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| ▲つる性の一年草で、他の植物に巻き付きながら数mにも伸びる。 写真は植物園で緑のカーテンに仕立てた際のもの。 | ▲花は黄色で直径1.5~1.8cm、8~10月頃に咲く。 花の竜骨弁が渦を巻くようにカールした奇妙な形状をしている。 |
ヤブツルアズキは、人里周辺や河原、林縁などの草地に生育するつる性の一年草です。 国内では本州から九州にかけて分布しています。 岡山県では、降水量が少ない県南部では生育は少なく、降水量の多い中部の吉備高原地域から北部の中国山地にかけては、どこにでもある、というほどではないものの、田畑周辺の草地でしばしば出会う植物です。 国外では朝鮮半島・中国・ベトナム・ミャンマー・ヒマラヤ(ネパール・ブータン)に分布する(大橋広好・門田裕一ほか編.2016.改訂新版 日本の野生植物2.平凡社.p.304)とされます。 学名上は、栽培種のアズキ Vigna angularis の変種ですが、系統的にはアズキの原種にあたります。 なお、アズキは日本のほか、朝鮮半島、中国でも広く栽培されており、従来はイネやムギ、ダイズなどと同様、古い時代に中国から持ち込まれたものと考えられてきましたが、最近の詳細なゲノム解析の結果、実は日本において本種から栽培化され、日本から中国へもたらされたらしいことが明らかとなっています(農研機構プレスリリース,2025年5月30日.(研究成果) アズキの栽培化が日本で始まったことをゲノム解析で明らかに.https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/ngrc/169242.html)。
花は8~10月頃、葉の腋から花序を出し、黄色の花を2~10個つけます。 花は直径1.5~1.8cmほどのマメ科で良く見られる蝶形花ですが、他のマメ科の蝶形花では前方に真っ直ぐ突き出している、筒状になって雄しべと雌しべを包んでいる「竜骨弁」と呼ばれる花弁が渦をまくようにカールした奇妙な形状をしています。 花に正対して右側の翼弁は竜骨弁に被さっており、左側の唇弁は竜骨弁の基部を抱くように平開しています。 果実(豆果)は長さ4~9cm、幅4mmほどの線形で無毛、黒褐色に熟します。 果実の裂開時には果皮(さや)がねじれるようにしてはじけ、種子をはじき飛ばすことで種子を散布します。 果実内部には長さ3~5mmで楕円形、黒斑のある緑褐色~暗紫褐色の種子が5~14個程度入っています。
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| ▲果実(豆果)は長さ4~9cm、幅4mmほどの線形で無毛。 黒褐色に熟し、裂開時には果皮がねじれて種子を弾き飛ばす。 | ▲写真上部左がササゲ、右がアズキ、下が本種。 本種の種子は長さ3~5mmで楕円形、色は緑褐色~暗紫褐色で黒斑がある。 |
葉は3小葉で、側小葉より頂小葉が大きく、頂小葉は長さ3~10cm、幅2~8cmで先端は急に尖った形状になります。 小葉の形状は狭卵形から卵形で、しばしば浅裂~やや中裂(頂小葉は3裂、側小葉は2裂の場合が多い)しますが、個体によって変異が大きく、まったく切れ込みのないものや,小葉が細長く、狭卵形というより鉾(ほこ)型と表現するほうが良いような形状のものもあります。 茎や葉の両面には黄褐色の毛があり、茎の基部には長さ7~10mmの托葉があります。
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| ▲葉の形状は変異が大きく、まったく切れ込まないもの(写真左)や、ほこ型になって小葉が2~3裂するもの(写真右)など様々。 | ▲茎(つる)や葉の両面には黄褐色の毛が生えている。 葉の基部には長さ7~10mmの托葉がある。 |
和名は「藪・蔓・小豆」で、やぶに生えるつる性のアズキという意味です。 また、属(ササゲ属)の学名の Vigna は、17世紀のイタリアの植物学者 Domenico Vigna への献名、種小名の angularis は「角ばった、稜のある」という意味のラテン語で、栽培種のアズキや本種の葉柄が角ばっていることを意味していると思われます。 変種名 nipponensis は「日本の」という意味です(豊国秀夫 編.1987.植物学ラテン語辞典.至文堂.p.215,22,132)。 本種が最初に記載されたのは1937年ですが、それから90年近くたって、前述したように近年の研究により本種から栽培アズキへの栽培化が日本で行われたことが確認されたことで、変種名の意味するところをただ「日本の」とするよりは、「日本産の」と訳したほうがふさわしいように思えます。 ちなみにアズキによく似たマメで、属の和名ともなっているササゲ V. unguiculata はアフリカ大陸原産とされます。
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| ▲栽培アズキの花。 原種である本種と同様、竜骨弁がカールした形状をしているが、茎はつる性ではなく、直立する。 | ▲ノアズキ D. villosa 。 竜骨弁がカールした、本種や栽培アズキによく似た花を咲かせるが、別属(ノアズキ属)である。 |
また、本種や栽培アズキによく似た、竜骨弁がカールした黄色の花を咲かせるマメ科のつる植物に、ノアズキ Dunbaria villosa がありますが、これはササゲ属ではなく別属のノアズキ属です。 本種とはヒメクズとの別名があるように、クズ Pueraria lobata の葉を小型にしたような菱形に近い形状となる葉、本種のような細長い線形ではなく、扁平な広線形で短毛が密生する豆果をつけることなどで見分けられます。
当園周辺には本来、ヤブツルアズキは自生せず、乾燥地に強いノアズキが雑草として至るところに繁茂しています。 しかし、ある年に岡山県北部で採種した本種の種を播き、緑のカーテンとして栽培したところ、飛散した種子が翌年からあちこちで芽生え始めてしまいました。 地域外からの移入種ということになりますので、園外に逸出しないよう、毎年、花が咲く前に引き抜いて駆除するようにしています。(2026.1.17)