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おかやまの植物事典

スベリヒユ(スベリヒユ科) Portulaca oleracea

防草シートのわずかな穴から芽生えたスベリヒユ。畑地などに生育し、嫌われ者の雑草である。 葉は緑色でへら状くさび型。花は夏、枝先に数個が咲くが、午前中のわずかな時間しか開花しない。
▲防草シートのわずかな穴から芽生えたスベリヒユ。畑地などに生育し、嫌われ者の雑草である。 ▲葉は緑色でへら状くさび型。花は夏、枝先に数個が咲くが、午前中のわずかな時間しか開花しない。

 

スベリヒユは、日本全国の畑地や道ばたなど、日当たりが良く、乾燥した場所に生育する一年草です。市街地の植え込みはもちろん、コンクリートやアスファルトの間隙などにも生育します。世界中の温帯~熱帯地域に分布しており、日本には農耕とともに、古い時代に入ってきた「史前帰化植物」のひとつであるとされます。全体に多肉質で無毛、茎は太い円柱形で赤紫~緑褐色を帯び、分枝して地面を這うように広がりますが、生育環境によっては枝が斜上(斜めに立ち上がる)する形になることもあります。葉は緑色、長さ1~2.5cm程度のへら状くさび型で茎に互生します。葉裏はやや粉白色を帯びています。根は白色で普通は株の中心から出ていますが、生育状況によっては茎の途中から発根することもあるようです。強健な雑草のわりには細い根ですが、それなりの深さにまで伸びていて、茎が軟らかくちぎれやすいこともあり、きれいに抜きとることは困難です。

花期は普通7~9月頃で、枝先に直径0.6~0.8cm程度の黄色の花を数個咲かせます。花弁の枚数は普通5枚ですが、3~6枚など様々なものがあります。花は朝、日の光が当たると開花しますが、開花は2~3時間だけで昼前にはすっかり閉じ、再度咲くことはありません(1日花)。花は2枚の大きな萼片に包まれており、開花直前まで花弁は全く見えません。また、開花後には萼片は再び閉じてしまいます。果実は烏帽子形をしていて、種子が熟すと横に裂け、上部がふたのように取れて、内部から黒色の種子がこぼれ落ちます。このような裂け方をする果実を「蓋果(がいか)」といい、本種だけではなく、オオバコ(オオバコ科)やゴキヅル(ウリ科)など他の種類の草本にも見られる形の果実です。種子は直径0.5mm程度の点刻状の凸凹のある歪んだ円形をしています。

花は2枚の萼片に包まれており、開花直前まで花弁の黄色は見えない。開花後には萼片は再び閉じる。 果実は横に裂ける蓋果。上部の蓋が脱落して内部から種子がこぼれ落ちる。
▲花は2枚の萼片に包まれており、開花直前まで花弁の黄色は見えない。開花後には萼片は再び閉じる。 ▲果実は横に裂ける蓋果。上部の蓋が脱落して内部から種子がこぼれ落ちる。

 

種子は小さく、黒色で歪んだ円形。表面には点刻状の凸凹がある。明るい褐色の種子は不完全な種子。 根は白色で強健な雑草のわりには細い根だが、茎が軟らかくちぎれやすいため、抜き取りにくい。
▲種子は小さく、黒色で歪んだ円形。表面には点刻状の凸凹がある。明るい褐色の種子は不完全な種子。 ▲根は白色で強健な雑草のわりには細い根だが、茎が軟らかくちぎれやすいため、抜き取りにくい。

 

和名を漢字で書くと「滑莧」です。「莧(ひゆ)」の字は、ヒユ科の植物のことを指す漢字であり、食べるとぬめり(滑り)があるヒユ、ということを意味しています。ヒユ科にはホウレンソウなどをはじめとして、野菜として栽培されたり、山菜として利用される植物が多くありますが、本種も古くから食用とされていたこともあり、昔はヒユの仲間とされていたようです。本種は、茎や葉をさっと茹でて、和え物、お浸し、油炒めなどにすると、ぬめりとわずかな酸味があり、なかなか美味なものですので、庭の草取りついでに、試してみてはいかがでしょうか。漢名あるいは生薬名では、葉の形を馬の前歯に見立てて「馬歯莧(ばしけん)」と呼ばれます。属の学名のPortulaca(ポーチュラカ)は、本種と同属のマツバボタン P. grandiflora を交配した園芸種、ハナスベリヒユ の名として知られています。

ちなみに本種はCAM型光合成といって、気温の低い夜間に気孔を開いて二酸化炭素を取り入れ、リンゴ酸などの有機物の形で葉の内部に貯蔵しておき、気温が高い(気孔を開くと水分が失われやすい)昼間には気孔を閉じたままで、夜間に貯蔵しておいたリンゴ酸を二酸化炭素に戻して光合成を行う、ちょっと特殊な光合成の仕方を行う植物(CAM植物)のひとつです。食べた際に感じる酸味はこのリンゴ酸に由来します。CAM型光合成は、サボテンやベンケイソウの仲間など、高温かつ乾燥した環境に生育する植物に多く、本種もそのような環境に適応した植物のひとつであり、そのことが、本種が厄介な畑地雑草として君臨できる理由でもあります。

(2017.8.11)

葉の断面。葉は厚みがあり、多肉質である。断面に見える緑色の点は、発達した維管束。 さっと茹でて水にさらしたものを食用とする。独特のぬめりと、酸味がある。
▲葉の断面。葉は厚みがあり、多肉質である。断面に見える緑色の点は、発達した維管束。 ▲さっと茹でて水にさらしたものを食用とする。独特のぬめりと、酸味がある。

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