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おかやまの植物事典

イヌゴマ(シソ科)Stachys aspera var. hispidula

岡山県レッドデータブック(2009):準絶滅危惧

イヌゴマの花。淡いピンク色の花を多数咲かせ、なかなか美しい。 花はシソ科の特徴でもある大きく口を開いた唇弁花。下唇には濃い紫色の斑がある。
▲イヌゴマの花。淡いピンク色の花を多数咲かせ、なかなか美しい。
▲花はシソ科の特徴でもある大きく口を開いた唇弁花。下唇には濃い紫色の斑がある。

 

 イヌゴマは日本全国の湿地に生育する高さ40~70cmほどになる多年草です。湿地とは言っても、サギソウなどの生えるような貧栄養な湿地よりも、休耕田や畦溝、河川敷などやや栄養分の豊かな場所を好むようです。茎はシソ科の特徴である四角形をしており、稜(角)の上、葉の下面の主脈上には下向きの小さなトゲがあって触るとざらつきます。葉は対生(おなじところに対になって付く)で、長さ4~8cmの細長い三角形、茎の下部の葉にははっきりした柄がありますが、茎の上部の葉柄は短く、茎を抱いているように見えます。地中には長い地下茎が伸び、節から芽が出て広がります。花は7~8月、茎の上部に淡紅色の花が輪生状に多数咲きます。花が終わると5つに裂けた萼(がく)の奥に、黒い種子が3~4個できます。

 

葉は対生し、茎の上部ほど葉柄が短くなり、茎を抱いているように見える。 茎は四角形で、稜上には下向きの細かなトゲがある。
▲葉は対生し、茎の上部ほど葉柄が短くなり、茎を抱いているように見える。
▲茎は四角形で、稜上には下向きの細かなトゲがある。


 「イヌゴマ(犬胡麻)」の名は、種子や植物体全体の姿が食用のゴマに似ているが、食用にはならないことから、ゴマそのものとは異なる(異な=イヌ)ということで、名付けられたとされます。しかしイヌゴマの種子は丸っこく膨らんでおり、あまりゴマ(の種子)には似ていません。植物の姿は花の付き方などに違いはありますが、確かにゴマに似ています。しかし、近年は名前の由来であるゴマそのものが国内ではほとんど栽培されなくなっていますので、若い世代に「ゴマに似ているので…」と名前の由来を解説をしても、植物としてのゴマを見たことがない方がほとんどのため、まったく理解されません。中国原産の同じ仲間で食用とするチョロギにも似ているので、「チョロギダマシ」との別名もありますが、チョロギもあまり栽培されておらず、やはり説明に困ります。

 岡山県でもかつては県内各地に分布していた植物ですが、水田や用水路の圃場整備、湿地の開発、除草剤の影響などによって減少しつつあります。国の絶滅危惧種にはなっていませんが、岡山県レッドデータブック(2009)では、準絶滅危惧とされています。当園では温室エリアのプランターで栽培をしていますが、入手したのは比較的最近で、2010年8月に岡山市の休耕田に生育していたものを入手して育てていますが、繁殖力は旺盛で、2012年現在、既にたくさんの花を付けています。

萼は5裂して先は鋭くとがる。種子は萼の奥に3~4個が付き、熟すと萼からこぼれ落ちる。 土(泥)中に細長い地下茎を伸ばして生育する。似ているとされるチョロギは土中に芋ができるが、本種には芋はできない。
▲萼は5裂して先は鋭くとがる。種子は萼の奥に3~4個が付き、熟すと萼からこぼれ落ちる。
▲土(泥)中に細長い地下茎を伸ばして生育する。似ているとされるチョロギは土中に芋ができるが、本種には芋はできない。


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