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おかやまの植物事典

センダン (センダン科)  Melia azedarach var. subtripinnata

高さ10m以上になる落葉高木(写真中央、電柱の上の樹木)。国内に自生するセンダン科の樹木は本種のみ。 葉は2~3回羽状複葉。葉のふちには、不揃いな鈍い鋸歯がある。葉柄や葉軸、葉裏の中脈などを除きほぼ無毛。
▲高さ10m以上になる落葉高木(写真中央、電柱の上の樹木)。国内に自生するセンダン科の樹木は本種のみ。 ▲葉は2~3回羽状複葉。葉のふちには、不揃いな鈍い鋸歯がある。葉柄や葉軸、葉裏の中脈などを除きほぼ無毛。

 

センダンは、四国・九州・沖縄および小笠原諸島の海岸に近い林内に生育する、高さ7~10mほど、大きいものでは20mほどになる落葉高木です。本州には本来は自生しないとされますが、しばしば植栽される樹木のため、伊豆半島以西の暖地においては野生状態のものが多く見られ、自生とする説もあります(茂木透ほか著,2000.山渓ハンディ図鑑4 樹に咲く花-離弁花②.山と渓谷社.p.266)。倉敷地域を含む瀬戸内沿岸地域でも比較的普通に見られる樹木です。国外では、台湾から中国南部、東南アジア・インド、ヒマラヤ地方、オーストラリアまでひろく分布します。なお、日本に自生するセンダン科の野生植物は本種1種のみです。

葉は互生、長さ30~80cm、幅25~70cmの2回(まれに3回)羽状複葉で、小葉は長さ3~6cm、幅1~2.5cmの卵状楕円形あるいは卵形で、縁には不揃いな鈍い鋸歯があります。葉柄や葉軸、小葉の裏面の中脈、小葉柄などにははじめ星状毛がみられますが、やがて脱落して無毛となります。樹皮は赤褐色~灰褐色で、縦に粗く割れています。花は5~6月、当年枝の葉腋から伸ばした長さ10~15cmの集散花序に淡紫色を帯びた花を多数咲かせます。花弁は長さ約9mmの倒披針形で5枚あり、10本ある花糸(雄しべ)は合着して紫色の筒状となっています。花柱(雌しべ)は花糸より短く、筒の中に隠れています。淡紫色の花が木全体に咲いた様子は美しく、その姿をたなびく紫雲に例えて、「雲見草」との別名もあるとされます(木村陽二郎 監修,植物文化研究会 編.2005.図説 花と樹の事典.柏書房.p.252)

樹皮は赤褐色~灰褐色で、縦に粗く割れる。樹皮は生薬「苦楝皮」として駆虫薬とされたという。 花は5~6月、淡紫色の花を多数咲かせる。花の様子をたなびく紫雲に例えて「雲見草」の別名もある。
▲樹皮は赤褐色~灰褐色で、縦に粗く割れる。樹皮は生薬「苦楝皮」として駆虫薬とされたという。 ▲花は5~6月、淡紫色の花を多数咲かせる。花の様子をたなびく紫雲に例えて「雲見草」の別名もある。


花後には長さ1.5~2cm楕円形をした果実ができ、倉敷地域近辺では11~12月頃に黄色に熟します。果実の中にはほぼ果実と同じ大きさの「核」とよばれるものがあります。核は縦に深い溝がある奇妙な形をしていて大変堅く、種子のようにも見えますが、本当の種子はこの核の中にあり、5~6個が縦に並んだ形で入っています。このような果実を「核果」といい、ウメやモモなども核果です。果実は自然にも落下しますが、冬にも長く枝に残り、ヒヨドリなどの野鳥が食べに訪れている様子がしばしば見られます。

花弁は5枚、淡紫色を帯びる。花中央の紫色の筒は10本の花糸(雄しべ)が合着したもの。 果実は長さ1.5~2cmの楕円形、枝に鈴なりとなる。長く枝に残り、鳥に食べられるなどして散布される。
▲花弁は5枚、淡紫色を帯びる。花中央の紫色の筒は10本の花糸(雄しべ)が合着したもの。 ▲果実は長さ1.5~2cmの楕円形、枝に鈴なりとなる。長く枝に残り、鳥に食べられるなどして散布される。

 

和名は「栴檀」と書きますが、本来の「栴檀」はインドなどの熱帯地方に分布する、香木として有名なビャクダン科のビャクダン(白檀) Santalum album のことで、なぜかはよく分かりませんが、日本では本種が「栴檀」の名で呼ばれています。栴檀は双葉より芳し」は本種ではなく、香木である本来の「栴檀」=ビャクダンことです。本種が「せんだん」と呼ばれるようになった理由として、果実がたくさん付くため「千珠(せんだま)」あるいは「千団子(せんだんご)」と呼ばれたので、という説もあります(木村.2005)。なお、「ひっつきむし」として知られるキク科の「センダングサ(栴檀草)」の仲間の「せんだん」はビャクダンではなく、葉の形状が本種に似ていることに由来します。

果実の内部には深い溝がある「核」(右端)が入っている。果肉は苦み成分を含み「苦楝子」という生薬とされる。 「ひっつきむし」として知られるセンダングサ(キク科)。葉の形状が本種に似ていることからその名がある。
▲果実の内部には深い溝がある「核」(右端)が入っている。果肉は苦み成分を含み「苦楝子」という生薬とされる。 ▲「ひっつきむし」として知られるセンダングサ(キク科)。葉の形状が本種に似ていることからその名がある。

 

ちなみに本種は、古くは「楝(あふち/おうち)」と呼ばれ、万葉集などにも「せんだん」ではなく、この名で登場します。また、樹皮や果実は苦み成分を含み、有毒植物ともされますが、樹皮は「苦楝皮(くれんぴ)」として駆虫薬(殺虫剤ではなく、寄生虫の「虫下し」)として、果実は「苦楝子(くれんし)」として腹痛やひび、あかぎれなどの生薬として利用されていました。そのため、本来自生しないとされる本州各地でも植栽されたものと考えられます。生活に欠かせない有用植物であったわけですが、時代が下ると「平家物語」などで、処刑場で罪人の首を本種の枝にかけて「さらし首」にした、とされたことから、縁起の悪い木というイメージで捉えられるようになります。ただし、これは同じ「樗」の字があてられることがあったウルシ科のヌルデと取り違えられたものだという説(木下武司著.2010.万葉植物文化誌.八坂書房.p.59-60)もあります。

(2020.12.6)

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