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園内花アルバム

ミズアオイ(ミズアオイ科) Monochoria korsakowii

環境省レッドリスト(2007):準絶滅危惧 / 岡山県レッドデータブック(2009):絶滅危惧Ⅰ類

ミズアオイの花。上側に5本の黄色の雄しべ、下側に青紫の雄しべ、その反対側に雌しべがある。 上側の花は雌しべが左に、下側の花は雌しべが右側についている。このような花を鏡面対称という。
▲ミズアオイの花。上側に5本の黄色の雄しべ、下側に青紫の雄しべ、その反対側に雌しべがある。 ▲上側の花は雌しべが左に、下側の花は雌しべが右側についている。このような花を鏡面対称という。

 
ミズアオイは水田や沼地に生える高さ20~40cmほどになる1年草で、国内では北海道・本州・四国に広く分布します。春、芽生えたばかりの時期の葉は細く、先が尖ったササの葉のような形(披針形)をしていますが、大きくなってくると、ウマノスズクサ科のフタバアオイのように4~15cmのハート形の葉(心形)の葉となり、これが「水葵」の名の由来です。なお、本種の古名をナギ(菜葱/水葱)といいますが、本種と同属の植物にコナギ M. vaginalisという植物があり、姿がよく似ているので、しばしば本種と間違えられます。コナギの場合には全体に小型(小さいナギの意)で、花序は葉より低いか、同じぐらいの高さまでにしかならず、花が小さく、花数も少ないという違いがあります。「葱」の字があてられているのは、古来より本種とコナギは採取し、茹でて食用とされていたためです。

夏から秋にかけて葉よりも高く花序を出し、青紫色の花を次々に咲かせます。花は径3cmで花弁が6枚、中心から1本の雌しべと6本の雄しべを出しますが、6本の雄しべの内5本は葯は黄色で小さく、雌しべよりもに上の位置につきます。残る雄しべ1本は青紫色をしていて大きく、花糸にかぎ状の突起がついていて、雌しべの横の位置についています。

本種の花は、雌しべが花の中心の右側(青紫の雄しべは左側)につく花と、雌しべが左側(青紫の雄しべは右側)につく花の2種類の花があります。まるで鏡に映したようなので、これを「鏡面対称」といいます。このような花のつくりになっている理由としては、花粉を運ぶアブなどの昆虫が訪れた際に、大型の青紫の雄しべを足がかりにして花にとまると、体が斜めになるので、花粉は青紫の雄しべが右側にある花であれば体の右寄りに多くつき、左側にある花であれば体の左側に多くつきます。雌しべは青紫の雌しべの反対側にありますので、体の右側に花粉をつけた昆虫が次に同じタイプの花を訪れた場合には、左側にある雌しべには体の右側の花粉は付きにくいですが、違うタイプの花(雌しべが右側にある花)に行った時には雌しべに花粉が付きやすいということになり、違うタイプの花同士で受粉しやすくする工夫であると考えられています。

葉はハート形をしていて、フタバアオイの葉に似ているので、「水葵」の名がある。 5月下旬のミズアオイ。幼苗の時期は葉が披針形をしており、同じ植物とは思えない姿。
▲葉はハート形をしていて、フタバアオイの葉に似ているので、「水葵」の名がある。 ▲5月下旬のミズアオイ。幼苗の時期は葉が披針形をしており、同じ植物とは思えない姿。

 

果実は長さ1~2㎝ほどの3稜のある卵型(三角錐型)をしており、晩秋に結実します。植物図鑑には「蒴果(熟すと裂開して種子を出すタイプの果実)」であると説明されていますが、本種の果実の裂開の仕方は少々変わっていて、果実が熟す頃になると花茎が倒伏し、果実は水に浸かるような状態になります。やがて熟した果実は果柄の部分からポロリとはずれ、水面に落ちますが、落果直後の果実は水に浮き、水面を漂っています。そしてまた数日たつと、果実は水中に沈み、ようやく裂開して、長さ2㎜ほどの俵型をした種子を放出します。栽培する場合に種子を採取するには、果実が裂開するまで待つ必要はなく、倒伏した花茎に着いている果実を指で触って簡単に取れるものを集めます。その後は水を張ったバケツなどで裂開させても良いのですが、時間がかかるうえ、かなり水が臭いますので、果実をそのまま陰干しにして乾燥させ、翌春に果実をほぐして播種しても十分発芽しますので、ご家庭で栽培される場合には果実を乾燥させる方法をおすすめします。

果実は三角錐状をしており、果柄から外れて水面を漂ったのち、水中に沈んで裂開して種子を出す。 裂開した果実。種子は長さ2㎜ほどの俵型をしている。
▲果実は三角錐状をしており、果柄から外れて水面を漂ったのち、水中に沈んで裂開して種子を出す。 ▲裂開した果実。種子は長さ2㎜ほどの俵型をしている。

 

本種はかつては水田雑草として身近な植物でしたが、除草剤や水田・沼地の埋め立てなどで全国的に激減し、姿を見ることはほとんどなくなりました。倉敷市でもかつては市内を流れる倉敷川や吉岡川には水面を覆うほどに群生していたことがあります。当時の川は浅くて干潮時には川底が露出していましたが、河川の改修工事によって水深が深くなったため、川の中へはミズアオイは生えなくなってしまいました。その後、長らく確認されず、岡山県からは絶滅したかに思われていましたが、1987年、岡山大学資源植物科学研究所の榎本敬 準教授が倉敷川の河川敷で生き残っている個体を再発見し、当時、「倉敷の自然をまもる会」の会長であった故重井博 前創和会理事長とともに保全活動を行った結果、倉敷川の自生地は岡山県唯一のミズアオイ自生地として保全されています。平成16年には、岡山県希少野生生物保護条例による指定希少野生動植物となり、野生個体の種子などを含んだ採取や損傷が禁止されました。近年では、毎年のようにヌートリアやスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)など外来生物による壊滅的な被害に遭うようになり、現在でも懸命な保全活動が続けられています。

(2015.9.12)

 

▲ミズアオイの花。上側に5本の黄色の雄しべ、下側に青紫の雄しべ、その反対側に雌しべがある。 ▲ミズアオイの花を訪れたアブの一種
▲ミズアオイの花。上側に5本の黄色の雄しべ、下側に青紫の雄しべ、その反対側に雌しべがある。 ▲ミズアオイの花を訪れたアブの一種


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