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おかやまの植物事典

アテツマンサク (マンサク科) Hamamelis japonica var. bitchuensis

環境省レッドリスト2020:準絶滅危惧 / 岡山県版レッドデータブック2020:該当なし

2~3月頃、葉の展葉に先立って鮮黄色の花を咲かせる。岡山県のマンサク属の樹木としては比較的普通。 花弁は長さ2cm程度で線形、4弁。花弁、がく片ともに鮮黄色をしており、まるで「錦糸卵」のよう?
▲2~3月頃、葉の展葉に先立って鮮黄色の花を咲かせる。岡山県のマンサク属の樹木としては比較的普通。 ▲花弁は長さ2cm程度で線形、4弁。花弁、がく片ともに鮮黄色をしており、まるで「錦糸卵」のよう?

 

アテツマンサクは、日当たりが良く、やや乾いた環境の雑木林や林縁、尾根などに生育する、高さ2~5mほどの落葉小高木あるいは低木です。兵庫県以西の本州、四国、九州に分布するとされ、岡山県ではマンサク Hamamelis 属の樹木としては、本(変)種のほか、母種であるマンサク H. japonica とマルバマンサク H. japonica var. discolor f. obtusata が知られています。本種は岡山県下では県中部の吉備高原地域から県北部の中国山地にまで比較的広く分布しており、前述のマンサク属3種の中ではもっとも普通に見られるため、岡山県ではレッドデータ植物とはされていませんが、全国的に見れば岡山県周辺に分布が集中していることもあってか、環境省レッドリストでは「準絶滅危惧」とされています。ただし、岡山県下においても、里山の管理停止等によって植生が変化して本種の生育に適した環境が減少したり、園芸目的での採取(伐採)などによってだんだんと減少しつつあるようです。

花は2~3月頃、葉が展葉する前に、短い柄の先に鮮黄色の花が数個集まって付きます。花弁は4枚、長さ2cm程度の線形でやや縮れ、まるで「錦糸卵」のような姿をしています。他の2種の花とも非常によく似ていますが、マンサク、マルバマンサクの花は普通、がく片が暗紫色であるのに対して本種のがく片は花弁と同じく鮮黄色をしており、花の時期には見分けがしやすいですが、時にがく片が赤みを帯びたアテツマンサク、がく片が黄色のマルバマンサクなどもあるといい、同定は時期を変えて葉の星状毛の状態を確認するなど、慎重に行う必要があります。

葉は互生、長さ4~13cm、幅3~11cm程度でマンサクとほぼ同じ形状。葉縁には波状の鋸歯がある。 葉裏の様子。葉の両面に星状毛があり、特に脈上に多い。葉裏の脈上以外の星状毛が長く残ることが本種の特徴。
▲葉は互生、長さ4~13cm、幅3~11cm程度でマンサクとほぼ同じ形状。葉縁には波状の鋸歯がある。 ▲葉裏の様子。葉の両面に星状毛があり、特に脈上に多い。葉裏の脈上以外の星状毛が長く残ることが本種の特徴。

 

葉は互生、長さ4~13cm、幅3~11cm程度の菱形状卵形~菱形状円形をしていて、葉縁には波状の鋸歯があります。葉の両面には星状毛が多く、特に脈上には多く生えていますが、マンサクなどの葉では、葉が古くなるにつれて葉脈以外の星状毛は徐々に脱落していきますが、本種の葉裏の星状毛は秋の落葉期になってもしっかりと残っています。しかし、毛の密度は個体によって幅があるほか、マンサクの葉の毛の脱落する時期も一定でないため、葉のみでは区別が難しいことが多いようです。

果実は蒴果で直径1cmほどの卵状球形。先端には2個の低い突起がある。外面には褐色の短毛が密生する。 果実は裂開する際に種子を弾き飛ばす。種子は2個、黒色で光沢があり、長さ7~9mmの長楕円形。
▲果実は蒴果で直径1cmほどの卵状球形。先端には2個の低い突起がある。外面には褐色の短毛が密生する。 ▲果実は裂開する際に種子を弾き飛ばす。種子は2個、黒色で光沢があり、長さ7~9mmの長楕円形。

 

果実はマンサクそのものなどと同様の姿で、直径1cm程度の球形、先端部は少し凹んで2個の角(突起)があり、外面には褐色の短毛が密生してユーモラスな姿です。果実のタイプとしては、蒴果(熟すと裂開して種子を散布する)ですが、裂開の際にはパチンと音がするほど、勢いよく弾け、その勢いで種子を弾き飛ばします。種子は2個入っており、黒色で光沢があり、長さ7~9mm程度の長楕円形をしています。

和名を漢字表記すると「阿哲・満作」で、「阿哲」とは「阿哲地方」(現在の岡山県新見市一帯)のことです。1914(大正3)年、牧野富太郎博士が来岡され、新見市の黒髪山で県内の植物研究者を交えて植物講習会が開催された際に見いだされたため、この地域にちなんで名づけられたとされます(難波早苗著.1993.岡山県内に自生する特殊な植物.岡山県環境保全事業団.p.44 / 土岐隆信.2020.明治以降の岡山県における民間の植物研究の軌跡.岡山県自然保護センター研究報告27:1-22,p.7)。「マンサク」については、この仲間が春先に枝いっぱいに黄色い花を咲かせる様子を実った稲の穂に見立て、「豊年満作」としたとか、春先に他の樹木に先駆けて花を咲かせるため「まず咲く」ことから名付けられたともされます。岡山県では、「タニイソギ(谷急ぎ)」との地方名がありますが、これも「まず咲く」と同様、山あいで急ぐように咲くことを意味すると考えられます。

(2022.2.27)

春先に他の樹木が展葉しない時期に花を咲かせ「まず咲く」とされた?岡山県では「タニイソギ」の地方名も。 マンサク、マルバマンサクの花のがく片はふつう暗紫色。写真は花弁の一部も赤みを帯びるニシキマンサク。
▲春先に他の樹木が展葉しない時期に花を咲かせ「まず咲く」とされた?岡山県では「タニイソギ」の地方名も。 ▲マンサク、マルバマンサクの花のがく片はふつう暗紫色。写真は花弁の一部も赤みを帯びるニシキマンサク。

 

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