日本鱗翅学会が選定した都道府県のチョウ @ |
日本鱗翅学会(チョウとガの学会)は、2024年に各都道府県のチョウを選定しました。その基準として環境保全のシンボルとしての視点が重視されました。このことから環境省やその都道府県の絶滅危惧種が多く選ばれています。そのランクは様々ですが、岡山県のウスイロヒョウモンモドキは最も厳しい状況である「絶滅危惧TA類(環境省)」、「絶滅危惧T類(岡山県)」です。本州西部の生息地での絶滅が続き、現在野生で確認されているのは岡山県鏡野町の恩原高原のみとなってしまいました。
写真(2013.9.29撮影)はその生息地保護のための草刈り作業の様子です。

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日本鱗翅学会が選定した都道府県のチョウ A岡山県 |
岡山県ではウスイロヒョウモンモドキが選ばれたことを前回紹介しました。かつて兵庫県から山口県にかけて広く分布していましたが、その後各地で絶滅が始まり、岡山県鏡野町の恩原高原が唯一の野生生息地になってしまいました。主な生息地であった里山の草地は、農家にとって肥料、あるいは家畜のエサとして不可欠な存在でしたが、高度成長期に農業の形態が大きく変わり、やがてこの草地が消滅していきました。恩原高原では地域の方が熱心に保護活動に取り組まれ、草刈りによって草原が維持されています。どうにか絶滅を免れていますが、個体数が減少すると遺伝的な多様性が失われていくという問題に直面しています。
写真は当館が保管する最も古いもので、1952年6月東粟倉村(現:美作市)後山産です。
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日本鱗翅学会が選定した都道府県のチョウ B中国地方+隣接県編 |
中国地方および岡山県に隣接する県で選定されたチョウを紹介します。やはり環境保全の対象となっているチョウが選ばれています。カッコ内は岡山県でのRDBのランクですが、すでに2種は絶滅しています。
鳥取県 ヒサマツミドリシジミ(岡山県:留意)
島根県 ゴマシジミ(岡山県:絶滅危惧U類)
広島県 ヒョウモンモドキ(岡山県:絶滅)
山口県 オオウラギンヒョウモン(岡山県:絶滅)
兵庫県 ウスイロヒョウモンモドキ(岡山県:絶滅危惧1類)
香川県 ウラジロミドリシジミ
写真は当館が保管する最古の岡山県産のゴマシジミで、1958年8月の大佐町永富(現:新見市)産です。現在岡山県で、このチョウに出会えるチャンスが比較的あるのは蒜山高原だけだと思います。

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日本鱗翅学会が選定した都道府県のチョウ C北海道と沖縄県編 |
このテーマの話題を2つ追加します。
日本列島は南北に約3,500qと大変長く、その北の北海道と南の沖縄県がどのようなチョウを選んだのか気になりました。北海道はエゾシロチョウ、沖縄県は以前から県蝶に指定されていたオオゴマダラでした。亜寒帯と亜熱帯のチョウで納得しました。両種ともそれぞれの地において比較的身近なチョウであり、他の多くの都府県が取り上げている絶滅危惧種ではありません。北海道・沖縄県へは何度か出かけましたが、岡山県とは全く違う自然環境に大きな魅力を感じました。
写真は当館で保管している沖縄県知念村(現:南城市)産(1988.7.20)のオオゴマダラです。

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日本鱗翅学会が選定した都道府県のチョウ D東京都と大阪府編 |
このシリーズの最後に、都会ではどのようなチョウが選ばれたのかを東京都と大阪府を例に紹介します。
東京都に関しては思わぬ点を突かれました。小笠原諸島の固有種のオガサワラセセリで、母島の極めて限られた地域のみに生息しています。一度は絶滅したと考えられていましたが、生息が再確認され保護活動が展開されています。
大阪府はヒロオビミドリシジミでした。京都府と大阪府の一部から山口県東部の限定された地域に分布しています。幼虫が食べる植物はナラガシワ(ドングリの木の一種)で、大阪府能勢町の三草山ではこの木の保全活動が行われています。
岡山県では新見市を中心とした地域に多くの生息地が点在しており、写真は新見市草間産(1979年)です。
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