重井医学研究所

モノクローナル抗体の新時代-5Epoch of Monoclonal Antibody-5

    • モノクローナル抗体の使用目的:薬としての働き

       抗体は本来、からだの中で病原菌、ウイルスなどから身をまもるためのものである。ヒトのモノクローナル抗体で病原菌に結合するものがあれば、それを注射することによって、病気を防ぐことができる可能性がある。このような抗体の持つ本来の生体に対する働きを生物活性と呼ぶ。生物活性としては、病原菌を殺す、病気を惹き起こす蛋白毒素の無毒化、がん細胞を殺す、がん細胞の増殖を抑える、アレルギー反応を抑える、などがある。これらの働きは抗体が薬として使用されることから抗体医薬と呼ばれる分野である。2006年現在15種類の抗体がアメリカでは認可されている。これからもますます増えると考えられる。


     

    モノクローナル抗体の科学における役割

    •  モノクローナル抗体なしに蛋白質の研究は進まない。モノクローナル抗体はこれからも生命研究のキーになる物質である。これからも新しい抗体が作り出される。

       遺伝子の研究より、蛋白質の研究の方がかなり複雑である。これは遺伝子が4種類の塩基によってできているが、蛋白質は20種類のアミノ酸残基によってできていることによる。構成要素が多い分だけ複雑になる。蛋白質と蛋白質の相互作用の解析は今のところ、モノクローナル抗体による分析、定量と蛋白質に蛍光を放つマーカーを入れるなどの方法しかない。遺伝子の研究が制限酵素の使用で発展してきたように、蛋白質の研究はモノクローナル抗体の使用によって発展する。モノクローナル抗体はこれからもキーになる物質である。研究に合わせた多くのモノクローナル抗体がこれからも必要である。


       

      これからのモノクローナル抗体の作製と将来必要なもの

       リンパ節法が世界の標準になると思われる。リンパ節法によって多くのげっ歯類抗体が期待できる。モルモットが実験室での飼育が簡単なことから、モルモットのモノクローナル抗体の作製方法の開発が望まれる。
      重井医学研究所が開発したリンパ節細胞を用いる技術(リンパ節法)は、ラットについては1995年に、マウスについては2006年に開発された。これらの方法が持つ簡便性、効率、経済性などからこれからのモノクローナル抗体作製の世界の標準になると思われる(図9)。

      図9 これからの抗体作製はリンパ節法の時代
       マウスとラット以外の動物でのモノクローナル抗体の作製方法の開発も必要である。実験にはマウス、ラットなどのげっ歯類が使用されることが多く、これらの動物の蛋白質に対してはマウス、ラットでは良い抗体ができないことも多い。ウサギですでにモノクローナル抗体の作製ができるが普通の実験室では無理である。この点を解決するために、ラットとほぼ同様の設備で飼育ができるモルモットを用いた抗体作製があると大変に役立つ。モルモットでも細胞融合にふさわしいリンパ節は簡単に得られることから、モルモットの抗体産生に用いるがん細胞(B細胞のがん細胞)が作製されると解決する。がん細胞を作製できる研究者に実行していただきたい。


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