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おかやまの植物事典

アレチヌスビトハギ(マメ科) Desmodium paniculatum

北アメリカ原産の帰化植物。乾燥した環境を好み、少雨乾燥の気候の岡山県南部ではいたる所に生育する。 花は長さ6~9mmの蝶形花。雄ずいと雌ずいは翼弁と舟弁に覆われているが、昆虫が訪花すると露出する。
▲北アメリカ原産の帰化植物。乾燥した環境を好み、少雨乾燥の気候の岡山県南部ではいたる所に生育する。 ▲花は長さ6~9mmの蝶形花。雄ずいと雌ずいは翼弁と舟弁に覆われているが、昆虫が訪花すると露出する。

 

アレチヌスビトハギは、北アメリカ東部原産の多年生の帰化植物ですが、地域によっては冬に枯死するため、1年草とされる場合もあります。岡山県高梁市出身の植物研究家、吉野善介氏により1940年に大阪で採集されたのが国内における初めての記録とされます(清水建美編.2003.日本の帰化植物.平凡社.p.107)。日当たりが良く乾燥した環境を好み、北海道から沖縄まで全国に帰化していますが、特に西日本に多く、市街地の植え込みや空き地、道端などから、河川敷、田畑の畔、林縁など、攪乱がある環境に生育し、ときに群生します。少雨乾燥の岡山県南部では、ごく普通に見られる植物です。

高さは0.3~1mほどになり、花は9~10月頃、分枝した茎の先に円錐花序、上部の葉腋に総状花序をつけて長さ6~9mmほどの紅紫色の蝶形花を咲かせます。旗弁(立ち上がっている花弁)の基部には、緑白~白色の2個の斑紋があります。雄ずい(雄しべ)と雌ずい(雌しべ)は、はじめ前方に突き出している翼弁と舟弁(竜骨弁)に覆われていますが、昆虫が訪花し、花にとまるとその重みで花弁の中から現れます。他のマメ科の蝶形花では昆虫が離れると、雄ずいと雌ずいがまた元に戻るものが多いようですが、本種の場合、翼弁と舟弁は元に戻らないため、雄ずいと雌ずいがむき出しになっている花は、昆虫が訪問済みの花、ということになります。花は花期の間、次々と咲き、花後は3~6節にくびれた扁平な果実となります。

花後には3~6節にくびれた扁平な果実ができる。果実は地上部が枯れたあとも落下せずに残存する。 果実は節の部分で容易に折れ、表面に密生するカギ状の細毛で衣服などに付着する、「ひっつきむし」である。
▲花後には3~6節にくびれた扁平な果実ができる。果実は地上部が枯れたあとも落下せずに残存する。 ▲果実は節の部分で容易に折れ、表面に密生するカギ状の細毛で衣服などに付着する、「ひっつきむし」である。

 

果実の表面にはカギ状の細毛が密生しており、くびれた節の部分で容易に折れて、動物の毛や人間の衣服に付着して運ばれる(付着散布)、いわゆる「ひっつきむし」です。果実は冬に地上部がすっかり枯れた状態となっても自然に落下することなく残存するため、冬、ただの枯野原と思って生育地に入ってしまうと大量にくっついてしまい、除去に大変な手間がかかることもあります。種子は果実の各節に1個ずつ入っており、慎重に果皮を割れば取り出すこともできますが、自然に裂開して種子だけ落下するようなことはなく、果実ごと地面に落下してそのまま発芽するようです。

葉は3小葉で、小葉は長さ4~10cm、幅1~4cm程度ですが、個体により、幅の狭い葉を持つタイプ(以下、狭葉タイプと表記)と幅の広い葉を持つタイプ(以下、広葉タイプと表記)が見られ、狭葉タイプは小葉の表裏や、茎の開出毛が少ない傾向があり、無毛に近いものも見られますが、広葉タイプのものは小葉を触るとビロード状の感触がするほど多毛なものが多く、茎も開出毛が多い傾向があります。両タイプは一見すると別種のようにも思えるのですが、様々な個体を観察してみると、中間的な個体も見られますので、完全に別の種と考えるのではなく、品種、あるいは変種レベルの違いなのかもしれません。倉敷市周辺では、道路の中央分離帯など、特に高温・乾燥になる痩悪地に生育しているものは狭葉タイプが多く、畑地周辺など、比較的肥沃な場所には広葉タイプが多いような印象もありますので、何らかの性質の違いはありそうな気がしています。

種子は果実の各節に1個ずつ入っている。写真のように取り出すこともできるが、自然には裂開することはない。 葉は3小葉だが、個体によって狭葉タイプ(左)と広葉タイプ(右)が見られ、一見別種のようにも思える。
▲種子は果実の各節に1個ずつ入っている。写真のように取り出すこともできるが、自然には裂開することはない。 ▲葉は3小葉だが、個体によって狭葉タイプ(左)と広葉タイプ(右)が見られ、一見別種のようにも思える。

 

和名は「荒地・盗人萩」で、在来種であるヌスビトハギ Hylodesmum podocarpum subsp. oxyphyllum var. japonicum が主として里山の林縁のような環境に生育するのに対して、より攪乱の強い場所に生育することを示した名となっています。「盗人萩」とは、果実の形が「盗人の(忍び足の)足跡」を思わせるからとか、いつの間にか衣服にくっ付くことを、知らぬ間に忍び込む盗人に例えたもの、と言われます。しかし、本種の場合は大量に付着することが多いため、こっそり行動する“盗人”というよりは、もっと荒っぽく“強盗”とでも呼びたい気がします。なお、在来のヌスビトハギは、果実の節が少なく(ふつう2節)で、節間のくびれが本種より強くくびれる(細い)ことが特徴のため、果実をみれば容易に見分けることができます。

(2020.9.20)

道路わきの荒れ地に生育する。里山的な環境に生育する在来種と比較して「荒地」に生育することが和名の由来。 在来のヌスビトハギの果実。果実はふつう2節、節間はアレチヌスビトハギより強く(細く)くびれる。
▲道路わきの荒れ地に生育する。里山的な環境に生育する在来種と比較して「荒地」に生育することが和名の由来。 ▲在来のヌスビトハギの果実。果実はふつう2節、節間はアレチヌスビトハギより強く(細く)くびれる。

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