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園内花アルバム

ナズナ(アブラナ科) Capsella bursa-pastoris

全国の道ばたや畑地周辺で普通にみられる春の草花の代表格。茎は直立し、分枝する。 花は普通3~6月頃に白色の4弁花を咲かせる。生育環境によっては厳冬期にも開花個体が見られる。

▲全国の道ばたや畑地周辺で普通にみられる春の草花の代表格。茎は直立し、分枝する。

▲花は普通3~6月頃に白色の4弁花を咲かせる。生育環境によっては厳冬期にも開花個体が見られる。

 

ナズナは日本全国の路傍や畑地周辺などにごく普通に生育する、高さ10~50cmほどの1年草(越年草)です。日本だけではなく、同じ種が北半球に広く分布しており、コスモポリタン種(汎存種・普遍種とも)と呼ばれる種類の植物です。日本でも古い時代に農耕(畑作)とともにもたらされた「史前帰化植物」の一つと考えられています。

花は春で、茎の頂部の総状花序に直径約3mmほどの白色の4弁花(大きく開くと十字に見えるので、十字形花ともいう)を多数咲かせます。茎を伸長させながら、開花が終わった花から次々に果実となっていくため、花期の中ごろには茎の上部には蕾と花、茎の中部には果実が付いている姿となります。花期は岡山県南部では普通3~5月頃にかけてですが、陽だまりのような暖かな場所では、厳冬期でも開花している株が比較的よく見られます。花には長い柄があり、茎の頂部の花がついている箇所では茎に密集して付いていますが、花が終わり、果実が熟すにしたがって茎が伸長していくため、果実の柄は間隔をあけてまばらに茎に付いている状態になります。果実は5~8mmの逆三角形で、長さ1~1.5cmほどの果柄の先についています。果実の先端はやや凹んでいるため、ハート型にも見えます。この果実の形は、果実が三角形にならないマメグンバイナズナ Lepidium virginicum (北アメリカ原産の帰化植物)などとの良い区別点となります。果実の中には長さ1~2.5mmの卵型で扁平な種子が十数個入っています。種子は黄褐色に熟します。

果実は5~8mmほどの逆三角形で1~1.5cmほどの柄がある。果実の先端はやや凹み、ハート型になる。 果実の内部には十数個の卵型で扁平な種子がある。種子は黄褐色に熟す。写真の種子はやや未熟。
▲果実は5~8mmほどの逆三角形で1~1.5cmほどの柄がある。果実の先端はやや凹み、ハート型になる。 ▲果実の内部には十数個の卵型で扁平な種子がある。種子は黄褐色に熟す。写真の種子はやや未熟。

 

茎や葉などには全体に細かい毛が生えていますが、毛の密度や個体サイズ、葉の形状は生育環境や個体によって変化が大きい植物です。茎葉は下部では深裂することがありますが、上部では深裂することはあまりありません。また茎葉の基部は普通、茎を抱く形になります。秋に発芽したものはロゼット状(放射状円形)に羽状に深裂した根生葉を広げて越冬しますが、春に発芽したものは根生葉がありません。

葉の縁の切れ込み方など形状には変異が大きいが、茎葉の基部は普通、茎を抱く形状になる。 葉の表面の毛の様子。個体や生育環境によって密度に差があるが、茎などを含め全体に細かい毛が多い。
▲葉の縁の切れ込み方など形状には変異が大きいが、茎葉の基部は普通、茎を抱く形状になる。 ▲葉の表面の毛の様子。個体や生育環境によって密度に差があるが、茎などを含め全体に細かい毛が多い。

 

本種は「春の七草」の一種として数えられているように、古来より山菜の一種として、あるいは薬草として食用とされている植物です。現在、植物図鑑などで用いられている植物の和名は、春の七草の、「おぎょう(=ハハコグサ)」、「ほとけのざ(=コオニタビラコ)」のように、古い時代の呼び名とは異なっているものも多いのですが、「なずな」は平安時代中期の「和名類聚抄」にも「奈都那」として収録されており、古来より「なずな」の名で親しまれていたようです。「なずな」の語源には諸説ありますが、「なでしこ(撫子)」と同じく、撫でさするほど可愛らしい菜の意味で「撫で菜」が転じたともされます。「撫で菜」の由来として、「身体を撫でて、穢れを祓ったのであろうか」と推測する説もあります(湯浅浩史.1993.植物と行事 その由来を推理する.朝日新聞社.p.40)。また、夏には枯れて姿を消すので「夏無(なつな)」に由来するとも言われます。また、漢字では、「薺」と書きますが、これは、元気よく繁茂する(=済済)本種の様子を表した(加納善光 著.2008.植物の漢字語源辞典.東京堂出版.p.321)漢字であるとされます。「ぺんぺん草」の別名もありますが、これは果実の形が三味線の「ばち」に似ているため、三味線を弾く「ぺんぺん」という音が由来とされます。また、果柄の付け根を折り下げ、「でんでん太鼓」のように回して音を楽しむ草花遊びがありますが、その音が三味線の音を連想させるからとも言われます。

(2018.1.14)

秋頃に芽生えたものはロゼット状(放射状円形)に羽状に深裂した根生葉を広げて越冬する。 草花遊びとして、果柄の付け根を折り下げ、「でんでん太鼓」のように回して音を楽しむ。
▲秋頃に芽生えたものはロゼット状(放射状円形)に羽状に深裂した根生葉を広げて越冬する。 ▲草花遊びとして、果柄の付け根を折り下げ、「でんでん太鼓」のように回して音を楽しむ。

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