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園内花アルバム

ウラジロ(ウラジロ科)  Diplopterygium glaucum

山地の斜面や林床に生育し、“葉”の長さは数mにもなる。岡山県下に生育するシダとしては最大の部類。 生育環境によっては大きな群落を形成する。正月飾りサイズのものを得るには夏前ぐらいに下刈りを行うとよい。
▲山地の斜面や林床に生育し、“葉”の長さは数mにもなる。岡山県下に生育するシダとしては最大の部類。 ▲生育環境によっては大きな群落を形成する。正月飾りサイズのものを得るには夏前ぐらいに下刈りを行うとよい。

 

ウラジロは、新潟・山形県以南の本州、四国、九州・沖縄の日当たりが比較的良い山地斜面や林床に生育する、常緑性の多年生シダ植物です。国外では中国中部~南部、台湾、インドにも分布します。岡山県でも、中国山地などの比較的標高の高い寒冷地を除いて、ほぼ県下全域に分布しています。日本国内に分布するウラジロ科の植物は種類が少なく、コシダ属にコシダ Dicranopteris pedata と、ウラジロ属に本種と、カネコシダ Diplopterygium laevissimum の3種のみが知られています。このうちカネコシダは国内では九州のみに産しますので、岡山県下に産するウラジロ科の植物は、コシダか本種の2種のみということになります。どちらも類似した環境に生育していますが、どちらかというと本種は谷筋などやや水分条件の良い場所に生育することが多いようです。

葉は2枚が対生しているように見えますが、実際には1枚の葉が分かれたもの(羽片)で、茎にみえる部分は葉柄で、根茎は地中にあり、長く匍匐しています(本稿では以下、対になった羽片(第1次中軸枝)を便宜上“葉”と表記)。葉は長さ50~100cm、幅20~30cmになり、さらに長さ10~20cm、幅8~30mmの小羽片に細かく切れ込みます。小羽片は幅3mm、長さ15mm程度の裂片にさらに切れ込みます。裂片は全縁(鋸歯…ギザギザがない)で、先は鈍頭または円頭(丸い形)となっています。葉の表面は緑色で平滑ですが、裏面は白色のろう状物質に覆われて白く見えることが、和名である「裏白」の由来ともなっています。前述のコシダも葉裏が白いのですが、葉(羽片)が2叉分岐を繰り返し、後述する「休止芽」を作らない点などが異なります。

根茎は地中を長く匍匐する。根茎から地上に伸びている、“茎”に見える部分は、実際には葉柄である。 葉の表面は緑色で平滑だが、葉裏は白色のろう状物質に覆われ、白色に見える。
▲根茎は地中を長く匍匐する。根茎から地上に伸びている、“茎”に見える部分は、実際には葉柄である。 ▲葉の表面は緑色で平滑だが、葉裏は白色のろう状物質に覆われ、白色に見える。


本種はシダ植物であるため花は咲かず、根茎による栄養繁殖か、胞子による繁殖を行います。胞子が包まれた袋(嚢)を胞子嚢(ほうしのう)といい、それが集まった胞子嚢群を「ソーラス(Sorus)」といいますが、ソーラスの形状、付き方などはシダ植物の重要な見分けのポイントとなります。本種の場合は7月頃、小羽片の裏側に3~4個の胞子嚢の塊が1列に並んでつきます。シダ植物の種類によっては、ソーラスを覆う「包膜」を持つものもありますが、本種には包膜はありません。

本種の2対の葉(羽片)の間には、褐色の「休止芽」と呼ばれる芽がありますが、毎春、この休止芽から新芽が芽吹き、葉軸(茎に見える部分)を伸ばした先に新たな1対の葉を広げます。理論上は、葉軸が折れたり、病気などで枯れたりなどしない限りは、毎年1段ずつ、無限に伸長していくことになります。さすがに通常は長いもので3~5m程度ですが、斜面で垂れ下がるような状態で生育している大きな群落の中では、10mぐらいにも伸びたものがあることもあります。

シダ植物のため花は咲かない。胞子嚢群(ソーラス)は7月頃、葉裏に3~4個の胞子嚢が塊となってつく。 1対の葉(羽片)の間には休止芽があり、春に芽吹いて新たな葉を広げる。理論上は無限に伸長する仕組み。
▲シダ植物のため花は咲かない。胞子嚢群(ソーラス)は7月頃、葉裏に3~4個の胞子嚢が塊となってつく。 ▲1対の葉(羽片)の間には休止芽があり、春に芽吹いて新たな葉を広げる。理論上は無限に伸長する仕組み。

 

本種は、お正月のしめ飾りに付けたり、鏡餅の下に敷いたりする、いわゆる「縁起物」の植物です。なぜ「縁起物」とされるのか、という点については諸説あるようですが、年ごとに1段ずつ新たに伸長する成長様式を、代々家が続いていくことに、必ず葉が対になって付き、葉裏が白いことを、夫婦が共に白髪になるまで寄り添う「夫婦和合」の象徴とし、大きな群落となる繁殖力の強さを子孫繁栄に結びつけた、とするのが一般的な解釈です。最近では「裏が白い=心が潔白である」ことを表すのだ、という説が喧伝されていますが、正月の縁起物の多くが一族(イエ)の繁栄を願うものであることを踏まえれば、子孫繁栄、夫婦和合を願うことが本来で、心のありようを表す、とするのは、「イエ」という単位があまり意味をなさなくなってきた現代ならではの新たな意味づけなのかもしれません。

(2020.1.13)

縁起物として正月のしめ飾りに欠かせない植物であるが、なぜ縁起が良いか、については諸説ある。 葉裏が白いので、しばしばウラジロと間違われるコシダ。葉が2叉分岐を繰り返す点が異なる。
▲縁起物として正月のしめ飾りに欠かせない植物であるが、なぜ縁起が良いか、については諸説ある。 ▲葉裏が白いので、しばしばウラジロと間違われるコシダ。葉が2叉分岐を繰り返す点が異なる。

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