ではまず見られません。水田の水が抜かれ、稲刈りが終わった時期に芽生え、翌年、田植えのために水田に水が入れられるまでに開花結実するという、稲作の伝統的な耕作リズムに適応した生活史を持っていることから、おそらくは、稲作と共に大陸から日本に持ち込まれた、古い時代の帰化植物(史前帰化植物)であろうと考えられています。しかし、近年本種が生育する水田は急激に減少しており、生育していても畦際などにわずかに生育がみられるだけの場所がほとんどです。これは、除草剤など農薬の影響というよりは、稲作が機械化され、「田起こし(田植えの前に水田を耕すこと)」が冬の間に行われてしまうために、水田内部で芽生えた本種が開花・結実まで至れないことが主な原因と考えられ、稲作の耕作リズムの変化が大きく影響していると言えます。

なお、本種は、「春の七草(せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ)」の「ほとけのざ」であると言われます。シソ科の野草で、「ホトケノザ」という名の植物がありますので、ややこしい和名の例としてよくネタにされる植物の組み合わせですが、春の七草の「ほとけのざ」が放射状に広がったロゼット葉を「仏の座」、つまり仏様が座る台や円座などに見立てたものと思われるのに対し、シソ科のホトケノザは、茎を抱いた円形の葉の上に花が咲いている様子を、仏様がまさに台座に座っている姿に見立てたものですので、少し由来が違うことになります。さらにややこしいことには、古い文献の七草の記述には、「はこべら」が無く、「たびらこ」と「ほとけのざ」が併記されているものがしばしばみられる(湯浅浩史.1993.植物と行事 その由来を推理する.朝日新聞社.p.37)うえ、ムラサキ科のキュウリグサなど、「たびらこ」の別名を持つ植物が他にもあることから、本当に本種が春の七草の「ほとけのざ」であるのかどうかは、実は疑問符が付くと言わざるをえません。ただ、もっと歴史を遡れば、そもそも正月7日に食べる若菜は、この現在の7種に限らず、12種であったり、他の植物を用いたりしたようです(湯浅浩史.1993.植物と行事 その由来を推理する.朝日新聞社.p.27-35)ので、それほど現在の七草にこだわる必要もないのかもしれません。

(2015.1.11)

水田内部でカーペット状に生育するコオニタビラコのロゼット。このような群落が見られる水田はほとんど見られなくなった。 シソ科のホトケノザ。春の七草の「ほとけのざ」は諸説あるが、これは開花した時の姿を仏が座っている姿に例えたもの。
▲水田内部でカーペット状に生育するコオニタビラコのロゼット。このような群落が見られる水田はほとんど見られなくなった。 ▲シソ科のホトケノザ。春の七草の「ほとけのざ」は諸説あるが、これは開花した時の姿を仏が座っている姿に例えたもの。

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