重井医学研究所

モノクローナル抗体の新時代-1Epoch of Monoclonal Antibody

    • モノクローナル抗体とは何?

       がん細胞と抗体産生細胞を合体(融合)させると、がん細胞のようにいつまでも増殖して、しかも、抗体を産生する細胞ができる。この細胞は1種類の抗体のみを産生し、培養液中に放出する。この抗体がモノクローナル抗体である。

       1個のB細胞を上手に増やすには、B細胞とがん細胞を融合させる。二つの細胞が一つになったものを融合細胞と呼ぶ。融合細胞の中にはがん細胞の性質である無限に増殖する性質とB細胞の性質である1種類の抗体のみを産生するという性質を合わせもつ細胞が出てくる。この中で希望する抗体を作る細胞を増やし、培養液を集めるとその中にモノクローナル抗体が入っている(図1)。

      図1 融合細胞がモノクローナル抗体を培養液中に放出する

       我々のからだの中にウイルスなどの異物が進入してくると、その異物に特異的に結合する蛋白質を作りだす。この蛋白質が抗体である。抗体を作り出す細胞はリンパ球である。からだの中には百万種類を超える抗体を作り出すリンパ球がそろっている。異物が進入してくると、リンパ球は急速に増えるが、異物に結合する抗体を作り出す細胞だけが増える。

       モノクローナル抗体を作るには細胞融合という方法を用いる(図2-1)。動物に異物を注射すると、からだの中に抗体を産生するリンパ球が増える。この動物のリンパ節、脾臓などから1億個程度のリンパ球を取り出し、これらを2000万個のがん細胞と融合する。そうすると数千個程度の融合細胞ができて来る。この中には目的の抗体を作っているものが数十種類程度入っている。これらを1個の細胞にしてから再び増やすと、1種類の抗体のみを作る細胞集団が得られる(図2-2、図2-3)。この細胞集団が作り出すのがモノクローナル抗体である。

      図2-1 がん細胞とリンパ球を融合させると融合細胞ができる。目的の抗体を産生する細胞は黄色に着色している。細胞融合の10日前後、目的の抗体を産生している培養小室(ウエル)を探し出すのがモノクローナル抗体作製の第一歩である。

      図2-2 目的の抗体を産生する細胞(黄色)を不用な融合細胞(白色)から分離する方法を示している。ここでは、約30個の細胞を96の培養小室(ウエル)にまくと1個の細胞から増殖して、しかも、目的の抗体を産生する細胞集団を得ることができることを示している。この方法は限界希釈法(げんかいきしゃくほう)と呼ばれる方法である。この細胞集団から得られる抗体は、1個の細胞から増殖した細胞集団(クローン)から得られる抗体なのでモノクローナル抗体と呼ばれる。この細胞ならびに培養液は凍結して保存することができる。

      図2-3 実際の融合細胞の写真。1個の細胞から約100個の細胞に増殖したところ。1個の細胞の大きさは直径が約0.02 mmである。融合細胞はよく増殖して、抗体を多量に、安定に産生するものが良い。
    •  

      次のページへ進む>>>モノクローナル抗体の利用

    • [1] [2] [3] [4] [5] [6]    1/6ページ