病院の中にこんちゅうかん!? 倉敷昆虫館
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虫の世界
 
 身近なガの幼虫たち

2022.12.22

倉敷昆虫館 岡野貴司 

 

ガは人気のある昆虫ではなく、どのような形で皆さんに紹介すればよいか戸惑ってしまいます。
身近なガとその幼虫を紹介することで、ガへの理解が少しでも深まって、皆さんにガの面白さを感じていただけたらと思っています。


@  モンシロドクガ H  フタトガリアオイガ
A  カブラヤガ I  アカヒゲドクガ
B  マイマイガ J  ネギコガ
C  セスジスズメ K  フクラスズメ
D  ハマオモトヨトウ L  ワタノメイガ
E  クスサン M  イチジクヒトリモドキ
F  アオヘリアオイラガ N  ナシケンモン
G  クロメンガタスズメ    

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 身近なガの幼虫たち@ モンシロドクガ(ドクガ科) Euproctis similis


 岡山県のどこでも見られる普通種で、幼虫はバラ科、ブナ科、マメ科など極めて多くの植物を食べ、しかもかなり派手な色をしているため、目に触れる機会も多いかと思います。ただし、幼虫には毒刺毛があるため、触るのは禁物。日本のドクガ科53種のうち、毒刺毛を持っているのは一部にすぎません。しかし、毒のない刺毛でも皮膚に刺さると赤く腫れることもあり、その見極めが難しいのでそっと観察するのがよいと思います。
 幼虫の写真はこの5月17日に撮影、標本は1963年に倉敷市玉島で採集されたもので、本館が保管しています。白い翅で毒々しくはないですね。実は日本のドクガの約1/3はこのような白、または白基調であり、何か弱々しい感じもします。このガの成虫には毒はありません。

   

 

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 身近なガの幼虫たちA カブラヤガ(ヤガ科)Agrotis segetum

 
  ヨトウムシとかネキリムシという名前を聞いたことがあると思います。農家や家庭園芸愛好家の方にとっては天敵のような幼虫です。ただしこれらは俗称であって、特定の種をさしているわけではありません。ヨトウムシとは幼虫が夜に土中から這い出して作物等を食い荒らす害虫、ネキリムシも同様に夜に這い出して食害し、時に作物の根元を切ってしまうためこのように呼ばれています。しかし人によって、あるいは地域によって対象が異なっているようです。ヨトウムシはヨトウガやハスモンヨトウなどの幼虫を、ネキリムシはカブラヤガやタマナガの幼虫をさしていることが多く、これらはすべてヤガ科です。ヨトウムシの中にネキリムシも含まれると考えるのがよいかもしれません。カブラや玉菜(キャベツ)の名がついていますが、いろいろな植物の葉や茎、そして根を食べます。
 写真の幼虫はカブラヤガの幼虫で、畑を耕していたら土中からゴロンと出てきました。成虫標本は本館が保管しているもので、1977年7月に倉敷市児島宇野津で採集されたものです。

   

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 身近なガの幼虫たちB マイマイガ Lymantria dispar


 またドクガ科の話題です。マイマイガは「舞い舞い蛾」と書きますが、これはオスが不規則にクルクルと回転するように飛ぶことから名付けられました。6月に出現するごく普通のガで、しかも昼に活動するため、この時期目撃する機会が多いと思います。
私はこのガの幼虫の大きさにいつも驚かされます。成虫は大型に属するものの特にデカいと言うほどのことはありませんが、この幼虫はヤママユ科やスズメガ科の幼虫に負けないくらい巨大です。しかも赤や黒の斑紋と長い毛の束は毒々しく、ちょっと身を引いてしまいますね。しかしこの毛に毒はなく、また成虫も毒は持っていません。幼虫は極めて多くの植物を食べますので、これも出会う機会が多いと思います。
 幼虫の写真はこの6月に備前市で撮影、標本は1963年6月に倉敷市幸町で採集されたオスです。

  

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 身近なガの幼虫たちC セスジスズメ(スズメガ科)Theretra oldenlandiae


 ガやチョウの幼虫には、毛虫、芋虫、青虫、尺取り虫などいろいろな呼び方がありますね。
 一般的に芋虫とは、毛虫ではなくて青虫より大きな幼虫をさすことが多いようですが、本来は芋につく幼虫の名称で、今回のセスジスズメはその代表格です。このガの幼虫はサトイモの害虫として農家の方には大変嫌われています。他に芋の葉を食べるスズメガとして、サツマイモにつくエビガラスズメ、ヤマイモにつくキイロスズメがあります。昔、芋類は穀物に次ぐ重要な主食であったため、このような名前がつけられたのだと思います。セスジスズメは年2回、5月から10月まで普通に見ることができ、サトイモの他、ホウセンカ、ヤブガラシ、マツヨイグサなども食べます。
 写真の幼虫は外来植物として勢力を拡大しているユウゲショウ(マツヨイグサと同じアカバナ科)で見つけました。標本は1975年9月に総社市種井で採集されたものです。

   

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  身近なガの幼虫たちD ハマオモトヨトウ(ヤガ科)Brithys crini


 夏になると皆さんのご家庭でこのガの幼虫の被害が増えるのではないかと思い、このハマオモトヨトウを取り上げてみました。その名の示すとおり、暖かい海岸でみられるハマオモトを幼虫が食べます。以前は黒潮が流れるような暖地に限定されていましたが、近年は同じヒガンバナ科の他の植物、例えばアマリリスやタマスダレをエサに日本での分布を広げています。私の近所でも、これらの園芸品種が何者かによって丸坊主にされたという話をよく聞きます。ヒガンバナやスイセンも食べますが、これらの植物の葉が茂る時期とこのガの発生期とが一致しないため、岡山県での食害は少ないのではないかと思っています。
 幼虫の写真は2021年8月に倉敷市真備町で、タマスダレを食べ尽くして繭(蛹)になるために土中に潜ろうとしているところを撮影しました。標本は2009年に岡山市北区で採集したものです。  

  

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 身近なガの幼虫たちE クスサン(ヤママユ科)Caligula japonica


 この幼虫には「白髪太郎」や「栗毛虫」という名前がついています。多くの植物の葉を食べますが、クリは大好きで時に大発生して丸坊主にしてしまいます。成虫は9〜10月に出現し、街路灯などにもよく集まってきます。ヤママユ科の中には繭から絹糸を紡ぐものがありますが、クスサンの繭は大変粗い網目状で「透かし俵」と呼ばれており、到底絹糸がとれるようなものではありません。クスサンにはもう一つ面白い話があります。昔はこの幼虫の絹糸腺から釣りのテグスを作っていました。1匹の幼虫から2〜3mの糸がとれたそうです。私が子どもの頃、古老からその作り方を聞いたことがあり、「テグスをとるからテグス蚕、それが短くなってクス蚕になった」と話していました。クスサン(樟蚕)の名はクスノキの葉を食べることに由来していますが、テグス蚕という別名もあるようです。この古老の説も間違いではありませんね。
 幼虫の写真は2017年6月に吉備中央町で撮影、標本は2016年10月に倉敷市幸町で採集したものです。 

  

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  身近なガの幼虫たちF ヒロヘリアオイラガ(イラガ科)Parasa lepida


 日本には38種のイラガがいますが、強烈な毒針を持った幼虫が多く、これに触れると毒液が注入されて激しい痛みとともに皮膚炎を発症します。人の生活圏でよく見られるものが数種いますが、南方から日本にやって来て近年急速に分布を拡大しているヒロヘリアオイラガが最も優勢だと思います。極めて多食性のため、注意すべき樹木を限定することは難しいですが、あえて列挙すればサクラやウメなどのバラ科、クヌギやクリなどのブナ科、カキ、カエデでしょうか。
 幼虫の写真は2022年7月に倉敷市真備町のカキで大発生していたものを撮影しました。左が終齢幼虫(幼虫の最終段階)、右が中齢幼虫(終齢幼虫の前の段階)です。標本は2021年8月に倉敷市真備町で採集したものです。幼虫に刺されて痛い目にあうとトラウマになって成虫を見ても忌避したくなりますが、これは無毒です。 

  

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  身近なガの幼虫たちG クロメンガタスズメ(スズメガ科)Acherontia lachesi


 クロメンガタスズメは南方系の大型のスズメガで、近年急速に数を増しています。メンガタとは胸部の面形模様のことですが、不気味なドクロを想像させますね。幼虫は多くの植物の葉を食べますが、特にゴマ、トマト、ナスでよく見かけます。幼虫の色は灰色系、茶色系、緑色系、黄色系(写真)など多彩です。多数発生すると作物はたちまち丸坊主になり、地面には大きな糞がゴロゴロと落ちています。また、ミツバチの巣に侵入して蜜を盗むことから養蜂家からも嫌われています。その時、ミツバチのフェロモンに似た物質を出して働きバチの攻撃をかわして巣に侵入していきますが、いつもうまくだませるとは限りません。私はミツバチの巣箱やその周辺にこのガの死骸がたくさん転がっているのを見たことがあります。正体がばれてミツバチに攻撃されたようです。
 幼虫は2021年10月に倉敷市真備町で撮影、標本は2019年10月に総社市日羽で採集されたものです。 

  

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  身近なガの幼虫たちH フタトガリアオイガ(ヤガ科)Xanthodes transvers


 身近なガというと、どうしても庭の花や野菜の害虫になってしまいます。オクラを植えると数種のガが発生しますが、フタトガリアオイガとワタノメイガが特に目立つ存在です。今回はフタトガリアオイガを紹介します。この幼虫はフヨウ、ムクゲ、そしてオクラなどのアオイ科の葉を食べますが、オクラが一番探しやすいと思います。葉に網目状の食痕があれば、近くに潜んでいる可能性が高いです。
 写真の幼虫(2022年7月倉敷市真備町で撮影)は終齢幼虫ではないため全体が緑色ですが、大きくなると黄色の線や黒い斑点が現れて派手な姿になります。南方系のガで東南アジアに広く分布しており、日本では本州以南で見られます。オクラが夏野菜として欠かせないものになり、このガも目に触れる機会が多くなってきました。
 標本は1966年に倉敷市児島林で採集されたものです。 

  

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  身近なガの幼虫たちI アカヒゲドクガ(ドクガ科)Calliteara lunulata lunulat


 岡山県のどこにでもいる普通種ですが、街中で見かけることは少ないかもしれません。確実に観察するには、近くの森や林に出かける必要があります。ただこの幼虫の姿があまりにも奇抜なので今回紹介することにしました。この幼虫が歩いている姿は、まるでフワフワのブラシのようです。ケムシの毛にはいろいろな目的があります。刺毛があって敵を攻撃するもの、おどろおどろしい毛と模様で敵を威嚇するもの、さらにマントのような毛で全身を覆って敵の攻撃から身を守るものなどです。以前このコーナーで紹介しましたクマケムシ(ヒトリガ科の幼虫)は防御型に該当し、今回のアカヒゲドクガも同じタイプです。ちなみにこの幼虫にも成虫にも毒はありません。幼虫はクヌギ、コナラ、クリなどのブナ科の植物の葉を食べます。ユーモラスな格好でユッサユッサと徘徊している姿を一度見ると忘れられないです。
 幼虫は2021年11月に笠岡市白石島で撮影、標本は2014年4月に総社市黒尾で採集されたものです。  

  

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  身近なガの幼虫たちJ ネギコガ(アトヒゲコガ科)Acrolepiopsis sapporensi


 今まで大型や中型のガを紹介してきましたが、今回は微小蛾とよばれる小さなガの中で、ごく身近なものを取り上げてみました。ネギコガという数o程度の小さなガで、ネギ類の害虫です。幼虫は小さなアオムシで目立ちませので、それよりも目に触れる機会が多い食痕の写真を掲載しました。ネギの葉にミミズが這ったような薄茶色の線状の模様を見たことがありませんか。これがネギの葉肉に潜り込んだネギコガの幼虫の食痕です。農家の方はこの幼虫の駆除に細心の注意を払っておられるようです。もっともネギが多く食される冬季は、このガは活動も停滞していますので、消費者としてあまり気にする必要はないように思われます。
 食痕の写真は2022年8月に倉敷市真備町で、標本は2021年8月に倉敷市幸町で採集したものです。  

  

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  身近なガの幼虫たちK フクラスズメ(ヤガ科)Arcte coerula


 このガの幼虫の主な寄主植物(エサ)はイラクサ、カラムシなどのイラクサ科なので、堤防などのちょっとした草地でもこの植物があれば、夏から秋にかけて集団で発生しているのを見ることができます。幼虫は大きくて色合いも結構派手であり、また近づくと体を激しくゆすって威嚇するので、その迫力に圧倒されてしまいますが、毒のある幼虫ではありません。成虫は胴が太くて力強い感じですね。成虫で越冬し、しばしば屋内にも侵入してきます。私は自宅の雨戸の戸袋で数頭が越冬しているのを見つけたことがあります。図体がでかい割には身のこなしが俊敏で、地面を素早く走り回っていろいろな隙間に潜り込んでいく姿は可愛くもあります。
 この幼虫は2021年10月に吉備中央町で撮影、標本は2005年11月に総社市黒尾で採集したものです。  

  

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 身近なガの幼虫たちL ワタノメイガ(ツトガ科)Notarcha derogata


 このシリーズHでオクラの葉を食べるフタトガリアオイガを取り上げましたが、今回は同じくオクラの害虫であるワタノメイガを紹介します。ワタのほかオクラ、ムクゲ、ハイビスカス、フヨウなどのアオイ科の葉を食べます。私の畑のオクラでは、8月以降このガの被害が拡大しています。ノメイガは小さいものが多く、幼虫もあまり目立ちませんが、このガの幼虫は葉をクルクルと巻いた細長い巣を作るためすぐに見つけることができます。農家の方はこれをハマキムシとよんでいます。これだけ幼虫が多いのに成虫は家の灯りに来ているのを時々見かける程度です。大きさは開張(左右の前翅の先から先まで)25mmほどしかありません。でも結構きれいな斑紋ですね。
 幼虫の巣は9月に倉敷市真備町で撮影、成虫も同場所で7月に採集したものです。  

  

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  身近なガの幼虫たちM イチジクヒトリモドキ(ヒトリモドキガ科)Asota ficus


 「身近なガ」ではなく「身近だったガ」というのが正しいかもしれません。南方系のガで、1990年代に西日本に侵入してきて爆発的に増えていきました。岡山県でも2000年頃に確認され、イチジクの葉が見るも無惨なほど食い荒らされるという状況でした。ところが10数年が経過した頃から減少に転じ、今ではなかなか見つかりません。私は寄生蜂か寄生蝿にやられたのではないかと推測しています。卵や幼虫への寄生はほとんどの昆虫で見られる現象で、寄生率が90%を超えることもあります。これによって爆発的な発生が抑制されて自然のバランスが保たれているのです。このガが日本に侵入した頃は寄生種が現れず大発生を繰り返しましたが、やがて寄生されるようになって減少していったと考えられます。ご近所で写真のような幼虫を見つけられたら、ぜひ当昆虫館までご連絡ください。
 幼虫の写真は2002年10月に倉敷市で、標本は2010年5月に総社市で採集したものです。  

  

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 身近なガの幼虫たちN ナシケンモン(ヤガ科)Acronicta rumicis


 秋も深まってくると幼虫や繭(蛹)で越冬する幼虫が、慌ただしく越冬の準備を始めます。日に日に気温が低下する中、越冬できる段階まで成長しなければなりません。忍び寄る冬の足音との競争です。このナシケンモンはごく普通種ですが、成虫は地味な色合いであるため、出会っても記憶に残るようなタイプではないと思います。ナシの名かついているようにナシの葉を食べる害虫ですが、極めて広食性なのでいろいろな植物で見つかります。今回はナシ(バラ科)とは縁遠いハハコグサ(キク科)で見つけました。霜が融けるとどこからか這い出してきて盛んに葉を食べていましたが、その後無事越冬に入ったようです。
 幼虫は2021年11月に倉敷市で撮影、標本は1974年9月に総社市で採集しました。
  

 

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